【投稿】“嫌韓・反韓”に対峙できない野党共闘 統一戦線論(63)

<<作り出された「最悪の日韓関係」>>
時事通信が8/9~12日に実施した世論調査で、安倍内閣の支持率は前月比3.9ポイント増の47.0%、不支持率は同0.2ポイント減の30.8%であった。韓国向けの輸出管理を強化した措置や、ハンセン病元患者家族をめぐる裁判で控訴を見送り謝罪した政府対応が評価されたとみられる、と報じられている。政党支持率は、自民党が前月比2.4ポイント増の28.0%に対し、立憲民主党5.8%、公明党4.1%、日本維新の会2.2%、共産党2.1%、れいわ新選組1.0%、国民民主党0.6%、NHKから国民を守る党0.4%、「支持政党なし」53.4%であった。
先月の参院選の結果は、安倍政権が執拗に追求してきた9条改憲をいよいよ現実の政治日程に格上げさせるはずであった改憲発議に必要な3分の2の議席をも割り込ませてしまった。自民党の比例区得票数は300万票余り、自公与党あわせて400万票余り、2割近くの大量の得票を失い、議席も得票数も得票率も大きく減少させてしまった。自公与党にとっては、深刻な事態である。にもかかわらず、1人区で野党共闘が善戦したとはいえ、複数区では野党共闘は機能せず、自民党はやすやすと漁夫の利を獲得、議席の過半数を制した。一強他弱で政権基盤強固と見えながらも、内実は不安定極まりないものである。
しかし、その後の世論調査の結果が、安倍内閣支持率上昇である。自民党支持率も上昇し、自民28%に対し、共闘を組む野党は合わせても9%弱である。
その背後には、第二次安倍政権が発足以来、強力に推し進められてきた歴史修正主義の路線の顕在化が指摘されなければならない。それは、日本軍国主義・ファシズムの路線、侵略と植民地化を正当化する路線、とりわけ悪意ある嫌韓・反韓路線が系統的に、執拗に煽り立てられ、組織されてきたナショナリズム=民族主義の路線である。
参院選を前にして、意図的に持ち出されてきた韓国に対する輸出規制は、韓国大法院(最高裁)が、朝鮮半島植民地下の元徴用工らについて、日本企業に賠償を命じる判決を下したことに対する明らかな報復措置である。実際に、安倍首相は「徴用工の問題で、国と国との約束(1965年の日韓請求権協定)を守れない国であれば(安全保障上の)貿易管理をちゃんと守れないだろうと思うのは当然だ」として「徴用工」問題の解決の手段としての輸出規制をあげたのである(7/7 民放番組の党首討論)。
そして参院選最中の7/19、河野外相は駐日韓国大使を外務省に呼び出し、韓国が日韓請求権協定に基づく「仲裁委員会」の設置に応じなかったことについて、「極めて無礼」などと発言したのである。その上から目線の尊大、傍若無人ぶりは、韓国を植民地・朝鮮の宗主国として見下す、ひんしゅくを通り越して、自民党内からさえ批判を招いた大恥ものである。
韓国の文大統領が、日本の措置は、「強制労働の禁止」と「三権分立に基づく民主主義」という人類の普遍的価値や国際法の大原則に反する行為と批判し、「今後起こる事態の責任も全面的に日本にある」と強調したのは当然のことである。最悪の状態といわれる日韓関係は、安倍政権が意図的に人為的に作り出したものなのである。

<<“嫌韓・反韓ファシズム”>>
だが、この意図的な日韓関係の最悪化、そして経済制裁は、破綻せざるを得ないであろう。なぜなら、日本政府自身がすでに「徴用工問題」を口にできなくなっているのである。トランプ米大統領の「アメリカファースト」に倣って、ナショナリズムを煽る安倍首相は、相も変わらず、「最大の問題は、国家間の約束を守るかどうかという信頼の問題だ」と述べているが、韓国がWTO提訴の意向を明確にするや、問題が国際化することを怖れ、徴用工判決の報復ではない、と言い出し、「安全保障上の国際的責任からホワイト国指定を取り消す輸出管理の問題だ」とすり替えだしたのである。歴史修正主義批判に耐えられない安倍政権の葛藤と矛盾の現われである。
しかし大手マスコミ・マスメディア、新聞・テレビはそうした矛盾や真実に目をふさいだまま、政府主張をそのまま垂れ流し、むしろお先棒を担いで「嫌韓・反韓」を煽ることに精を出し、週刊誌などはそのオンパレードである。
その典型が、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」に出品された「平和の少女像」を「反日プロパガンダ」などと抗議し、「ガソリン携行缶を持ってお邪魔する」というファックスでテロ予告し、「表現の不自由展」を中止に追い込む事態である。名古屋市長や、大阪府知事・大阪市長、菅官房長官らが公然とこの事態を擁護し、むしろ推進する、異常な事態の出現である。「平和の少女像」問題は、戦時性奴隷としての「慰安婦」問題であり、「徴用工」問題は戦時強制労働の問題であり、いずれも日本軍国主義・ファシズムが作り出したものであり、それらを取り上げること自体を「反日」としてフレームアップし、社会から孤立させようとしているのである。
安倍政権が煽動する“嫌韓・反韓”を、大手メディアが増幅し、ヘイト発言が大手を振って横行し、それを批判する言論や行動が「反日」と糾弾され、封殺される、一種の“嫌韓・反韓ファシズム”的な事態が醸成されようとしているとも言えよう。そうした事態を社会全体に蔓延させ、安倍政権が期待し、演出するシナリオでもある。

<<安倍政権に同調する野党>>
問題はこうした事態に対峙すべき野党が、事実上、安倍政権に同調していることである。
立憲民主党の枝野代表は、「私は弁護士で国際法が専門なのですが、国際法の観点でいえば『元徴用工』問題も、『貿易管理』の問題も、日本に理がある話だと思っており、その点では、政府を支持しています。」(AERA2019年8月12-19日号)と平然と述べている。「強制労働の禁止」と「三権分立に基づく民主主義」という人類の普遍的価値や国際法の大原則に反する行為を弁護して、なにが「国際法が専門」なのか、あきれたものである。福山幹事長も「悪化する日韓関係について『日本政府の主張に一定の理解はしている』と述べ、野党としても政権の対応を支持する姿勢を示した。」(8/2 朝日新聞)というのである。
国民民主党の玉木代表も8/1、来日中の韓国国会議員団と面会した際、1965年の日韓請求権協定について「絶対に守ってほしい。これと違う対応をすると、根底から両国関係が崩れてしまう」と伝えたことを明らかにしている。
立憲、国民両党は、ほぼ安倍政権の主張と同列である。いずれも、請求権協定は国家間の協定であって、徴用工問題は、日本の植民地支配に基づく韓国の個人と日本の民間企業の問題であり、日本政府自身が認めてきた「個人の請求権は消滅していない」という大前提が忘れ去られている。そしてこの個人の請求権に基づいて、中国との間では、1972年の日中共同声明で中国政府の戦争賠償請求権が放棄された後の、2000年鹿島建設和解、2009年西松建設和解、2016年三菱マテリアル和解で、日本企業から和解金が支払われたが、今回のように政府が日本企業に和解に応じるななどと口をはさむことはなかったのである。こうした現実を無視した、韓国の個人の人権を無視した安倍政権の姿勢を擁護することは、安倍政権と同罪と言えよう。
共産党の志位委員長は8/2、韓国政府との冷静な話し合いにより、事態の解決をはかることを強く求め、「政治的な紛争の解決に貿易問題を使うのは、政経分離の原理に反する『禁じ手』だ」と指摘。「政治上の紛争解決は外交的な話し合いで解決すべきだ」と批判している。同党機関紙・しんぶん赤旗の主張は「話し合いで事態の解決はかれ 政経分離の原則に反する 『未来志向』の立場で」である(8/4付)。一見まともであるが、徴用工問題は「政治上の紛争解決」問題ではなく、基本的人権の問題であり、歴史認識の問題であって、この核心を外した政経分離の手続き上の問題、取引問題などではないのである。この場合の「冷静な話し合い」は、事態の本質を棚上げにした一時休戦論や国益優先論に容易に屈しかねないものである。志位委員長は、当事者を全く無視した2015年12月の日韓「慰安婦」合意を問題解決に向けた前進と評価し、安倍政権に同調した誤りを、いまだに是正も反省もできないことの反映でもあろう。
吉川・社会民主党幹事長は「報復の連鎖は両国にとってマイナスにしかならない。これ以上、深刻化させてはならず、両国の話し合いで解決の糸口を見つけなければならない。冷静な対話によって双方が歩み寄るよう求めたい。安倍政権による一連の輸出規制強化は、徴用工問題で対立する韓国に対し強硬姿勢をとることで、参院選での争点隠しや国民へのアピールにつなげる目的があったともいえる。しかし、徴用工問題は、日本の戦争犯罪をめぐる人権問題であり、政治的対立の解決のために貿易上の措置で報復するのは適切とはいえない」(8/2 談話)。こちらも「冷静な対話」路線であるが、問題の本質をより正しく指摘している。
れいわ新選組の山本代表は「内政の行き詰まりをナショナリズムを使って隠そうとする政治」があると指摘、「言いたいことがあるのはお互い様。日本はどっしりして、向こうが不当なことをした時は国際機関を通じて訴えていくしかない」と提言、「日本から韓国への輸出総額は約6兆円。この6兆円という利益がなくなっていいというのなら、好きなことを言ってください。でも、私はそのような(韓国への)感情より、6兆円という国益を大事にしたい」(8/2 デイリースポーツ)と述べている。ナショナリズムの指摘は正しいが、問題の本質を見ない喧嘩両成敗論に傾斜している。
いずれにしても野党はバラバラであり、まともに安倍政権の“嫌韓・反韓”に対峙できる野党は一握りでしかない。ましてや、安倍政権の歴史修正主義を打破する展望を提起できるような、本来あってしかるべき野党共闘、統一戦線は依然として五里霧中とも言えよう。しかしそのための努力や広範な勢力の結集こそが、時代の要請であり、人々の願いでもある。
(生駒 敬)

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