【投稿】大失策の岸田首相のウクライナ訪問

【投稿】大失策の岸田首相のウクライナ訪問

                    福井 杉本達也

1 子供じゃあるまいし

鳩山由紀夫氏は「中国が和平提案を示し習近平主席がプーチンと会談をしている時、岸田首相はゼレンスキーに会いに行くと言う。G7で自分だけ行ってないかららしいが、自分も欲しいという子供じゃあるまいし」とツイートした。続けて「世界は和平に向けて動き始め出した。単にウクライナを支援しますではなく、戦争終結の和平提案を出すべき時だ」とした。また、原口一博氏は21日、岸田氏のウクライナ訪問について、「無事に帰ってきてほしいが帰ってきたら(内閣)総辞職してほしい」と、かなり厳しい意見をツイッターに投稿した。首相はゼレンスキー大統領に地元・広島名物の「必勝しゃもじ」を贈呈したそうであるが、笑い話にもならない。

2 キエフ訪問の否定的結果を予想

日経は「ロシアと中国の首脳が会議するさなか『法の支配』に基づく秩序を守る主要7カ国(G7)議長の役割を示すことを迫られた訪問だった」と極めて否定的に書いた(日経:2023/3/23)。成算のない、要するに追い詰められてのウクライナ訪問であった。元駐日ロシア大使のアレクサンドル・バノフ氏はSputnikで「現在、日本政府の外交政策全体は、広島で今後開催されるG7サミットの準備に集中している。そして、日本はG7の中で唯一、首脳がまだウクライナを訪問していない国であった。そのため、イメージギャップを埋めようとする試み」であった。「日本が西側諸国に対して独自の忠誠心を明確に示し」、「しかし、その忠誠心は、旧来の日露関係、特に経済分野への打撃になるのではないのだろうか。」、松野官房長官は「ロシア連邦とのビザなしの交流の再開と、漁業に関連する問題の解決であると強調した。ロシア領クリル諸島地域のロシア経済圏での漁業は日本にとって非常に重要であり、実際のところ、日本の漁師自身にとって死活問題になっている。」「日本は現段階ではロシアのエネルギー資源を手放すつもりはなく、ガスや石油を積極的に購入している。特に、サハリン2プロジェクトは日本にはLNG輸出総量の9%に与えている。日本政府は再三にわたって、サハリン2が適切な価格によるガスの安定供給のために重要である点を強調している。」と解説している(Sputnik:2023.2.23)。しかし、岸田首相の間抜けなキエフ訪問はによって、ロシア側からどのような対抗措置が出されてくるのかは全く読めない。、日本の経済的利益が、この政策の犠牲になってしまう。日本にとっては全く国益を売る訪問だったといえる。

3 ロシアに安全を保障されてのキエフ訪問

日経は「日本政府が岸田文雄首相のウクライナ訪問をロシアに事前通告していたことが22日、分かった」「事前通告はロシア軍の攻撃を避け、安全を確保する狙いだった」と報じた(日経:2023.3.23)。日経の同記事の中で「松野博一官房長官ほ22日の参院予算委員会で『ロシア軍による攻撃の情報入手を合め、ウクライナ政府が全面的に責任を負って実施した』」と答弁したが(日経:同上)、全くのデタラメである。元防衛次官の黒江哲郎氏は「ロシアの軍事能力であれば、どこからでもミサイルを撃てる。万が一の事態になったときには領域主権の問題でウクライナ軍に守ってもらわないといけない」と書いたが、寝言も甚だしい(日経:同上)。制空権はロシア軍が握っている。列車は線路上を走るので位置が確定でき、容易にミサイルの標的になる。 キエフまで10 時間、往復で 20 時間もかけて列車で行くとなると、どうぞ撃ってくれという話になる。ウクライナ軍に岸田首相の安全など保障できるわけもない。せいぜい、自らの発射したブークミサイルがあたらないようにすることぐらいである。2月のバイデン大統領のキエフ訪問同様、ロシアは外交上の礼儀と御情けで岸田首相のキエフ訪問を認めたのである。

