【投稿】規制緩和政策の打破をめざすタクシー労働者の春闘

【投稿】規制緩和政策の打破をめざすタクシー労働者の春闘

 いまや社会問題化してきたタクシー労働者の低賃金問題が国会でもとりあげられるように、タクシーの労働者状態はきわめて深刻な状況に陥っている。問題の主因は、規制緩和による増車競争、低賃金競争の激烈化にある。2002年2月1日に施行された改正道路運送法によって、タクシーの免許制は、許可制に変わり、地域ごとに規制のあった車両台数も原則増車自由になった。また運賃は、認可制度を維持したが、上限価格制の下でのゾーン運賃で、そのゾーン内であれば自由に運賃を認める許可制度となった。ゾーンを下回る運賃についても、個別に審査し、労働組合が認め、「適正」原価を満たしていれば許可することとなり、実質的に運賃自由化となった。法改正以前7000社程度であったタクシー会社数は8760社となり、約25%も増加した。増車が自由となり、会社数も増えた結果、全国でおよそ15000台も車両台数が増えた。運賃の割引競争も激化しつつあり、法人事業者の8割が深夜の割引、大口割引を始めた。
 こうした結果、乗客数の増加の見込めない状況での割引と増車によって、車両1台当たり、一人当たりの売り上げが大幅に減少してきている。その結果、ほとんどが歩合給制にあるタクシー労働者の賃金は大幅に減少を続けている。規制緩和以前の1990年の平均年収は4011500円で、全産業労働者(男性)の平均5068600円の79.1%だったものが、2004年には3079600円となり、全産業労働者の56.7%とその比率を低下させている。年収300万円以下が34道府県、250万円以下が20道県と悲惨な状況にあり、生活保護費以下は39道府県(年収ベース)と地方に大きく拡大してきている。
 こうした過当競争と賃金・労働条件の劣悪化はタクシーサービスの低下をもたらし、タクシー労働者に経路不案内による迂回走行やメーター不正操作をおこなわせ、さらに事故も増加している。警察庁「交通統計」によれば、1990年のハイタクの事故16609件が2004年には27104件と増加し、交通事故数全体との比較でも1993年を100とすると、2004年には131と大幅に悪化してきた。公共交通としてのタクシーはすでに崩壊しつつあるといっても言いすぎではないだろう。
 こうした情勢の中での2006春闘は「格差是正」と過当競争をやめさせることが大きな課題となっている。当然全産業労働者との格差を縮小させていくことはタクシー労働者にとって長年の課題ではあるが、ここまで格差拡大をもたらしたものの主因が国の規制緩和政策にあり、直ちにこれをやめさせることが第一の課題となっている。そして、国の規制緩和政策に対して場当たり的に増車し、労働者に賃金低下をもたらしているタクシー会社の経営者の姿勢を改めさせることである。
私の所属している自交総連は規制緩和政策に反対し、また安易に乗務員を増員させないために運転手のプロ化(国家試験導入による養成)をめざし、法制化を要求している。具体的には私は多くを知らされていないため(職場討議でも一切議論されてきていない)、その是非についてここでは論じないが、その導入に数年間を要するのは想像できるために、現在の苦境を脱するための即効薬としては期待はできないだろう。むしろ、多くの地方で問題になっている賃下げから『どう脱するか』ではないだろうか。
 全自交労連の調査では、地域最賃割れが多くの地域に拡大し、北海道では全道で1割、道東では3割となっている。また、年金受給者やパートの導入も多くなり、たとえ正規雇用でも賃金実態は非正規雇用者の水準にとどまっている。基幹的労働者が最低賃金すれすれにあり、また最低賃金割れも多い。「地域最低賃金を払えばいい」という経営者が、増車・低運賃競争の温床になっているという。
この賃金低下をくいとめるためには、ハイタク産別最賃の創設が喫緊の課題であろう。適正な賃金を可能にするために賃金ベースの底上げが必要であり、公正競争確保の観点からも必要である。
 幸い、規制緩和による賃金低下の国家賠償請求訴訟で全自交労連と自交総連はともに同じ立場で運動を進めてきた。産別として組織を超えて最低賃金闘争を取り組む道も可能性が大きい。個別企業での差別的な賃金実態を打破するとともに、産業別での企業横断的な賃金水準の確保こそが企業間での「公正競争」を確保するのではないだろうか。
(東京・立花 豊)

 【出典】 アサート No.341 2006年4月22日

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