【投稿】消費税増税談合と大飯原発再稼働

【投稿】消費税増税談合と大飯原発再稼働
         民主党政権・メルトダウンへの暴走



6/17 ふくいでつながろう集会より

写真は、6/17、福井市中央公園で開かれた大飯原発再稼働許さない、「ふくいでつながろう」集会での「原発いらない 福島の女たち」の怒りの決意表明

<<完全に見放された民主>>
 6/10に投開票がおこなわれた沖縄県議会議員選挙の結果は、与党21議席に対し野党27議席という結果になり、自民・公明を中心とする沖縄県政与党、ならびに民主党政権に対する手厳しい審判となった。党派別当選者の内訳は県政与党の自民が1減の13人、公明3人、無所属5人の計21人(前回22人)。野党は社民が1増の6人、共産は5人を維持、社大は1増の3人、無所属・諸会派7人の計21人。中道は民主が1人、そうぞうが1人、国民新が1人、無所属が3人の計6人。仲井真知事が待望していた与野党逆転はならなかったのである。
 わずか900票差とはいえ、今年2/12の宜野湾市長選に自・公推薦候補が勝利し、その勢いで県議会過半数奪取を目指していた仲井真知事を支える与党は敗北を喫し、この与党と手を組んで普天間基地の辺野古移転・米軍新基地建設、そしてオスプレイ配備、高江ヘリパッド(オスプレイパッド)建設や先島への自衛隊配備などを強行できる、仲井真知事がその方向で翻意する環境を整える、そうした政府・民主党執行部、野田・前原・仙谷氏らの目論見はもろくも崩れ去ったのである。そもそも辺野古移設に関しては、選挙期間中、「保留」とした1人を除いて、立候補者全員が与野党の別なく「辺野古ノー」の選挙公約を掲げていたことからすれば、政府・民主党執行部の目論見は当初からあてが外れていたのである。
 なおそれでも、野田首相は6/4の内閣再改造で、あきれたことに防衛相に元幹部自衛官で、日米同盟至上主義者として知られ、米軍普天間飛行場の辺野古移設推進論者である森本敏氏を起用し、この期に及んでも、「辺野古が唯一の解決策」などと言い張るこの人物を沖縄の説得に向かわせるという政治的無神経さを正そうともしていない。
 さらにオスプレイの沖縄配備問題では、この森本敏防衛相がモロッコで起きた墜落事故の原因究明がなされる前の配備の可能性を示唆したことに、民主党沖縄県連は辞任を求める緊急声明を発表したが、政府・民主党は無視を決め込み、一顧だにしていない。これまた輪をかけた政治的無神経さといえよう。今や米軍事政策への追従ぶりばかりが前面に出る異常さである。
 しかし、この沖縄県議選の結果は当前予想されていたこととはいえ、とりわけ民主党にとっては、取り返しのつかないほどの手痛い打撃となった。前回県議選で民主党は那覇市選挙区で県議選史上最多の1万8331票を獲得してトップ当選を果たした候補者が、今回は1万2630票も減らして、5,701票しか獲得できず落選したのはその象徴と言えよう。しかも4年前は擁立した4人が全員トップ当選であったが、今回は最後の1議席に滑り込むのがやっとであった。完全に見放されたも同然といえよう。