4 再度:安倍元首相暗殺と対ロシア外交

孫崎享氏は3月20日のメルマガ「バイデン政権は安倍元首相をどの様にみていたであろう」かという見出しで「バイデン首相にとって安倍氏は決して親しみのある相手ではない。ではウクライナ問題で、バイデン政権には安倍氏はどの様に見えるか。① 安倍氏はプーチン大統領と極めて近い(と見なしうる)② ウクライナ支援に懐疑的なトランプに近い(と見なしうる)③ 安倍派は森派の継承であり、ロシア問題では森元首相の影響が強いと見なしうる。その森氏は『ロシアは負けない』『このようにウクライナ支援に突っ込んでいいか』との考えを持たれ、最近それを公までしている。④ 制裁では、石油・天然ガスが一番重要であったが、日本はサハリン2からの撤退を行っていない。⑤ 安倍氏の側近も対ロ制裁には批判的である。安倍氏に最も近かったのは今井尚哉氏である。彼も対ロ制裁に消極的である。」故安倍氏は「2023 年2 月28 日は次のように述べている。『決定的にやってはいけないことは、外交を断つことだ。確かに、今回はどう考えてもプーチン大統領が悪い。ウクライナに利があり、国際社会もロシアが併合した4 州を絶対認めないだろう。しかし、レオパルド2などの主力戦車を300 台配備したところで、あの四州を力で押し戻すのは極めて難しい。このままでは、どんどん人が死ぬだけだ。日本政府は先の大戦を経て、もう戦争はしないと決めた。だから、どうして岸田政権は停戦に向け、動かないのか。私は怒りすら感じている』」と書いている。また、ミハイル・ガルージン前駐日ロシア大使は離任前に「2012年から2020年にかけての露日関係発展におけるきわめて肯定的な段階…双方にとって有益な複数の分野における進歩的な関係発展に向けた、質的に新しい創造的な相互協力の雰囲気を作り出すことができた段階でした。そしてそれは、多くの点において、両国にとっての突破期だったと感じています。…その最たるものは、北極圏で共同で開発した天然ガス田から液化天然ガスを日本に輸送するプロジェクト『アークティックLNG2』を始めとするエネルギー分野の事業です」と述べ、安倍政権の対ロ外交を評価していた(Sputnik:2022.8.12)。

こうした状況下で安倍氏は7月に暗殺された。犯人は山上容疑者だと言われるが、山上容疑者が持っていたまっすぐに銃弾が飛ばないような手製の銃で人が殺せるとは思えない。拳銃の場合、犯人を特定するにはどの銃で撃ったのかという銃弾が必要だが、「疑惑の銃弾」(週刊文春:2023.2.16)は奈良県警が“故意に”紛失したままで発見されていない。しかも、現場検証は事件後5日もたってからである。当時、県警は故意に警備を手薄にしていたことは奈良県警本部長の辞職からもうかがえる。警察庁・県警・検察・裁判所まで指令できるのは米国しかいない。マスコミは事件後わずか15分で山上容疑者の身元を特定し(県警のリークによる)、母親の大学時代の同窓生の名簿まで手に入れて取材に狂奔した。ジャパンハンドラーにとって、プーチン氏に近く、ウクライナ停戦を考えるような安倍氏は邪魔だったのであろう。

岸田氏や司法権力は完全に「ネオコン」の手中にあるが、原口氏によれば、まだ官僚機構には日本の国益を第一に考えるものも残っている。サハリン1.2の権益維持や日ロ漁業交渉、ロシア産魚介類の輸入、日本領空のロシア機飛行を禁止しないなど、独自の道も探っており、「子供」のようにジャパンハンドラーの虚言に惑わされるのではなく、自らの国益に合致した「大人」の行動をとる自立した外交が求められる。

カテゴリー: ウクライナ侵攻, 平和, 政治, 杉本執筆 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA