【投稿】「もんじゅ」廃炉をめぐる課題

【投稿】「もんじゅ」廃炉をめぐる課題
                            福井 杉本達也  

1 やっと「もんじゅ」の廃炉が決定
 「政府が,高速増殖炉『もんじゅ』について廃炉を含め抜本的に見直すことを前提に,新たな高速炉開発の司令塔機能を担う『高速炉開発会議(仮称)』を設置する方針であることが21日わかった」)(朝日デジタル:2016.9.21)。存続を求める文部科学省と、「もんじゅ」抜きの核燃料サイクル政策をめざす経済産業省の主張が対立したが、経産省の意向が通るかたちで決着した。「規制委は日本原子力研究開発機構に代わる新たな運営主体を求めたため、文科省は電力会社などを新たな受け皿に期待したが、かなわなかった」(日経:2016.9.22)。
 高速増殖炉「もんじゅ」は1983年の原子炉設置許可から33年,1994年の初臨界から22年,その間,実働わずか250日で1兆2000億円もの莫大な予算が投じられてきた。使用済み核燃料からプルトニウムを取出し,再び燃料とすることで“夢の原子炉”、“ 核燃料サイクルの本命”といわれたが,1995年8月29日の初発電から4カ月も経たない12月8日に冷却材のナトリウム漏れ事故が発生し運転が停止。5年後の2010年5月には再び運転が開始されたが、45日後には炉内中継装置の落下事故で再び運転が停止された。その後も数々の点検漏れなどの不祥事が続き,2013年には原子力規制委から事実上の運転禁止命令が出されるなど再稼働のメドがつかない状態が続いていた。この間,設備維持などで年間200億円もの公費が投入されていた。では、政府が廃炉を決定した要因は何か。まさかたかが規制委の「勧告」の力ではあるまい。背景には米国の圧力がある。
 
2 「もんじゅ」存続にこだわり続けた理由は日本の独自核武装にある
 日経は「ここまで政府がもんじゅの存続に固執続けてきた理由は核燃料サイクルにある…高速増殖炉の存在が危うくなれば、核燃料サイクルや原子力政策自体が揺らぐ。日本にプルトニウムの平和利用を認め、18年に更新時期を迎える日米原子力協定にも影響を及ぼしかねない」(日経:同上)と書くが、「核燃料サイクル」とは核兵器の材料としてのプルトニウムを取り出すことである。
 「もんじゅ」は「増殖炉」というが燃料のプルトニウムの倍増には50年以上がかかる。50年以上となれば建て替えも必要となってしまう。とても増殖どころではない。しかも、プルトニウムは圧倒的に炉心燃料に存在する。ところが炉心は核分裂で貴金属が大量に作られ、これは再処理するための硝酸には溶けない。「もんじゅ」の真の目的は炉心の再処理にあるのではなく、炉心を取り巻くウラン238で構成されるブランケットと呼ばれる燃料集合体にある。これを毎年取り出せば(燃焼し過ぎでプルトニウム239以外の放射性物質ができないよう生焼き状態で)、プルトニウム98%という超純粋の兵器級プルトニウムを62kg製造することが可能である。これを東海村の特殊再処理工場(RETF)で再処理すれば超兵器級プルトニウムを抽出できる。3kgで1発の核兵器が製造できるとすれば20発分である。3.11後においても、石破茂前地方創生相は「報道ステーション」に出演して「日本は(核を)作ろうと思えばいつでも作れる。1年以内に作れると。それはひとつの抑止力ではあるのでしょう。それを本当に放棄していいですかということは、それこそもっと突き詰めた議論が必要だと思うし、私は放棄すべきだとは思わない」(2011.8.16)と述べるなど、文科省(旧科学技術庁)を中心とする独自核武装の動きは続いている。

3 「高速炉開発会議」・実験炉「常陽」の活用・仏と共同の「ASTRID」計画は独自核武装研究の隠れ蓑
 政府は「もんじゅ」が廃炉にすることを決定したが、核燃料サイクル構想=独自核武装を完全に諦めたわけではない。主導権は文科省から経産省に移るものの、新たな「高速炉開発会議」を設け、茨城県にある実験炉「常陽」とRETFを活用して独自核武装を推し進める方針に変わりはない。原子力機構は既に「常陽」の再稼働に向け規制委に安全審査申請する方針を明らかにしている(福井:2015.12.2)。「常陽」は、2007年に「もんじゅ」と同様の燃料棒引き抜き装置の事故を起こしている。「常陽」は99.2%の超兵器級プルトニウムを製造することが可能であるが、1982年に炉心を改造してブランケットを取り外している(それまでに19.2キロ=原爆6発分のプルトニウムを生産している)。「もんじゅ」廃炉となればブランケットを再び設置し、2000年から工事が中断しているRETF(福井:2015.9.2)の工事を再開、超兵器級プルトニウムを製造することは可能である(毎日「核回廊を歩く」:2015.11.28)。
 一方、「もんじゅ」に代わり,経産省が推し進めるのがフランスの高速炉計画「ASTRID」プロジェクトである。工業用実証のための改良型ナトリウム技術炉で,日仏で共同開発を進め2030年までの実用化をめざすというが、計画はすでに2年前から決まっており、「もんじゅ」廃炉後の目くらましで国民からの批判をかわし核兵器の研究を続けることができる。

