【投稿】国際的孤立化進む安倍政権

国際的孤立化進む安倍政権
                  ―参議院選挙では信頼無き「信任」 アサート No.500 2019年7月

G20で埋没した安倍
6月28,29日戒厳令下を彷彿とさせる大阪でG20が開催された。今次会議の課題は、自由貿易体制の維持、環境保全対策の合意、地球規模でのSDGsの推進にあった。日本初の議長である安倍は直後に公示される参議院選挙を意識し、実効性ある合意形成を目指したが徒労に終わった。
米中貿易紛争を始め、様々な個別利害を抱える参加国、機関が納得できる合意の形成は当初から困難視されており、29日に採択された首脳宣言も、総花的な内容となり、その形成過程で安倍の調整能力、リーダーシップの欠如が露わになった環境対策に関しては、この間国際的課題として浮上した、プラスチック系廃棄物による海洋汚染問題について、2050年までに追加的汚染をゼロとすることで合意した。

しかし、地球温暖化対策について、当初安倍政権はアメリカに忖度し、パリ協定に基づく対策の実行を曖昧にする目論見であった。しかしこれにEU、とりわけフランスが強く反発、マクロンは首脳宣言への署名拒否を示唆した。
安倍は事前にマクロンを国賓として招き先駆けて首脳会談を行い、天皇とも面談させるなど厚遇したが、懐柔策は通じなかった。
結果的に、来年から実行に移されるパリ協定の完全な実行は盛り込まれた。しかし、これから離脱したアメリカへの再加入は呼びかけられず、寧ろアメリカ独自のCO2削減対策を高く評価するなど、苦肉の折衷案となり有効性に不安を残すものとなった。
急激に進むデジタル化への対応については、情報の保護と利用に関し、立場の違いが露わとなった。GAFA(Google,Apple,Facebook,Amazon)など情報独占資本の利害に基づき、自由なデータの流通を主張する日米や、情報の国家管理を重視する中印が対立した。
安倍はデジタル経済の国際ルール制定に向け「大阪トラック」を打ち出し、各国は総論賛成の立場から構想に同意したが、2027年頃には人口世界最多となり、情報の寡占を進めるインドは会議に欠席するなど、調整は失敗しスタートから足並みが乱れる結果となった。
G20最大の課題であった経済問題については世界経済は減速リスクを抱えているとの認識の下「自由、公平、無差別で安定した貿易、投資環境の実現」を謳った。しかしここでもアメリカへの配慮から保護主義への批判は見送られ、中途半端なものとなった。

個別会談でも成果なし
G20本体が課題解決への道筋を示しえない中、具体策は主要国の2国間協議に委ねられた。日米は28日、G20開幕直前に3か月連続となる首脳会談を開き強固な日米同盟と安倍、トランプの信頼関係を世界にむけ演出しようとした。
しかしトランプの訪日直前の24日、ブルームバーグ通信が、トランプは私的な会話で日米安保破棄に言及したと報道、26日にはFOXテレビのインタビューで安保条約の片務性について「アメリカが攻撃されても日本はソニーのテレビでそれを見ているだけ」と不満を露わにした。
慌てた官邸は打ち消しに躍起となったが、トランプは発言を撤回するどころか、29日の記者会見で「安保見直しについては安倍に直接伝えている」とエスカレートした。日本側は28日の首脳会談で安保改定の議論は無かったと説明しているが、日米同盟の不安定さがクローズアップされることとなった。
この27日に行われた日中首脳会談では関係改善がアピールされ、安倍は習近平に来春、国賓としての訪日を要請し受諾された。習にしてみれば今回の訪日の主要な目的はトランプとの会談であり、安倍との連携など対アメリカ政策に資する範囲での関係でしかないことは明らかである。
安倍としても「一帯一路」構想に関わる商機を掴もうとする経済界の思惑に乗っているだけであり、緊張緩和を置き去りにした皮相的、便宜的な関係改善の足元はまことに危ういと言わざるを得ない。
29日の日露首脳会談は26回目となったが、無為に回数を重ねるだけのものとなった。安倍は平和条約交渉について「私とプーチンとでこの問題に終止符をうつ」「1956年の共同宣言を基礎に6月の大筋合意を目指す」等々、大言壮語を重ねてきたが、いずれも大きな独り言、独り相撲でありプーチンは全く同意などしていないことが明らかになっている。
今回の会談でも対話の継続は確認されたが、次回の首脳会談についてはプーチンが、9月にウラジオストックで開かれる「東方経済フォーラム」への安倍の参加を期待すると述べるにとどまった。
これら一連の会談では北朝鮮問題も議題となったとされているが、30日に板門店で開かれた3回目の米朝首脳会談の事前情報は誰からも安倍に伝えられなかった。
当事者であるトランプはもちろん、6月20日に金正恩と会談した習近平は当然この動きを知っており、4月に金と会ったプーチンも情報を掴んでいたかもしれない。
さらに当事者の一人ともいえる文在寅に対して安倍は、首脳会談はおろか立ち話さえしようとはしなかった。もっとも話したところで情報は伝えられなかったと考えられるが、一連の会談は、北朝鮮情勢における安倍の存在の軽さ、ひいては国際政治における日本の位置を象徴するものとなったのである。

