【投稿】「維新」のたそがれ–大阪府議会で過半数割れ–
<造反により第三セクター売却案が否決>
大阪維新の会の退潮が止まらない。今年7月参議院選挙での低迷、9月堺市長選挙での敗北、11月には大阪府岸和田市長選挙でも敗北と続いている。そして、今回大阪府議会では、第三セクターである、大阪都市開発株式会社の民間への売却議案が、維新自身から造反が出ることで否決された。
大阪都市開発株式会社は、府内でトラックターミナル、難波と泉北ニュータウンを結ぶ「泉北高速鉄道」を経営し、トータルでは黒字企業である。民間で出来るものは民間で、との維新方針のもと、売却が橋下知事時代から提起されてきた。松井知事の下で、今回公募が行われ、米投資ファンドのローンスターが、売却額で南海電鉄の提案を上回ったため、優先予約権を獲得した。それが、府議会で否決されたのである。
9月の堺市長選挙では、運賃の割高な泉北高速の運賃値下げも争点になった。都心に近い千里ニュータウンと違い、泉北ニュータウンからの通勤・通学問題では、運賃の割高に、市民の不満が高かった。市長選では敗北したが、維新の候補者も運賃の値下げを公約していた。
堺市議会では、泉北高速鉄道の運賃値下げ幅が小さいと、自公民が反発、維新も含めた全会一致の反対決議案の動きがあったが、松井知事に一喝され維新議員団は離脱、売却案の白紙撤回決議が賛成多数で可決されていた。
こうした中、府議会に提案された米投資会社への売却案の採決が12月16日に行われ、維新派府議4名の造反により、否決された。反対に廻った府議は、大阪市内選出1名、堺市2名、高石市選出1名の4名であった。
維新は、即刻除名の対応を行ったが、即座に自民党会派と連絡を取る議員もいたという。2015年4月の統一地方選挙では、維新では当選できないという空気が出てきているのだ。
これにより、辛うじて府議会の多数を確保してきた維新は、少数与党に転落した。
<大阪市でも公明が離反し、孤立>
大阪市会でも維新派の力が弱まっている。ここでは、元々維新は少数であって、公明の「協力」なくしては何も決められない。少なくとも、昨年12月の総選挙までは、市会公明と維新は「協調」してきた。しかし、総選挙が終わり、自公による安部政権の成立以降、「すきま風」が吹き始めた。
今年9月には、橋下市長が提案した水道事業の統合議案が、市議会で否決。11月には、大阪府立大学と大阪市立大学の統合議案も否決された。また市営地下鉄事業の民営化議案も、公明の協力が得られず、11月3度目の継続審議となった。
一方、橋下市長が進めてきた公募路線も、失敗が続いている。4月には、公募区長を分限免職、11月にはセクハラ事件を起こした労働部長を処分、公募校長にも不適格者が続出という事態だ。ここまで「公募」で選んだ人間が、程度が低いとなると、それは選んだ方こそ、「程度が低い」ということだろう。市民も気付き始めている。
<大阪都構想の実現も、益々不透明>
公明の賛成で、大阪都構想を準備する「法定協議会」が設置された。しかし、審議が進んでいない。年内に区割り案を確定するとしてきたが、年末の協議会でも決められなかった。橋下市長は、11月の記者会見では、来年10月には大阪市分割案の住民投票を行いたいと語っていたが、2015年4月の大阪都以降のためには、技術論・手続き論でも、そこがリミット。しかし、年末に決まらなかった分割案は、年明けには決めることが出来るのか。出来たとしても、住民を納得させる説明が可能か。分割することでコストがかかる。さらに、メリットを具体的に示す必要があるが、当初宣伝してきた夢物語は、色あせ始めている。
<新党合流で、消滅か>
みんなの党が「特定秘密保護法」への対応をめぐり分裂し、15名で「結いの党」(江田代表)を結成した。ここへの合流を大阪維新は模索しているようである。旧太陽の党という自民党のもっとも保守的な部分と合流した「日本維新の会」だが、自公多数の国会の中で、維新は埋没し、原子力政策では党内は実質分裂状態にある。すでに「維新の会」では、選挙を戦えないのであろう。そして江田新党への合流は、日本維新の会の分裂が前提である。選挙で勝てるから、橋下維新は求心力を維持してきた。しかし、維新のメッキは剥げ落ち、「維新」では選挙に勝てないと、新党構想というのは、もはや泥船状態であろう。
大阪都構想も不透明、新党問題も橋下抜きには決められないという維新だが、大阪市内では、まだ一定の支持を保っている。(11月読売新聞調査では、大阪市内支持率57%)
大阪都構想を葬り去るため、橋下維新という右派勢力の包囲をさらに強めなければならない。(2013-12-22佐野)
【出典】 アサート No.433 2013年12月28日