【投稿】維新・住民投票連敗が意味するもの--統一戦線論(71)

<<右派ポピュリズムの限界>>
11/1の大阪都構想をめぐる住民投票は、今回2回目であり、仕掛ける側の維新幹部からすれば、「絶対に負けるはずのない」、「勝って当然」の闘いであったはずである。
維新は今回、前回は「大阪都構想」に反対だった公明党を抱き込み、たとえ公明支持層がすべて賛成に回らなくても、その2割、3割でも維新側について、賛成票を投じてくれれば楽勝と計算していたのは当然であろう。何しろ前回の得票差は、約1万票である。5千票以上が寝返ってくれれば勝つ、という机上の計算ではその通りであった、と言えよう。
ところが現実は、投票率は前回より4.48ポイント下回る62.35%にとどまりながら、票差は接近するどころか、逆に約1万7000票差に拡大して、再び否決されてしまった。しかも、公明支持層は、朝日新聞出口調査によれば、賛成46%、反対54%で、相当数賛成票に流れたにもかかわらず、この結果である。実質的には、裏取引で増大したはずの賛成票をさらに減少させてしまったのである。
ここに、維新敗因は、右派ポピュリズムの限界を端的に示していると言えよう。その根本は、公務員攻撃と民営化、二重行政の解消、「身を切る覚悟」などと叫びながら、現実には府立病院の閉鎖や保健所の削減など、社会的セーフティネットワークを根本から破壊する、住民の利益に密着しない、地方自治と民主主義を破壊し、独裁主義的・権威主義的な権力集中を図る自由競争原理主義の限界なのである。
そうした右派ポピュリズムからすれば、まどろっこしい地方自治や分権ではなく、権威主義的な権力集中を掲げ、その環境整備のために、政治的上部構造の裏取引で物事はやすやすと進められると踏んだのであろう。維新発足当初はそうした独裁主義的手法が功を奏し、既得権益と既成政治勢力打破を叫び、安倍政権に引き続き菅政権とも改憲策動で連携し、より密接な関係を構築してきた、勝って当たり前だったはずである。しかし、その限界は、住民の、市民の利益に合致し、それに依拠していない、依拠できないところからきているのである。

<<「合理的自立的主体」への依拠>>
前回の住民投票で、なぜ維新の提案が否決されたのかについて、独自の詳細な世論調査や分析を通じて、『維新支持の分析 ポピュリズムか、有権者の合理性か』(有斐閣、2018/12/25発行)の著者・善教将大氏(関西学院大)は、同書の中で、維新支持者の内にある批判的志向性が都構想への賛成を踏みとどまらせたこと、その意味で操作されやすい、疎外された「大衆」ではなく、合理的自立的主体である、と分析されている。

氏は同時に、維新の代表であった橋下徹氏の支持率は、大阪市長就任後低下している現実、高い水準にあったのは大阪府知事期、しかも維新設立前に限定され、2010年末ごろより低下し続け、2014年2月には50%を下回り、ポピュリスティックな支持の調達に成功するどころか、失敗し続けてきた現実を指摘されている。
維新の台頭は、地方レベルの政治における既成政党の機能不全に根差すものであり、大阪都構想に関しては、市民の知識は大きく偏ってはいなかったし、維新支持層であってもそのデメリットの認識があったことを指摘されている。2回目の今回の住民投票はこうした指摘をさらに確認させるものとなったと言えよう。しかも今回は無謀にも、新型コロナ感染危機の真っ只中、大阪が突出して感染拡大している最中に行われたのである。
前回投票前の朝日・読売の世論調査は、賛成の方が10%以上高く、直前には反対が増える、という現象は、二回目の今回と全く共通した現象である。賛成派による活発な活動にもかかわらず、有権者は冷静な判断を下したのであった。
その冷静な判断の下支えとなった反対派の市民団体、多くの党派やグループの多様な活動、大阪都構想のずさんな現実と実体を知らせる情報提供が、維新の野望を打ち砕いたのである。
ひるがえって、野党共闘・統一戦線にとっての、今回の住民投票の重大な教訓は、維新と同じような政治的上部構造における取引や根回しにかまけていたのでは、足元をすくわれてしまう、ということであろう。首相指名投票で、共産党が立憲民主党・枝野氏への一本化に踏み切ったことが、野党共闘への巨大な前進であるかのような幻想は、たとえそれが一歩前進であったとしても、それぞれ10%にも満たない脆弱な野党支持率の現実を直視していない、浮ついた印象を有権者に与えるものと言えよう。市民、有権者の生活に根差した政策、政治の根本的な政策転換を求める多様な統一戦線を一から再構築することこそが求められているのである。
(生駒 敬)

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