【投稿】「ならずもの国家」へ突き進む安倍政権

【投稿】「ならずもの国家」へ突き進む安倍政権

<傲岸不遜そのもの>
 高支持率と絶対安定多数に奢れる安倍政権は、この間軍事政策を始めとする全般的な分野で、国会、国民そして民主主義、司法(「諫早」、「大飯」、「厚木」判決など)憲法を軽視、侮蔑する言動を繰り返している。
 この政治姿勢は国内のみならず周辺地域に向けても発露されており、東アジアの緊張を高め、国際社会から危険視される方向へ日本を導いている。
 石原環境大臣は6月16日、核汚染廃棄物の中間貯蔵施設建設問題に関し、受け入れに難色を示す福島県自治体、住民に「最後は金目でしょ」という暴言を投げつけた。
 これは、前日までに開催された建設予定候補地である福島県双葉町と大熊町の住民らに対する説明会で、用地買収などの補償額が明確に示されなかったことに対し、参加者から批判が相次いだことへの苛立ちからの発言である。
 こうした事象は、これまでも問題発言を繰り返している石原環境大臣個人の資質もさることながら、安倍政権の驕り高ぶった認識の反映である。
 石原大臣に対しては、衆議院での不信任決議案と参議院での問責決議案が出されたが、与党の反対多数で否決されたが、発言の撤回と地元での謝罪を余儀なくされた。
 1月には名護市長選挙に際して石破幹事長が500億円の「地域振興基金構想」を提示し、露骨な利益誘導を目論んだ。これも「最後は金目」と思い込んでいたからである。
 名護市民を舐めきった提案は手痛い反撃を受けたが、安倍政権は旧態依然の政治手法をまったく反省などしていないことが、今回の石原発言で明らかになった。
 6月18日東京都議会では、少子化対策について質問中の女性議員に対し自民党都議が「早く自分が結婚すれば」「子供を産めないのか」などと、聞くに堪えない差別的ヤジを飛ばした。
 発言そのものも大問題であるが、対象が国政における準与党であるみんなの党所属議員であり、安倍総理にも子供がいないことを考えれば、政治的センスゼロの天に唾する発言であるが、国会、自治体議会を問わず与党に胡坐をかく自民党の認識の一端を如実に示すものと言える。
 自民党女性議員からも批判の声が上がるなど、問題の拡大に慌てた石破幹事長は「あってはならないこと」などと火消しに躍起だが、まず自らの所業を反省すべきだろう。
 こうした傲岸不遜、蒙昧無知の言動は国内だけに止まらない。安倍内閣は軍拡政策の一環として、武器輸出の推進を目論んでおり、6月下旬パリで開催された世界最大規模の兵器見本市(ユーロサトリ)に三菱重工業などが出展した。
 この視察に訪れた武田防衛副大臣は、外国企業のブースで展示品の自動小銃を構え、笑みを浮かべながら銃口を周囲の人に向けるという常軌を逸する行動をとった。軍事に携わる政治家が最低限のマナーさえ守れないという光景は、日本の軍事政策の危うさを象徴するものでもある。

<戦争性暴力被害者を冒涜>
 安倍政権の高慢さは対外政策に於いても顕著となっており日本の孤立化を自ら招いている。
 政府は6月20日、従軍慰安婦問題に関する「河野談話」の検証結果を公表した。当初安倍政権は談話そのものの否定を目論んでいたが、アメリカの反発により「検証はするが見直しはしない」という矛盾した方針に転換した。
 検証報告では「日韓両政府は談話の表現を事前にすり合わせした」「両政府は事前調整について非公表とすることとした」「元従軍慰安婦の聞き取り内容の確認作業は行われなかった」など河野談話の信頼性を損ねる内容が羅列されている。
 政府は検証作業は公正に行われたと主張するが、結論は最初から決まっているわけであり茶番劇そのものである。
 案の定答えは「韓国からの要請で事実に基づかずに作成された政治的妥協の産物」という趣旨であり、さらに「元慰安婦は『補償金』を受け取っている」と「最後は金目でしょ」という安倍政権の思想に貫かれたものとなっている。
 今回の検証作業で「河野談話」は実質的に否定されたも同然であり、いくら安倍政権が「談話を継承する」と唱えようと、それに基づいた根本的解決の道は、一方的に閉ざされたのである。
 6月上旬にはロンドンで「紛争における性的暴力停止のためのグローバルサミット」が開かれ、150か国から政府関係者、法律家、軍人、NGOなど1200人が参加した。
 この会議で韓国政府代表は従軍慰安婦問題に言及したが、日本政府は、河野談話の検証作業はおくびにも出さず、まともな反論はできなかった。
 これに先立つ6月7日にはフランスで、ノルマンディー上陸70周年の記念式典が挙行され、米英仏露の旧連合国に加え敗戦国のドイツも加えた各国首脳が一堂に会し、第2次世界大戦の結果を尊重することを確認した。
 このような国際的潮流に挑戦するかのように、6月15日、日本維新の会の橋下共同代表(当時)は、大阪市内の街頭演説で「ノルマンディー上陸作戦の後、連合軍兵士もフランス人女性をレイプした」と相も変わらない歪んだ歴史認識を露わにした。
 日本政府の強硬姿勢を後押しするような発言は、「地球儀を俯瞰する価値観外交」で成果を出せない安倍総理を勇気づけたことだろう。
 安倍総理は、6月4,5日ブリュッセルで開かれたG7サミットで「中国脅威論」を懸命に説いてまわったが、各国首脳の関心はウクライナ情勢に集中し、首脳宣言でロシアとは対照的に中国を名指しさせることはできなかった。
 反対に3月欧州を歴訪した習近平主席や、6月17日に訪英した李克強首相は異例の厚遇を受け、中国と欧州各国の経済協力関係は一層深化した。
 6月の一連の動きはアジアで強硬姿勢を見せる日本政府の主張は、国際社会では受け入れられていないことを浮き彫りにしたのである。

