<<投票率11.84ポイント上昇>>
その帰趨が注目された横浜市長選は、パンデミックによるコロナ禍にいかに対処するかが決定的争点となったと言えよう。菅政権のコロナ対策に「ノー!」が突きつけられたのである。
有力候補の得票結果は以下の通りである。
得票数 得票率
山中 竹春 506,392 33.59
小此木八郎 325,947 21.62
林 文子 196,926 13.06
田中 康夫 194,713 12.92
松沢 成文 162,206 10.76
投票率は49.05%で、前回2017年を11.84ポイントも上回っている。単独での横浜市長選の投票率が長らく30%台で推移し、前々回、自民、公明、民主(当時)の3党が推薦した現職と共産党推薦の新人による事実上の一騎打ちだった2013年は、過去最低の29.05%を記録していたことからすれば、久方ぶりの高い投票率となったのである。
とりわけ今回、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言下での選挙戦となったため、ソーシャルディスタンスを守ることを余儀なくされ、各陣営は大規模な演説会を自粛するなど活動を制限、その結果、投票率の低下が懸念され、各候補の得票率が法定得票にあたる25%に達しない場合は再選挙となる事態まで想定されていたていたにもかかわらず、投票率は下がるどころか逆に上昇したのであった。そしてこの投票率の上昇こそが山中竹春氏の勝利をもたらしたと言えよう。
立憲民主党が推薦し、共産党と社民党が支援し、事実上の野党共同候補となった山中竹春氏は、有力候補の中では最も知名度が低く、従来の選挙パターンであれば、政権与党・保守基盤が圧倒的なはずであった小此木氏が圧勝する予測であった。たとえカジノ誘致をめぐる保守分裂があったとしても、パンデミック危機を抑え込めていれば、菅氏の地元で小此木氏はここまで大差をつけられて敗北することはなかったであろう。菅首相の選挙区である衆院神奈川2区(横浜市西区、南区、港南区)の各区でさえも山中氏の得票が小此木氏を上回る結果となっているのである。逆に言えば、小此木氏の足を引っ張ったのは、菅氏自身であったとも言えよう。
コロナ感染危機対策でついに医療崩壊をまで招きだした菅政権・与党体制の危機対応に、感染者を「自宅療養」などという医療崩壊政策に、有権者から厳しい審判が下されたのである。この厳しい審判を自公連合の菅政権に何としても突き付けなければ、という有権者の意識こそが、投票率上昇をもたらしたのである。
市内の新規感染者数が連日1千人を超え、その歯止めがかからない中、「コロナの専門家」とアピールし、「コロナの感染爆発は政治の問題だ」と切り込む山中氏の主張は、対決点が不明確で抽象的で総花的なスローガンの羅列に終始する野党共闘にあきたらず、これまであきらめ、そっぽを向いていた無党派層にも大きく支持を広げたのである。
22日の投開票日に朝日新聞社が実施した出口調査によると、今回、無党派層は全投票者の43%で最大勢力であることが明確となっている。その無党派層から山中氏は、全8候補の中で最も多くの支持を集め、39%を獲得したのに対して、小此木氏は10%、現職の林文子氏は12%しか獲得していないのである。
<<新しい野党共闘のプラットフォーム>>
菅内閣の支持率は、朝日新聞の世論調査で28%、NHKで29%、読売新聞は35%、8/21-22のANNの世論調査ではなんと25.8% にまで落ち込み、今や菅政権は崩壊寸前である。
だがそれでも、立民、共産をはじめ野党の支持率はそれぞれ1桁台に沈み、低迷から抜け出せていない。(朝日8月7-8調査◆今、どの政党を支持していますか。自民32(前回30)▽立憲6(6)▽公明2(3)▽共産3(3)▽維新1(1)▽国民1(0)▽社民0(0)▽NHK党0(―)▽希望0(0)▽れいわ0(0)▽その他の政党0(0)▽支持する政党はない47(48))
8/18、佐高信氏をはじめ、日本体育大学教授の清水雅彦氏、山口大学名誉教授の纐纈厚氏、東京造形大学名誉教授の前田朗氏、安保法制違憲訴訟共同代表の杉浦ひとみ弁護士、NPO法人官製ワーキングプア研究会理事長の白石孝氏、ジャーナリストの竹信三恵子氏の7人が、参議院議員会館で記者会見を行い、7月28日に「いのちの安全保障確立に向けて非正規社会からの脱却を目指す運動を起こす」という理念で「共同テーブル」を結成したと発表している。賛同者は8/17日時点で185人とのことである。
佐高信氏は、「これだけ、安倍、菅とひどい政権になっているのに、野党の人気がもう一つ上がらない。野党の顔が見えない」、「私たちの願いというものと野党は少しずれているんじゃないか。野党にはっきりと目鼻立ちをつける、そういう運動が必要なんじゃないか」と訴えている。
野党共闘と統一戦線は、横浜市長選の勝利に浮かれているのではなく、今回の事態から真剣に教訓を学び取るべきであろう。
(生駒 敬)