<<傀儡政権:1年半持つはずが一夜で崩壊>>
8/15、日曜日、アフガニスタンの米国の傀儡政権・アシュラフ・ガーニ大統領と彼の国家安全保障顧問が首都カブールを脱出、米国の占領下で数十年にわたって米国が支援してきた政権、数万人のNATO軍と米軍によってのみ権力を維持されてきた政権が、たった一夜にして崩壊してしまったのである。
バイデン大統領が、「アフガニスタンでのアメリカの軍事任務は8月31日に終了する」と発表したのは、7月8日の声明であった。その声明の中で、「アフガニスタンの運命はアフガニスタン政府と軍の肩にかかっている」、「自分たちの将来や国の運営方法を決めるのは、アフガニスタンの人々だけの権利であり、責任である」との立場を明らかにし、その時点で、ホワイトハウスは、カブールがタリバンに脅かされるまでには少なくとも1年半はかかるとの推定を明らかにしていたのであった。バイデン氏は、「私たちはアフガニスタンのパートナーにあらゆる手段を提供しました。強調させていただきますが、近代的な軍隊のあらゆる手段、訓練、装備を提供しました。先進的な兵器を提供したのです」と胸を張って語っていたのである。
だが、タリバン側の攻勢により、カブールの陥落が90日、1か月と切迫し、8/31の米軍・軍事任務終了を待つどころか、8/15には米軍がカブール空港でさえ支配できない事態となり、前倒しで傀儡政権は「近代的な装備、先進的な兵器」を置き去りにして、逃亡・自壊してしまったのである。たった一夜での崩壊である。
バイデン大統領は、「私は、アフガニスタンに米軍を駐留させた4人目の大統領であり、2人の共和党員、2人の民主党員である」と述べ、「私はこの戦争を5人目の大統領に引き継ぐつもりはありませんし、引き継ぐつもりもありません」と述べていた以上、もはや逆転のシナリオも、事態を糊塗する打つ手もなし、屈辱的な事態へとバイデン政権は追い込まれてしまったのである。
「今回の撤退とベトナムで起きたことの間に類似点はあるか」と報道陣から質問を受けた際に、バイデン氏は、「全くない。ゼロだ」と答えていたのだが。タリバンがカブールを占領した時点で、すでに間違っていることが証明されてしまった。「もちろん、私たちはこの出来事をとても悲しく思っています。しかし、これらの出来事は悲劇的ではあるが、世界の終わりや、世界におけるアメリカのリーダーシップの終わりを告げるものではない」と弁解する以外に道はなくなってしまったのである。
<<「対テロ戦争全体がひどい失敗であった」>>
事態は、単に屈辱的であるだけではないと言えよう。ベトナム戦争でのサイゴン陥落以来の、歴史的な事態であり、それ以上の歴史を画する、米欧支配体制の衰退とリーダーシップと信頼の崩壊、政治的・経済的・軍事的危機を象徴する事態、今回のカブール陥落はその重要な指標、象徴ともなろう。
アメリカが主導したアフガニスタンでの戦争の人的経済的社会的費用の損失は、膨大であるばかりか、壊滅的でもある。
公式の集計だけでも、この戦争中に164,000人以上ののアフガニスタン人、2,500人近くの米軍兵士、3,800人以上の米軍請負従事者、1,100人以上のNTO諸国軍兵士が死亡し、数十万人のアフガニスタン人、数万人のNATO要員が負傷している。これらに随伴する被害、損失は、さらに膨大なものと言えよう。
米国だけの直接的財政的負担は2兆ドル以上、間接的費用と債務で6.5兆ドルをも費やし、建設的成果はゼロで、破壊と荒廃だけを山積させたのであった。
米国の団体「Win Without War」のスティーブン・マイルズ事務局長は、「アフガニスタンで起きている悲劇的な出来事は、わが国の終わりなき戦争とそれを可能にする考え方が完全に失敗していることを改めて証明している」と述べ、「20年近くにわたる軍事介入と占領では、永続的な平和
は築けませんでした。どんなに多くの爆弾が投下されても、どんなに長く占領されても、そうはならなかったのです」と述べている。
イギリスを拠点とするStop the War連合の呼びかけ人であるリンゼイ・ジャーマン氏は、8/15に発表した声明の中で、「対テロ戦争全体がひどい失敗であったことを認めるべきである」と述べ、「もし、この戦争に投入された資金のほんの一部でも、インフラ、住宅、教育、農業への投資を通じてアフガニスタンの人々の生活を改善するために使われていたら、アフガニスタンの人々の生活がどのように改善されていたかを考えるべきです」、「この機会を生かすことができたのに、軍事的解決策を優先して無視されてしまった。そしてそれが今日の状況をもたらしたのです」と、強調している。まさにこの視点こそが強調されるべきであろう。
(生駒 敬)