<<「スタンド・アップ・スト」リストを拡大>>
9/23、全米自動車労組UAWの米ビッグ3自動車メーカーに対する同時ストライキが、さらに拡大されることが明らかにされた。UAWののショーン・フェイン委員長は、ゼネラル・モーターズとステランティスの20州の38施設にストライキを拡大すると発表。「すでにストライキを実施している工場は、引き続きストライキを継続する」とともに、新たに対象となった工場の労働者は、9/23正午よりストライキに入った。フェイン氏は、「GMとステランティスのすべての部品配送センターが
ストライキに入る。カリフォルニアからマサチューセッツまで、あらゆる場所でストライキを実施し、必要に応じて「スタンド・アップ・ストライキ」を拡大し続ける」と語っている。
同氏はまた、ストライキ参加者への支援を訴え、「国民はわれわれの味方であり、UAWの組合員は立ち上がる準備ができている。われわれは、友人や家族から合衆国大統領に至るまで、われわれの大義を支持するすべての人々に、ピケ・ラインに参加するよう」呼びかけている。
事実、最新の世論調査では、現在ストライキ中の自動車労働者を支持していることが示されている。9/20のロイター/イプソスの最新世論調査では、党派に関わらず有権者の58%が全米自動車労組によるストライキを支持し、民主党支持層では、72%がUAWを支持している。
ただし、このスト拡大対象にはフォードは含まれていない。フェイン氏は交渉の席で同社との前向きな「真の進展」があったと報告。それによると、フォードは2段階賃金制を断念し、利益分配の提案を13.3%に引き上げ、2009年に取り下げたインフレ連動の生活費引き上げ(COLA)を復活させ、「すべての臨時労働者のフルタイムへの即時転換」と工場閉鎖をめぐる組合のストライキ権に合意した。そのため、ミシガン州ウェイン郡にある塗装・最終組立工場以外のフォード支部はストライキ・リストに追加されなかった。「フォードではまだ終わっていないが、彼らは真剣に交渉を望んでいる」という。
しかし、「GMとステランティスでは、話は別だ」、「GMもステランティスもCOLAの復活を拒否する姿勢を崩していない」、「私たちは、彼らが正気に戻るまで部品流通センターを閉鎖する」とフェイン氏は語り、GMは、ストライキの「マイナスの波及効果」として、カンザス州フェアファックス自動車組立工場の従業員2,000人に対し、工場を閉鎖し、今週休業すると発表、ステランティスはストライキの直接の結果としてイリノイ州ベルビディア組立工場の再開提案を撤回し、イタリアではステランティスのフィアットで人員削減攻撃に出ており、労働者6000人がストライキに突入したという。
<<バイデン氏がピケラインに参加!?>>
来年米大統領選再選を目指すバイデン氏は、「労働者寄りの大統領」を自称しており、「9/26、火曜日、私はミシガン州へ行き、ピケットラインに参加し、UAWの男女と連帯する。彼らは、自分たちが創り出した価値の公正な分配を求めて闘っている。今こそ、高賃金のUAWの雇用でアメリカの自動車製造業を繁栄
させ続けるウィンウィンの合意の時だ」と語っている。「ストライキ中の労働者と連帯し、ピケットラインに参加するとなれば、これは前例のないことだ」と、民主党プログレッシブグループのジャヤパル議長は語っている。
しかし、バイデン氏は、ほんの数か月前、鉄道労働組合が、組合員全員投票でストライキを決議した際に、鉄道ストは、貨物の推定 30% と、旅客および通勤鉄道サービスのほとんどが凍結され、インフレに陥った経済を脅かすとして介入し、団体交渉権まで制限する非民主的な協定を強制し、全国的な鉄道ストライキを阻止する法案に署名して、ストライキを破棄させた張本人である。この歴史的に恥ずべきストライキ破りの行動には、民主党の進歩派議員までが同調したのであった。鉄道労働者がとりわけ求めていた安全確保要求のストライキを放棄させた、その数週間後に、オハイオ州での列車脱線事故が起きた、いや結果として安全確保がないがしろにされ事故が起こされたのであった。
ところが今回、バイデン氏は自らを労働者の友人であると自称し、経営者側に譲歩を求め、自分はUAW労働者、そして労働組合一般の側にしっかりと立っていると自己宣伝している。同時にバイデン氏は、ストライキがこれ以上大規模化、大胆化、強力化、経済への破壊的影響が大きくなるのを防ぐために、ストライキを早期に終結させることが主な目標であることも明らかにしている。
バイデン政権は、EV生産を促進するための大規模な資金計画を発表したばかりであり、それによって自動車メーカーはUAWの給与要求に適当に応じれば、連邦政府の資金を引き出し、在庫の途絶を回避し、財務上の損失を数カ月ではなく数年に分散させることができ、なおかつ、EVの製造に必要な労働力は、ガソリン車に比べて大幅に削減できる、これこそが「ウィンウィン」だというわけである。
これは当然、2024年の選挙を目前に控え、とりわけトランプ前大統領がこれまた手前勝手な「われこそが労働者の味方」面していることに対する、便宜的対処に過ぎないものでもあろう。本音は、ビッグ3資本の利益を確保し続けるために、ストライキを早期に終了させることにある。バイデン氏が現在最も恐れているのは、UAW労働者の支持拡大と戦闘性の持続である。
支持率が一向に上昇せず、揺れ動く立ち位置の変化と動揺は、バイデン氏にとって、矛盾に満ち満ちた政治的経済的危機の反映でもあろう。
(生駒 敬)