【投稿】危険な乱心・トランプ:イランに「無条件降伏」を要求

<<「我々は今やイラン上空を完全に掌握している」>>
6/17、午前11時55分(米現地時間)、トランプ大統領は自らのソ-シャル・メディアTruth Socialに次のように投稿した。
 「我々は今やイラン上空を完全に掌握している。イランは優れた空中追跡装置やその他の防衛装備を豊富に保有していたが、米国が開発、考案、製造した『もの』には及ばない。古き良き米国以上に優れた技術を持つ国は他にない。」
イスラエルのネタニヤフ首相も、「イスラエルはテヘラン上空を制圧している」と主張し、テヘラン市民に避難を一方的に命じている。
次いで、20数分後の午後12時19分、トランプ氏はこう付け加えた。「我々は、いわゆる『最高指導者』がどこに隠れているかを正確に把握している。彼は格好の標的だが、そこは安全だ。少なくとも今のところは、我々は彼を排除(殺害!)するつもりはない。だが、民間人や米兵へのミサイル攻撃は避けたい。我々の忍耐は限界に達している。この問題にご関心をお寄せいただき、ありがとうございます!」
 そして、その3分後、午後12時22分、今度は大文字で「無条件降伏!」をイランに要求した。

この経過の中で、「我々は」という言葉を使ったということは、もちろん、「イスラエルと我がアメリカ」を指していることが、容易に見て取れる。
しかし、アメリカはまだイランとは、戦争状態に入っていないはずである。もちろん、宣戦布告もなされていない。トランプ氏自身が、ほんの数日前まで、米国はイスラエルとイランの戦争には「関与していない」と声高に主張していたのである。
わずか数日で、『関与していない』、『これは我々の作戦ではない』という立場から、『我々は今やイラン上空を完全に掌握している』、『我々の忍耐は限界に達している』、『無条件降伏せよ!』という立場に変わってしまったのである。6/15の段階でも、トランプ氏は、米軍が戦闘に参加する可能性は「ある」と述べていた、さらに6/16の段階でも、記者団に対し、米国の戦争介入の可能性について問われると、「その件については話したくない」と述べると同時に、「我々は関与していない。関与する可能性はあるが、現時点では関与していない」と付け加えていた。それが、一気に「我々の戦争」「無条件降伏要求」への変心である。もはや、この戦争に積極的に参加していないふりをすることができなくなってしまったことの裏返しでもあろう。

<<「これは我々の戦争ではありません」>>
「無条件降伏せよ!」とは、本来、宣戦布告後の戦争用語であろう。絶対不可欠な米議会の宣戦布告は、もちろんなされてはいない。第一、イランとは戦争状態ではない、今後は別として、イランはいまだイスラエルの攻撃に加担している米軍基地をさえ攻撃していない。イランは、トランプ大統領がイスラエル加担に明確に踏み出した場合、中東地域の米軍基地を攻撃する用意があると警告し、「イランはホルムズ海峡に機雷を敷設する可能性がある」と述べている。「これは、ペルシャ湾でアメリカの軍艦を足止めするための戦術である」とニューヨーク・タイムズは報じている。

こうした経緯における、トランプ氏の投稿の特異性、異様さを、弁護士のジョージ・コンウェイ氏は、「この瞬間を思い出してほしい。@realDonaldTrumpは、他者を暴力的な死で脅すというナルシスティックでサディスティックなスリルに浸っている。彼はその感覚を渇望し始めるだろう。」と書いている。

ブルワークのサム・スタイン氏もトランプ氏の投稿は、「新たな中東戦争の開始をツイートしているだけだ。米国によるイラン爆撃の可能性をリアリティ番組の一エピソードのように扱っている。」と指摘している。

しかしこの「乱心」は、見過ごし得ない危険な「乱心」でもある。トランプ氏があたふたとカナダで開かれていたG7会合を途中退席したのは、もちろん、G7の形骸化もあろうが、ホワイトハウスの発表によると「中東での状況が理由」だという。Axiosによると、トランプ大統領は、米軍直接参加、あるいは直接的な軍事支援での、イランの核施設への攻撃を真剣に検討しているという。
 すでにアメリカは、アメリカ軍基地を守る戦闘機の支援や、イランの核施設への攻撃に投入される可能性のある爆撃機の航続距離延長のために、約34機の給油機を派遣した、と報じられている。空母もこの地域に続々と移動している、と言う。

すでに、米議会では、トランプ氏の「乱心」を防ぐ動きが活発化している。
 民主党のトーマス・マッシー議員は、「これは我々の戦争ではありません。
しかし、もしそうであれば、議会は憲法に従ってそのような問題を決定しなければなりません。超党派の戦争権限決議案を提出します。」

トランプ氏の熱烈な支持者であるマージョリー・テイラー・グリーン下院議員(共和党、ジョージア州選出)でさえも、米国によるイスラエル戦争への支援を強く批判している。「米国がイスラエル・イラン戦争に全面的に関与することを熱望する者は、アメリカ・ファースト/MAGA(アメリカ第一主義)の信奉者ではない」と、彼女は日曜日にXに書いた。「罪のない人々の殺害を望むのは吐き気がする。私たちは外国での戦争にうんざりしている。あらゆる戦争に」

米議会でさえ、反トランプの動きが活性化しだしている。いずれにしても、トランプ氏の危険極まりない「乱心」は、ストップさせられなければならない。
(生駒 敬)

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