青年の旗 1978年12月1日 第22号
【主張】 首切り・合理化旋風と対決する強大な産別統一闘争を
79春闘を前にして、人減らし、首切りの雇用合理化施風が吹き荒れている。74年の経済恐慌以来、資本は減量経営の名のもとに、競って人減らしをはかってきたが、今やその総仕上げともいうべき全面的な合理化攻勢に出てきている。
その最も典型的な現われは、日本を代表する独占的大企業が具体的な人員削減計画を発表し、率先して首切りの大なたをふるおうとしていることである。新日鉄七千人、三菱重工一万人、石川島播磨重工人件費20%削減などがその事例だが、いずれも社会的影響の大きいビッグビジネスだけに、業種の好不況を問わず、特に製造業全般にわたって、ますます減量経営・合理化の嵐が吹きあれることは必至である。
最近、沖電機で実施された指名解雇は、その一つの現われであり、これまでになかった露骨な首切りをなりふりかまわずやりぬこうとする資本の意思を有弁に物語っている。
構造不況業種の中でも最も深刻な危機にさらされている造船業界では、運輸省が35%の設備廃棄を告示したことにより、工場閉頒が相次ぎ、ナダレ現象的に首切りが起こることが確実視されている。有名な大阪の木津川筋から造船所がなくなるという前代未聞の事態さえ予想され、こうした「官制首切り」ともいうべき運輸省の35%削減告示に対して造船労働者の反発はにわかに強まってきている。
「減量」でポロ儲けの上場大企業の九月中間決算は、売り上げの伸びがゼロだったのにもかかわらず経常利益は一四・一%も伸び、戦後初の「減収増益」決算になったと報告されている。
なかでも、鉄鋼・繊維など素材産業の急激な収益回復が目立っている。
七千人の合理化計画を打出した新日鉄の経常利益は対前年比四・四倍にも増えている。
構造不況の代表格である繊維でも、大手合繊七社がそろって黒字を計上し、著しい回復を見せている。繊維労働者がこの四年間で約二三万人、合繊七社で三万二千人とおよそ四割も減らされたことが、黒字転化の最大の要因であることは明らかである。
産業労働調査所の調べでは、四十九年四月から今年の春までの四年間で主要二百五十社の人減らしは約十七万三千人、四年前の従業員数の約七・五%に達している。円高・不況にもかかわらず、「減収増益」という戦後初めての収益構造が生まれたのも、石油ショック後の減量作戦がもたらした結果といえよう。
この四年間、実質賃金の切下げと抑制に成功した資本は、雇用面でも大巾な人減らしを達成してきたのである。賃金か雇用かという選択を迫った資本の狙いが、実際は賃金も雇用も削減して、不況下でも自からの利潤拡大のみをはかることにあったことは今や明白であろう。
しかも、資本は、大企業を中心に、第二次減量作戦ともいうべき、質量ともに厳しい減量合理化を新たに強行しようとしているのである。
<雇用合理化との全面対決を!>
この間の雇用不安が、春闘四連敗の背景であったことを考えれば、資本の計画する雇用合理化と全面対決することなくして、79春闘の勝利はおぼつかないといえよう。
″第二次減量作戦″では、これまでの自然減や新規採用の中止などのソフトな方法だけでなく、配転・出向・転職優遇制・定年選択制・一時帰休・希望退職募集・長期帰休・指名解雇など質量ともに厳しい減量手段をいくつも組み合わせて目標を達成しようとしていることが特徴である。
それだけに、労働者の対応も、人員滅につながる具体的な現われを一つ一つつぶして、雇用の確保・拡大をはからねばならない。希望退職-指名解雇に至るまでの雇用合理化攻撃にきっちり反撃しなければ、いざ指名解雇が出た時、闘えない状況に陥る危険性がある。
このような職場での抵抗闘争を基本に、同意約款を含む雇用保障協定・職場定員制・時短と完全週休二日制・定年延長などを、労働者の雇用確保・拡大の要求の柱としてとりくまねばならない。とくに、個別企業毎の各個撃破を阻止するためには、雇用闘争を産業別の統一闘争の中心に据えてとりくむことが必要である。
<79春闘で大胆な賃金要求を!>
大資本は、賃金抑制・人減らしで不況下にもかかわらず利潤を拡大してきた。79春闘は、この四年間の実質賃金の低下を回復させる闘いである。そのためには、雇用不安の脅しに萎縮することなく、実質賃金の維持・向上がはかれるような大胆な要求を組織しなければならない。
私鉄総連の79春闘要求案十二・一%、二万円の賃上げ要求額は、実質賃金の維持向上をはかる上での最低ラインであろう。同盟の六%要求では実質賃金の維持さえできないことは明らかである。
経済恐慌の犠牲をもはやこれ以上労働者にしわよせすることを許してはならない。大儲けした大資本の利潤をはき出させるためにも、私鉄総連を上回る要求づくりを行う必要がある。同時に、私鉄総連の提起した賃金・物価スライド制の要求は国債の消化が困難化し日銀引受け、財政インフレも予想される情勢のもとで合目的であり、前号で紹介した賃金政策と合わせて闘われるならば、これは日本の労働組合運動を前進させる重要なポイントとなるであろう。
いずれにせよ、79春闘は大企業労働者に首切りが断行されるという新たな危機のもとで闘われる。
新日鉄・沖電気に代表されるごとく労働者の反撃は開始され、それは拡大しつつある。JCの右翼的組合幹部の「雇用のために賃金抑制を」というデマゴギーは次第に通用しなくなっている。
問題は、こうした大衆的な反抗を部分的あるいは地域的なものにとどめることなく、それを全国化させ、統一させることである。そのためには、わが国の全民主勢力がそのセクト主義と議会主義の悪しき偏向を捨てさり、正しい統一政策を打ち出し、大衆の利益のために闘いぬくことが不可欠である。
われわれの基本任務もまたここにある。