【投稿】米軍再編と地方自治体

【投稿】米軍再編と地方自治体

<繰り返される米兵犯罪>
 米空母艦載機の移駐を巡り2月10日に行なわれた岩国市長選挙は、移駐容認派の前自民党衆議院議員が接戦の末当選したが、開票作業が進む同日午後10時半、沖縄県北谷町では米海兵隊員による女子中学生への暴行事件が起こっていた。
 岩国市長選の勝利で、こう着状態となっている沖縄の普天間基地移設など、日本国内の米軍再編計画が進展するかに思えた矢先、沖縄の事件で政府与党は安堵から一転、狼狽することとなった。福田政権は、1995年の二の舞を避けるため、米政府に対して抗議の姿勢をとり、米軍、米政府もシーファー駐日大使が沖縄に飛び、仲井真弘多知事に謝罪するなど、低姿勢に終始している。
 しかしながら、再発防止策について福田政権やアメリカは「米軍と県警の合同パトロール」「「外出制限対象軍人の拡大」「繁華街への防犯カメラの設置」という弥縫策や、「基地外住居者がいるのが問題」などと枝葉末節の論議でお茶を濁している。
その一方「日米地位協定の見直し」「在日米軍の大幅削減」といった本質的な問題については、高村外相、石波防衛相が衆議院予算委員会で日米地位協定について、「運用の改善で対処」「地位協定の内容は世界でトップレベル」などと述べるなど、早々に頬かむりを決め込んでいる。
 しかし、イラクとアフガンで泥沼の戦いに陥っている米軍の士気低下は深刻なものがあり、10日の事件後も続発する不祥事に、町村官房長官が「たるんでいるとしかいいようがない」と嘆いても、根本的な解決策は「対テロ戦争」の中止と海外駐留兵力の撤収しかないのである。
 政府・米軍の不誠実な対応に対し、沖縄では怒りが高まっている。2月14日、沖縄県議会は「在日米軍などへの抗議決議と日本政府への意見書」を全会一致で可決、同意見書は米兵の犯罪が後を絶たないとして「米軍の綱紀粛正への取り組みや軍人への教育のあり方に疑問を抱かざるを得ない」とのべ、再発防止策について万全を期すことなどを求めている。
 昨年沖縄では、沖縄戦における県民集団自決を巡る教科書検定問題で、大規模な抗議集会が開かれたが、今回の少女暴行事件についても、同様の超党派による県民抗議集会が計画されている。

<脅かされる地方自治>
 この事件は、市長選挙が終了した岩国はもとより、米軍基地を抱え、あるいは移駐先となっている全国の自治体に動揺を与えている。防衛省は岩国市に対し、空母艦載機移駐を決定した場合、凍結中の新市庁舎建設補助金とほぼ同額の約35億円の補助金を、別の法律に基づいて交付することを明らかにするなど、「アメ」をもって基地拡大反対の声を押さえ込むのに躍起となっている。
 今後、岩国に厚木から艦載機が移駐した場合、問題の夜間離着陸訓練地も硫黄島から移ることになり、すでに移転先候補として、鹿児島県のいくつかの離島が取り沙汰されている。また米軍再編にともない、日本各地での陸、海、空の日米実働演習も拡大していくことになる。
 昨年11月には3年ぶりの大規模な日米合同統合演習が、10日間にわたり北海道から九州にかけて行なわれたばかりであり、詳細な演習内容を知らされなかった自治体、住民の間では今後の動きに不安が広がっている。
 市民を無視して強引に進められる米軍再編に対して、今こそ地方自治体は抗議の声を強めなければならない。とりわけ、首長は県民、市民の安全・安心確保のため政府・与党に対して要求を突きつけていくべきである。
 こうしたなか、大阪府の橋下知事は、岩国市長選と住民投票に関し「防衛政策について地方自治体がとやかく言うべきではない」などと、あたかも「官選知事」のごとく地方自治の本旨を逸脱した仰天見解を述べている。「子どもの笑顔」を標榜する橋下知事は、今回の沖縄の事件をどう見ているのか。
 いずれにしても、基地頼りの活性化では、真の地方再生を果たすことができないのは明らかであり、地方分権確立に向けた取り組みの中で「基地問題」をしっかりと位置づけることが求められている。(大阪O)

 【出典】 アサート No.363 2008年2月23日

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