【コラム】ひとりごと—民主党は、もう一度出直した方がいい—

【コラム】ひとりごと —民主党は、もう一度出直した方がいい—

○目も当てられない状況である。昨年の政権交代による政治への期待がものの見事に吹き飛んでしまった。○参議院選挙では、民主党が敗北した。消費税問題が一番大きいと言われている。果たしてそれだけだろうか。「鳩山・小沢」ならもっと負けていた、という声もある。○確かに、鳩山は「死に体」状態だった。小沢の問題が、現職国会議員を逮捕して立件する程の問題であったのか疑問は残るが、マスコミが作り出した状況の中では、鳩山・小沢の「政治とカネ」問題は、民主党の政治姿勢の根幹を揺るがすことになった。○最後に止めを刺したのが、普天間問題であった。○筆者は、政権交代があったのだから、新たな日米関係の再構築を前提として、違った選択肢があるはずだし、もっと厳しい交渉が可能だったのではないかと考えている。なぜできなかったのか。○さらに菅新政権が、退任直前の「日米共同声明」を簡単に引継いだことで、問題は残った。外交・防衛問題における民主党の基本路線が曖昧なままになっている。○そして「消費税問題」である。選挙の争点が消費税だったのか。結果として、そうなった。○自民党の消費税10%方針に、「参考にしたい」と菅総理が発言したことから、始まったと言っていい。その意味で責任の所在は明白である。○衆議院選挙からまだ1年しか経っていない。予算も1回しか組めていない。マニフェスト公約は4年間で実現するものであろう。1年間の取り組みを確認し、残り3年で何をするか、それを明確にすれば良いだけのはずだった。衆議院選挙では、4年間消費税は上げないと鳩山が言って政権交代が実現したはずだ。○さらに「事業仕分け」を行い、ムダを省く努力を続けると言えばいいだけではないのか。ここが「謎」である。○まして参議院選挙である。政権選択の選挙ではない。消費税を持ち出すなら、衆議院選挙で国民の信を問えばいい。○何故、それができなかったのか。財務省官僚に唆されたのか、そんな簡単な話ではないだろう。○鳩山政権が信頼を失い、人心一新で誕生した菅政権だったが、逆に余りに準備不足だったのではないか。○東京・大阪の選挙区では、事業仕分けでマスコミの注目を浴びた蓮舫・尾立両候補がトップ当選等を果たしている。自民党ではできなかった「切り込み」に国民の支持が高いことが確認できる。○しかし、負けは負けである。菅総理もポストに連綿としがみつかない方がいいと思われる。少なくとも、選挙総括をやり切り、基本政策をしっかり立てて、組織を立て直す必要があるだろう。○政権交代といっても官僚は自民党時代の役人がそのまま残っている。かつての自民党時代は、大臣は省庁官僚の手のひらの上で踊らされていたのを、政権交代ですぐに変わるとも思われない。少々の時間がかかるのもしょうがない。○それが、比例票では2000万は切ったとは言え、1800万票が取れた要因だろう。○一から出直すことを民主党に期待したい。○一方、脱官僚・脱霞ヶ関と訴えて議席を増やしたのが、「みんなの党」であろう。民主に流れていた自民党・保守票、そして無党派層の取り込みに成功した。皮肉なもので、かつての民主党のスローガンとそっくりだ。ただ公務員(国も地方も)の賃金切り下げの主張が強烈で、「民・みん」は避けてほしいものである。○さて、共産党である。消費税増税反対を強く訴えていたはずだが、逆に得票を大幅に減らし、356万票に留まり、比例議席も1議席減らす結果となった。07年の参議院選挙と比べて84万減らしたことになる。○消費税が焦点と言われるが、消費税反対の共産・社民は、大幅に票を減らす結果となっている。○ここも焦点であろう。普天間問題でも最も鳩山政権を批判してきた政治勢力だからである。○今回の選挙結果については、私自身、まだ戸惑っている。消費税を10%にすると言った自民党が勝利した。消費税に曖昧に言及した民主党と合わせて95人の議員が当選した。○逆に、消費税議論については、民主党の大敗を別にすれば、国民の拒否反応は少なくなったと言えないこともない。それだけ、社会保障や将来のことについて国民の中に不安があるということを逆説的に証明しているとも言える。○民主の大敗によって、衆参でのねじれ状態が生まれた。現時点では、連立ではなく、政策・法案毎の国会運営になるという。何が起こるのか、予想もできないのが政治の世界というが、民主党への試練、大いに結構。一から出直せばよいのである。(2010-07-19佐野)

【出典】 アサート No.392 2010年7月24日

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