<日本発脅威の拡散>
 安倍政権は世界における日本への視線を一顧だにせず、軍拡による緊張激化を推し進めている。
 集団的自衛権解禁に関して6月13日、自民党の高村副総裁は公明党に対し武力行使の「新3要件」を示した。
 その内容は、①我が国に対する武力攻撃が発生、又は他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される「おそれ」がある ②国民の権利を守るために他に適当な手段がない ③必要最小限度の実力行使にとどまるべき、となっている。
 この時点では想定される武力行使は「自衛権」に限定されたものとなっており、公明党も第1項目の「おそれ」が拡大解釈を招くので、この表現を削除すれば、与党合意に向けた論議が進む状況となっていた。
 しかし、自民党は19日なり突然「たとえばペルシャ湾(ホルムズ海峡)での機雷掃海については集団安全保障としての参戦も可能」として、「新3要件」は集団安全保障発動下でも適用できると主張を転換したため、公明党が態度を硬化させることとなった。
 この間のイラクにおけるスンニ派の武装集団「イラクとシリアのイスラムの国」(ISIS)の勢力拡大による情勢の不安定化で、「米軍参戦も有りうる」と慌てた外務官僚が自民党に吹き込んだのだろう。
 ところが肝心のアメリカは早々にオバマ大統領が「地上兵力は派遣しない」と表明、空爆も当面行わず、情報収集のため300人の特殊部隊など派遣するにとどまっている。
 今後もアメリカの大規模な介入の可能性は低く、イラク情勢が国連決議を経た集団安全保障の発動に至る恐れはない。自民党の提起は勇み足の形となった。
 安倍政権は、7月第1週の閣議決定を目論んでおり、その文言も「離島防衛」などいわゆる「グレーゾーン」などについてはほぼ固まっており、核心部分の「集団的自衛権」部分の調整を残すのみとなっていた。
 それを米軍支援どころか事実上の多国籍軍参加まで拡大し、安倍総理自身の「湾岸戦争やイラク戦争などのような事態に自衛隊が武力行使を目的に参加することは決してない」との国会答弁を、舌の根の乾かないうちに否定するような内容を国会閉会中に閣議決定を強行しようというのである。
 これまでも、安倍政権は中東地域に「海賊対処法」に基づき派遣していた海自部隊を、目的が同じだからと、昨年12月から多国籍軍(艦隊)である「第151合同任務部隊」に参加させており、法的根拠の相違は無視してきた。
 今回は相手が海賊ではなく国家レベルになるかもしれないということで、法整備に躍起になっているのである。
 まさに奇襲攻撃、騙し討ちと言いうべきものだろう。こうした安倍政権の政治姿勢は、東アジアに於ける振る舞いも含め、国際社会からは「民主主義という価値観を共有する国」とは見られず、地域ばかりか、世界的に緊張を高めかねない存在として注視されることになるだろう。
 先の国会で野党は存在意義を発揮できなかったが、今後単なる数合わせではなく政策による対抗軸構築を進め、安倍政権の暴走に歯止めをかけていかねばならない。(大阪O)

 【出典】 アサート No.439 2014年6月28日

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