【投稿】投機的バブル崩壊への序曲--経済危機論(72)

<<ドットコム・バブル崩壊のアラーム?>>
1/17~21の6日間、ニューヨーク株式市場は続落の事態に直面した。いよいよ異常な事態・バブル崩壊への序曲が始まったのであろうか。
ニューヨーク市場と連動して、日本の日経平均株価指数も2.1%下落(前年比4.4%下落)。フランス・CAC40は1.0%下落(同1.2%下落)。ドイツ・DAX株式指数は1.8%下落(1.8%下落)。スペイン・BEX35株式指数、1.3%下落(0.2%下落)。イタリア・FTSEMIB指数は1.8%下落(1.0%下落)。韓国・Kospi指数は3.0%下落(4.8%下落)。インド・センセックス株式指数は3.6%下落(1.3%上昇)、等々。
週末1/21のニューヨーク株式市場では、米ハイテク大手の決算発表や超金融緩和の出口を探る米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策発表を翌週に控えて警戒感がこれまでになく強まり、株価は6営業日、連日の続落を記録したのである。

ナスダック100の下落が止まらない ドットコム崩壊の警鐘

優良株で構成するダウ工業株30種平均は前日終値比450.02ドル安の3万4265.37ドルと、約1カ月半ぶりの安値で終了。下落幅は6営業日で、計2000ドルを超える異常な事態の展開である。
とりわけハイテク株の売りが止まらず、ハイテク株の比重が高いナスダック100種指数が大きく下げ、4日間で、2020年3月以来最悪の週となり、7.5%下落し、13,768と4週連続の下落を記録。これで11月の終値の高値から14.3%下落したことになる。ナスダック100指数の月間下落率は、2008年の金融危機以降で最大となるペースであった。S&P500も2020年3月以降で最悪の週を記録し、5.7%下落の4,398となり、3週連続の下落となった。1月3日の終値の高値から8.3%下落である。
時価総額では、アップル【AAPL】、アマゾン【AMZN】、メタ【FB】、アルファベット【GOOG】、マイクロソフト【MSFT】、Nvidia【NVDA】、テスラ【TSLA】のハイテク7巨大企業は、1月3日をピークに、それ以降の13取引日で13.4%も急落している。1.6兆ドルの額面上の価値が消失したのである。フェイスブックの親会社メタ・プラットフォームズと、アマゾン・ドット・コムの株価は上場来の高値から、一転して20%以上の下落である。このところ急成長してきたネットフリックスも20%を超える値下がりである。

<<まだまだほんの序曲>>
もちろん、これらドットコムバブルに豊富な資金を提供し、マネーゲームを煽ってきた金融大独占資本の株価指数も暗転しだしている。同じこの週、銀行指数は10.0%下落し、ナスダック100よりも大きな損失となり(7.5%下落)、ゴールドマンサックスは9.7%、JPモルガンは8.1%、バンクオブアメリカは6.2%、シティグループは5.5%も下落している。個人投資家をマネーゲームに引き込んできたロビンフッドは14.3%、ウィズダムツリーは9.7%、インタラクティブブローカーは7.3%、チャールズシュワブは6.6%も沈没している。

実体経済とかけ離れた前例のない投機とレバレッジ、問題のあるデリバティブ、ETF時限爆弾、無数の脆弱な市場バブルなど、今日の脆弱な金融市場構造がいよいよ崩壊の危機に瀕しているのだとも言えよう。
しかし、これらはまだまだ序曲にしかすぎない。投機経済がノーマルであるかのような金融バブルの暴騰の集積と比較すると、十数パーセントの下落ではこれはまだほんの始まりである。
FRBが量的緩和(QE)によって途方もない投機経済を煽り、株価暴騰をを作り上げ、その責任も問われぬままに、インフレ懸念から一転して今度は量的引き締め(QT)を発動だと、政策転換に取り掛かり始めたにすぎない段階なのである。金融引き締め・金利引き上げが開始されるのは3月以降である。姿勢転換だけで、乱高下が常態化し、脆弱な金融投機経済の一端が露呈し始めたのである。本当の暴落はこれからなのである。
FRBがこれまで超金融緩和によって、地方債市場、プライマリーディーラー、マネーマーケット投資信託、REPO市場、国際SWAPライン、ETF市場、一次および二次企業債務市場、コマーシャルペーパー市場に供してきた投機資金はもちろん、よりすそ野の広い住宅ローン、学生ローン、自動車ローン、クレジットカード

緊迫する米上院司法委員会の独占禁止法の抜本的法案の審議

ローンの暗黙の支援も近々に終止符が打たれるか、高金利で破綻するかの岐路に立たされるであろう。
問題は、「ドットコムバブル」へのアラームというようなレベルではなく、米中央銀行・FRBを頂点とした金融資本主義体制そのものの、システミックリスクへのアラーム、警鐘だと言えよう。実体経済に軸足を置いた政策転換に踏み切らない限りは、FRBの今後の利上げサイクルそのものが踏み出すことさえできず、踏み出せば制御不能になる事態さえ想定されよう。
投機経済に終止符を打ち、金融独占資本主義を解体・分割・規制する反独占政策、実体経済を回復させるニューディール政策こそが問われているのである。
1/20、米上院司法委員会は、Google、Apple、Amazonといった巨大企業を対象とした反トラスト法を承認、巨大独占企業の激しいロビー活動にもかかわらず、16対6の圧倒的多数で司法委員会を通過させている。バイデン政権はあいまいな態度をとっているが、この動きは、反独占運動にとって、前向きな一歩であることは間違いない。
バイデン政権の対中国、対ロシアの緊張激化政策は、こうした直面する最大かつ最重要な課題から目をそらし、逃避するものと言えよう。バブル崩壊を目前に控え、緊急に要請されている、こうした反独占政策、ニューディール政策にあいまいな態度をとり、躊躇している限り、バイデン政権はFRBともども迷走せざるを得ないであろう。
(生駒 敬)

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