【コラム】 ひとりごと —小泉の靖国公式参拝をめぐって—

【コラム】 ひとりごと —小泉の靖国公式参拝をめぐって—

○呆れた首相である。「変人」であるのは個人の勝手であるが、政教分離の憲法原則も何のその、心の問題だから、総裁選挙の公約だからと、8月15日に靖国神社参拝を強行した。内閣総理大臣と記帳した公式参拝は、A級戦犯をも英霊として認めたことに他ならない。○昭和天皇が靖国神社のA級戦犯合祀(ごうし)に不快感を示したとされる富田朝彦・元宮内庁長官のメモが日経新聞に公表され、「天皇も戦犯合祀に不快感を示していた」とする報道もあり、靖国問題が注目を浴びる中での公式参拝でもあった。○当然、中国韓国などアジア各国からは厳しい反応が起こった。日本の「軍国主義復活」を危惧し、日本の政権の歴史認識を問うたのである。○一方、小泉の靖国参拝は、別の側面でも大きな影響を与えた。首相の公式参拝に異を唱えた加藤衆議院議員の右翼による自宅放火事件であり、秋の自民党総裁選挙の争点に「靖国問題」が浮上したことである。自民党主流は、靖国問題を総裁選で切り離したかったはずである。安倍独走が伝えられるなか、靖国問題の争点化は、安倍のイメージダウンになるからであろう。○A級戦犯とは、ドイツで言えば、ナチスドイツの幹部ということになる。ドイツで同じことが起これば暴動になるのでは、とも言われている。○戦後処理の過程で極東軍事裁判が行われ、戦争責任者として処罰された東条らA級戦犯。極東裁判を否定する事となれば、戦後の国際関係、日米関係も揺らぐことになる。アジアのみならず、アメリカ国内からも小泉の行動には、違和感が伝えられている。○何か信念があるように報道されがちな「小泉靖国参拝」だが、ちょっと違う角度から見ていると、小泉の政治センスの欠陥が明らかになる。在任中、公式・私的参拝を問わず、任期中の参拝を強行し続けた小泉だが、結果したのは、中国韓国のみならず、ロシアによる違法操業への銃撃事件に象徴的なロシア外交の凍結的状況である。ブッシュに同調するだけの日米強化路線で日米同盟は、何とか繋いできたと言われているが。○田中外務大臣を解任し、政権に危機が訪れた2002年、起死回生の一手として行われた日朝首脳会談にしても、北朝鮮専門家と言われている重村智計氏の近著「外交敗北」によれば、日米同盟を揺るがしかねない外交的失態=「外交敗北」であったという。○ブッシュは、テロ国家として北朝鮮を名指しし、核開発中止を要求していた。日朝国交正常化交渉は、日米同盟の観点からは、核開発放棄の明言がない中では、ありえず、当然アメリカの不信感もあり、頓挫せざるをえなかった。また拉致被害者全員の帰国もない中で、国民の北朝鮮への不信感の一層の高まりを招いた。○要するに、重村氏は、小泉改革路線は支持するにしても、小泉政治は外交的には失態の連続であったと述べているわけである(著書の中で妙に安倍を持ち上げているのは気になるが)。○それに対して、確かに厳しい反応があったとは言え、中国韓国の対応は、前年とは違い冷静な面も見える。次期総理の対応を注視しているわけである。したたかな外交が見える。○結論であるが、小泉は外交はさっぱりだめな政治家だということである。○靖国問題は海外からの内政干渉だという議論は全くの的外れである。アジア外交は、侵略の歴史の反省が原点なのだから。(2006-08-20佐野)

 【出典】 アサート No.345 2006年8月26日

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