<<「国家の信頼のメルトダウン」>>
 2009年9月に政権交代が実現し、民主党連立政権が誕生してから初めての沖縄県議選の結果がこれであり、マニフェストの主要な政策をことごとく投げ捨てて、今や第二自民党と化してしまった民主党への沖縄県民の怒りと反発が如実に現れている。
 この結果は当然、民主・自民談合解散、あるいは行き詰まり解散など、年内にも行われる可能性が取り沙汰されている次回衆議院選挙に反映することは必至である。沖縄と同様、迫る解散・総選挙では政権政党である民主党の看板が逆にデメリットとなり、現有議席が激減、四分の一、あるいはそれ以下になる可能性である。
 しかし政府・民主党執行部は、あえてこのような有権者から完全に見放される道を暴走し始めたともいえよう。それは大飯原発の再稼働路線と、たとえ談合をしてでも消費税増税法案成立を最優先に闇雲に突っ走る野田政権執行部の姿勢に現れている。
 野田首相は6/8の記者会見で、「原発を止めたままでは日本社会は立ち行かない」、「国民生活を守るために」再稼働が必要だと言明、大飯原発の再稼働を決断するに際しては「東京電力福島第1原発を襲ったような地震、津波でも炉心損傷に至らない、事故は防止できる」と断言したが、これは3・11フクシマ原発震災以前の、3・11から何らの教訓も学び取ろうともしない、政・官・財・学癒着の原子力ムラの認識そのままである。責任を取る気もない、また取れもしない、客観的根拠を全く上げることができない、むしろ危険極まりない、脆弱このうえない現実を前にしても、「事故は防止できる」とは、まさに「悪魔の決断」である。新潟県の泉田知事は「『電源が失われるような事態が起きても炉心損傷に至らないことが確認されている。』との発言についても、現実には、『電源が失われなくても、炉心冷却に失敗すれば、大惨事になる』ということが福島の教訓であることを無視した説明です」と厳しく指摘するとおりである。
 さらに首相の再稼働会見では、新たな安全対策が一切示されていない。それどころか、あの無責任極まる東京電力の前社長・清水氏が、新潟県中越沖地震(2007年)で起きた柏崎刈羽原発の事故を受けて福島第1原発につくられ、今回の事故対応の拠点となっている免震重要棟について「あれがなかったらと思うとゾッとする」との認識を示した、その緊急時の指揮所となる免震施設の建設や放射能除去フィルターの設置でさえ、再稼働の条件にできず、先送りで放置して電力会社の言いがまま、大飯原発は免震棟、放射能除去フィルターの設置さえなく再稼働に踏み切ろうとしているのである。
 さらに福島第1原発事故では5キロ離れた「オフサイトセンター」には空気浄化フィルターもなく全く使用することができずに、事故4日後に約60キロ離れた福島市に撤退したが、大飯原発でもやはり、約7キロしか離れていない事故、避難などの対応拠点「オフサイトセンター」は、あいもかわらず空気浄化フィルターなしである。
 そして大飯原発でより根本的な問題は、これまで隠し続けてきた1、2号機と3、4号機の間にはF-6と呼ばれる活断層の存在が明らかにされ、それについての度重なる専門家の指摘にさえ、即刻調査すれば解明できる努力さえ放棄して、断層を過小評価し続けてきたままで再稼働をのみ優先させたのである。
 こうした野田首相の原発再稼働の決断について、国会事故調の黒川清委員長は「なぜ国会事故調の報告を待ってからやらないのか。理解できない」と批判し、「国家の信頼のメルトダウンが起きているのではないか。理解できない」、「世界の先進国のあり方と全然違うところに行っているのではないか」と指摘する事態である。暫定的な安全基準、専門的知見とかけ離れた原子力業界向けの安全基準、ご都合主義で責任を回避する「政治判断」によって再稼働に走る日本政府の知性と良心と人間性に反する無責任極まりない政治的堕落の行く末をを世界は注視しているといえよう。

<<「増税だけが行われるのは主客転倒だ」>>
 政府・民主党執行部は、大飯原発の再稼働に引き続き、6/15には、税と社会保障の一体改革関連法案をめぐる民主、自民、公明3党の修正協議のかたちで進めら、まず民・自両党が自民党の対案を事実上丸のみするかたちで一致、つづいて公明党も法案賛成方針に転じて合意に達し、舞台は民主党内の「合意」形成、実際はいかに民主党の事実上の解体を推し進めるかに焦点が移行したといえよう。
 すでに民主党内では、荒井聰元国家戦略担当相と福島選出の増子輝彦参院議員が中心となって呼びかけた大飯原発の再稼働の再考を求める署名が行なわれ、わずか4日間で民主党議員の3分の1に当たる119人が賛同し、小沢氏や鳩山氏、羽田元首相、江田党最高顧問、馬淵元国交相、福山元官房副長官らも署名している。荒井氏は署名提出後、記者団に「信頼を失った経済産業省原子力安全・保安院が安全性を主張しても国民の理解は得られない」と強調し、「署名は多くの党議員が再稼働に慎重な証拠だ」と述べている。
 そして消費是増税法案については、民主党内で「党の『民主的合意形成』を実現する集い」が呼びかけられ、「自分たちは社会保障が前提で、消費増税が前提なのではない」と民主党執行部への批判が明確に打ち出されだした。6/15には、田中慶秋副代表と篠原孝元農水副大臣の、輿石東幹事長への両院議員総会の開催を求める154人分の署名提出が行われたが、これは開催要件を満たす署名数に達している。
 同時に6/14には、消費増税に反対する超党派の国会議員が東京都内の憲政記念館で集会を持ち、与野党の国会議員117人が出席し、民自公の修正協議を「密室談合」と批判し、消費増税法案の採決に反対する決議文を採択、鳩山氏は「国民に訴えて政権交代したことが棚上げにされ、増税だけが行われるのは主客転倒だ」と訴えたほか、共産党の志位委員長、社民党の福島党首、みんなの党の渡辺代表らもあいさつに立って、民自公の修正協議を痛烈に批判した。
 野田首相を先頭に、政府・民主党執行部はいよいよ政権交代の意義を完全に葬り去る、民主党解体による消費税大増税、原発の連続再稼働へ向けた大連立構想へと動き出したといえよう。しかしこの道は、大多数の有権者の意識とかけ離れた孤立化への道でしかない。厳しい反撃を覚悟すべきであろうし、その反撃が組織されなければならない重大な局面といえよう。
(生駒 敬)

写真は、6/17、福井市中央公園で開かれた大飯原発再稼働許さない、「ふくいでつながろう」集会での「原発いらない 福島の女たち」の怒りの決意表明

 【出典】 アサート No.415 2012年6月23日

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