4 シリア問題と余剰な兵器級プルトニウム廃棄に関する米ロ協定の停止との関係
 シリア内戦での米国による停戦破りにからみ、ロシアのプーチン大統領は10月3日、対米関係の悪化などを理由に、余剰な兵器級プルトニウム廃棄に関する米ロ協定を停止する大統領令を発表した。2000年に米国との間で双方が核爆弾数千個分に相当する34トンのプルトニウムを処分するとしていた。2010年、米国は、ロシアとの「プルトニウム管理・処分協定」において、同協定の対象となる34トンの兵器級プルトニウムのすべてをウラン・プルトニウム混合燃料(Mixed Oxide Fuel(MOX 燃料))として焼却処分すると約束した。しかし、2014年4月、オバマ政権は、MOX に変わる方法について希釈又は固定化することを選択し、MOXで焼却することをやめた(核分裂性物質に関する国際パネル(IPFM):「MOX利用に代わる道」2015.4)。つまり、米政府は、自国のプルトニウムを「焼却」せず、他の材料でそれを薄め、放射性廃棄物貯蔵所に置くことを計画している。プルトニウムを回収し加工して、再び核兵器製造に適した材料に替えることが可能となる(Sputnik:2016.10.5)。
 米国は2014年、ウクライナでクーデターを起こし、ポーランド・ルーマニアで対ロミサイル迎撃網(MD)の構築を図るとともに、デンマークやNATOに加盟しないフィンランドでも計画している。また、9月30日、韓国は北朝鮮の核に対抗するという名目で、実質は中ロのミサイルに対抗する米ミサイル迎撃システム(THAAD)の配備先候補地をロッテグループのゴルフ場に決定した。また、南シナ海では西沙諸島を巡り、米太平洋艦隊が中国に対する威圧航行を行っており、これらに日本も加担している。
 今年3月には東海村・原子力機構の高速炉臨界実験装置(FCA)に使用していた兵器級プルトニウム331キロ(核兵器100発以上)を米国に返還させられた。また、京大原子炉の兵器級高濃縮ウラン45キロ(核兵器2発分)も返還されることとなった。これら一連の動きはバラバラのものではなく、先制核攻撃を準備するために日本などに分散保管されていた兵器級プルトニウムなどを米国に集中しようとするものである。冷戦がもたらした危険な遺産としての約220トンの兵器級プルトニウム(そのうちの95%を米ロ両国が所有)があるが、冷戦終結以降、米ロは核兵器保有量を大幅に減らしており、兵器級プルトニウムの約半分が余剰として処分対象となるとしてきた。米国の一連の動きは、こうした核兵器削減の流れに逆行するものであり、「もんじゅ」廃炉もこの渦中にある。中東・アフガンに多くの通常兵力を固定された米軍は、ロシア・中国を牽制するために、「核なき世界」どころか再び核兵器に頼ろうとしており、「属国」に独自核武装を認める余裕は益々少なくなっているようである。

5 「もんじゅ」廃炉後の使用済みMOX燃料の課題
 福島第一原発の事故において、使用済み核燃料の恐ろしさについて再認識した。3号炉では貯蔵用プールの冷却機能が失われ、大爆発を起こした。4号機核燃料プールの水がなくなれば、首都圏3000万人の避難という事態も想定されていた。貯蔵された使用済み核燃料に爆発事故などが起これば、大量の放射性物質が飛散する。「もんじゅ」の使用済みMOX燃料を直接処分する場合には、中間処分(使用済み燃料プールに入れて間断なく水冷する)期間として数世紀(500年)を必要とする。MOX燃料の発熱量は、ウラン燃料を10年間冷却した後の発熱量と100年経過してやっと等しくなる。ひたすら燃料プールで冷やし続けるしかない。日本で500年前といえば北条早雲が活躍した戦国時代である。
 一方、使用済みMOX燃料の実質的な再処理は極めて難しい。プルトニウムを燃やした燃料は大変溶けにくく、放射能含有量は通常使用済み核燃料の10倍にもなり、特に遮蔽の難しい中性子線が10倍と大量に出る。これが米ロ合意でロシアが兵器級プルトニウムのMOXによる処分を提案していた理由である。「もんじゅ」は廃炉になっても子々孫々への放射能処分という重い課題は残る。

【出典】 アサート No.467 2016年10月22日

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