加速化する孤立化
安倍は何かにつけて「加速化させる」というフレーズを好む。アメリカとの貿易協議、ロシアとの平和条約交渉、内政に於ける憲法論議しかりであるが、現状は停滞していると言うことである。
ただ本当に加速化していることは国際情勢における孤立化であろう。G20終了を待つかのように日本は6月30日、IWC(国際捕鯨委員会)を脱退した。タイミングとしては最悪であり、自分たちの選挙区の利害を国際協調に優先させる人間が、国際会議の議長を務めていたというのは戯画にも等しい。
さらにG20終了後、安倍政権は徴用工裁判判決に対する報復として、フッ化水素など半導体材料の事実上の対韓禁輸措置を発動した。安倍は大阪で自由貿易拡大やWTO改革を唱えながら、会議が終了すると手のひらを返したようにWTO理念に反する暴挙に出たのである。
こうした一連の行動に国際社会は唖然としただろう。この後も安倍政権は韓国代表団を粗略に扱い、外務省―河野太郎は7月19日駐日韓国大使を呼びつけ「極めて無礼」と悪態をつくなど、事態を悪化させている。
7月23日からジュネーブで始まったWTO一般理事会では、韓国の要請でこの問題が議題となった。さらに韓国はアメリカに仲介を要請、これまでトランプ政権は日韓の歴史問題については無関心でいたが、今回は動くのにまんざらでもない様子となっている。
問題が国際化するのを恐れた日本政府は「これは2国間問題で、第3者が介入することではない」と反論しているが、日本も仲裁委員の任命を第3国に求めており、説得力を持たない。
さらに日本が当初禁輸の理由としていた徴用工問題は2国間問題だが、それが無理筋とわかると、「北朝鮮への密輸疑惑」へと説明を変更した。しかし北朝鮮問題を持ち出せば国際問題となるわけであり、政府の論理は破綻したのである。本当に北朝鮮に係わる問題ならば国連安保理で議論すべきであろう。
こうしたなかWTO開催当日、ロシアのTU-95爆撃機、中国のH-6爆撃それぞれ2機が日本海上空で空中集合し東シナ海へ南下、その後尖閣諸島付近で分離したのち中国機は上海方面へ、ロシア機は宮古海峡を周回し北上した。
さらに同日ロシアのA-50早期警戒機が竹島付近の領空を侵犯し、韓国軍機が警告射撃を実施するという事態が発生した。これに関しロシア国防省は「露中軍事協力計画に基づき、7月23日露中合同空中パトロールを初めて実施した。これは第3国に向けられたものではない」と発表、さらに同外務省は独島(竹島)周辺での領空侵犯については否定した。
中国、ロシアの海上での行動については先月号で触れたが、これが空にも拡大してきたことになる。安倍は中露に秋波を送りながら軍拡を進めてきたが、それに対する答えの一つが一連の中露の行動である。
また今回安倍政権は領空侵犯に関し、ロシアのみならず「日本領空で発砲した」として韓国にも抗議した。8月には「日韓秘密軍事情報保護協定」の期限を迎えるが延長は困難だろう。参議院選挙期間中、安倍政権は排外主義者らの得票を当て込んで強硬姿勢を進めたが、これは正に木を見て森を見ない愚行で、日本の孤立化は加速化して行っているのである。

国内でも安倍孤立化を
7月21日投開票の参議院議員選挙で自公与党は改選過半数は制したものの、自民党は改選議席67から10減の57となり、非改選と合わせても113と単独過半数を維持できなかった。さらに、公明28(改選+非改選)、維新16(同)を合わせても157であり、改憲の発議に必要な164を割り込んだ。
選挙区では、一人区で自民22、野党10と自民は3年前より1増となったが、重点区や安倍に近い議員が相次いで落選となり、安倍自民党の求心力の低下が明らかになった。とりわけ軍拡が争点となった秋田、沖縄での自民敗北は重要な意味を持っている。
選挙後安倍は「改憲論議をせよとの民意だ」と早速暴論を吐いているが、野党はもちろん、与党も冷ややかであり、熱くなっているのは安倍一人である。年金、雇用、消費税など喫緊の課題が山積する中で、改憲を第1義的に審議することはできないだろう。
安倍が後継と考えている岸田に、菅は広島で事実上の「刺客」を立て岸田派現職を落選させた。官邸でも安倍の孤立化は進むだろうが、求心力を維持するため年内の解散総選挙が再び取り沙汰されている。
今次参院選では、野党第1党の立憲民主党がそれほど伸びず、枝野個人商店の限界が見えてきた。「れいわ新選組」は健闘したがこれも山本商店である。個人商店はそれぞれ魅力があるが、野党共闘=商店街一丸となっても大型総合店に打ち勝つのは難しいものがある。下手をすればシャッター街になりかねない危機感を持ち、参議院選の野党共闘を総括し、次の闘いに備えるべきだろう。そして安倍政権を積極的に孤立化させていかなければならない。(大阪O)

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