【投稿】参議院選挙に思うこと

【投稿】参議院選挙に思うこと

☆比例区選挙の実像
 内閣支持率が10%を切るという森内閣を抱えて、自公保政権が考えついたのが、参議院選挙の制度改悪であった。政党名による投票で、政党枠当選者数が決まるという従来の方式(拘束名簿方式)では、党内立候補者の当選順位が決まった時点で、二つの面で選挙の取り組みが弱まる。一つは、ほぼ当選ライン以上の順位を獲得した候補者陣営は、当選が確実になったと思い、運動が弱まる、その2は、当選がおぼつかない順位となった候補者陣営は、どうせ当選しないんだからと、同様に運動から手を抜くことになると。
 さらに、KSD疑惑で明らかなように、自民党の参議院比例区候補はそれぞれに業界団体と結びつき、獲得党員を水増しし、党費を業界団体に肩代わりさせ、その見返りに当選後は業界の利益代表として業界に有利な国会質問や省庁への働きかけを行うという構造である。まさに政官財の癒着構造そのものであった。
 森政権で参議院選挙を迎えれば自民党の敗北必死、拘束名簿制であれば従来どおりに、業界団体の運動はあるものの、候補者は最後まで必死にならない、という判断から、まさに自民党の党利党略で参議院制度改革が強行され、非拘束名簿式となった。比例区の立候補者の得票と政党名での得票の合計が、その政党の比例区における得票となり、政党枠の当選者が決まり、個人名での得票の多い候補から当選する制度となったのである。

☆小泉人気で逆効果
 こうして制度改正した自民党だったが、4月の小泉総裁就任以降は、逆に小泉=自民党という従来の比例選挙の方がよかったとの声も出始め、行き当たりばったりの政治の実態をさらけ出すことになる。都議会選挙で「小泉」票が6%もあったということで、生駒さんも指摘の「第2の小泉」立候補という「ていたらく」である。
 一方、連合など労働団体は、当初「非拘束名簿制」については、自民党の党利党略と批判していた。だが、実際には「大産別組合の」の場合、組織を固めれば、当選できる、という意味で反対運動の裏で「支持署名」の取り組みを開始するなど、両面の対応に走ってきたわけである。

☆比例区重視で、選挙区後回しの実態
 今回の制度改正により、20年前の「全国区」選挙が復活したことになった。比例選挙になる前の旧全国区を経験した労組幹部はすでに現場を去っている。今回改選を迎える6年前に当選した議員は、昨年までは政党名での比例選挙を前提に活動してきた故、悪く言えば、「比例選挙に安住して」きた議員が多いのも事実。個人名の浸透という課題は、決して簡単な話ではない。そういう意味で、比例区候補を抱える9産別労組は、それなりの危機感を持って選挙を準備してきたと言えるだろう。しかし、産別毎の独自の候補者選挙である故の弊害も深刻になりつつある。連合などが地域の選挙区候補の選挙本部を立ち上げても、比例区候補を抱える主要産別の取り組みは、比例区に重点が置かれてしまい、連合上げての取り組みになりえていないのが現状だ。大橋巨泉などの大物タレント候補についての連合の目線も冷ややかという複雑な構造が見え隠れしている。

☆すでに選挙は公示され、小泉効果での自民党の復調は確実な状況となっている。6月末の都議会選挙の評価だが、「風が吹かない」状況、むしろ逆風と言う中での、民主党の底が見えたということだが、決して敗北したという意味ではない。むしろ健闘したとも言える。「小泉の構造改革は、民主党が言ってきたこと」とか「小泉の改革を実行できるのは、むしろ民主党」などのような政党の存在感そのものを消滅させかねない主張は、ダメダメ!ということだろう。しかし、その中でも候補が比較的若かったという点、それなりに連合の集票が功を奏した点など、「逆風」の中で、私は健闘したという評価だ。
 参議院の場合、選挙戦に突入して、それまでの小泉・田中がテレビを独占してきたような雰囲気はなくなり、テレビの党首討論等でも、構造改革に伴うセイフティネット議論などでは、小泉の議論に具体性が乏しいことも目に見えてきたように感じられる。
 いずれにしても、選挙結果が出てから、ということになろうが、読者諸氏には、小泉自民党に「NO」の選択を行使していただくことを要請したい。(佐野) 

 【出典】 アサート No.284 2001年7月21日

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