<<不信任でも自公「圧勝」>>
2/2投開票、2020年最初の全国注目の選挙であった京都市長選の結果は、
門川大作 210,640(得票率:45.1%)
福山和人 161,618(得票率:34.6%)
村山祥栄 94,859(得票率:20.3%)
であった。投票率は前回より5.03ポイント上昇、40.71%で、20年ぶりに40%を超えている。
門川氏は現職で、自民党京都府連、立憲民主党京都府連、国民民主党京都府連、公明党、社民党京都府連推薦、第二の福山氏は、共産党、れいわ新選組、新社会党推薦、緑の党京都府本部支持、第三の村山氏は、地域政党・京都党前代表で前市議、2008年にも市長選に立候補している。
この構図で特徴的なことは、言うまでもないことではあるが、立憲、国民、社民の野党3党が国政で対立している自民・公明と手を組んだことである。前回も前々回もこれまでも同様であるが、立憲、国民は民主党として手を組んだ。対する福山氏は、新たにれいわ新選組が支援に回った。「安倍政治を許さない!」として、立憲、国民、社民の野党3党は、共産党とともに野党共闘を推進する立場にありながら、なぜこの期に及んでも自公と手を組むのか、これに対して福山陣営に新しく加わったれいわ効果がいかなるものか、が注目されたと言えよう。
結果は上記の通り、門川陣営の獲得した得票は、対立したに候補の合計票を4万5837票も下回っている。現職・門川批判票の方が断然多いのである。この点だけを取れば、明らかに不信任が下されたと言えよう。
門川陣営は相当の危機感を抱いていたことは当然であろう。陣営の演説会場には、「951を忘れるな」「油断大敵」という大きな垂れ幕を用意し、弁士は、今回の選挙は12年前と同じ構図だとして、「(福山が)激しく追い上げてきている」と危機感をあおっている。12年前、門川氏に対して、共産党は中村和雄弁護士を擁立、そこに市議だった村山氏が加わり、三つ巴の闘いは今回と全く同一である。今回と決定的に違うのは、「951を忘れるな」というその票差であった。中村氏は門川氏に951票差にまで迫ったのであった。1000票余り逆転されれば敗北という危機感であった。ところが、接戦・激戦の予想に反して、2位の福山氏に対して、951票どころか約5万票近くもの「圧勝」(自民関係者)を門川氏にもたらしたのである。
第3位の村山氏は「人件費の見直し、事業の整理、交通局の民営化など財政再建を徹底的に行う」という規制緩和・市場原理主義の新自由主義路線を掲げ、門川票に食い込んだことは明らかであり、出口調査によると門川票を3割弱切り崩しているが、上回るものではなかった。
こうした中で、福山氏を支援したれいわが、昨夏の参院選で京都市で獲得した票は2万9,656票であり、今回の出口調査によれば、無党派層の投票先は福山氏38% 村山氏が30%、門川氏26%であったことからすれば、れいわ票の多くが福山氏に回ったとしても追いつかない票差である。
<<「大健闘、最善の戦い」なのか>>
ところがこの結果を受けて共産党の小池書記局長は「現職市長を相手に大健闘の結果だ。候補者擁立、政策づくりなど最善の戦いができたと確信している」とするコメントを発表している。2/3付しんぶん赤旗は、「京都市長選 福山氏が大健闘 広範な市民の共感呼ぶ」との大見出しである。
2/4付同紙は、「市民と共同 16万票超 京都市長選 福山氏が大健闘」の見出しで、「大健闘しましたが、及びませんでした。」「日本共産党以外に、国政政党で初めて、れいわ新選組が加わり共同の輪を広げました。福山氏が訴えた、市予算の1%(80億円)でできる「くらし応援すぐやるパッケージ」や、京都のまちこわしストップの公約は、広範な市民の共感を呼びました。」と報じている。
敗北したが大健闘、最善の闘いができた、共闘が前進した、共同の輪を広げました、などという言辞は、何度も聞かされ、昨年も大阪12区補選、高知県知事選の際にもまったく同じようなセリフを聞かされている。またか、というしろものである。
そもそも福山氏は、2018年の京都府知事選に立候補し、対立候補の西脇隆俊氏に対して府内で得票率44%、京都市内では46%まで迫る、それこそ「大善戦」していたのである。それがなぜ得票率34.6%にまで落ち込んだのか、そのことが問われるべきであろう。差を縮め、肉薄するどころか、逆に大差に広げてしまったことについては、一言も触れない、うやむやにする、言い訳も反省の弁すらない、そうした事実さえ明示しない、このような共産党の誤った政治姿勢こそが問われるべきであろう。
この2/4付しんぶん赤旗の記事の中で小池書記局長は、以下のように述べている。(以下、引用)
小池氏は、京都市長選最終盤の1月26日に現職市長陣営から、一部新聞に「共産党の市長は『NO』」という政策抜きのレッテル貼り、古色蒼然(そうぜん)たる反共ヘイト広告が出されたのは「断じて許されないことだ」と改めて批判。「この広告に対し、即座に広範な市民が反撃に立ち上がり怒りの声を上げた。そして相手陣営も、その後再び同じような宣伝ができなくなった。選挙を汚す時代遅れの反共攻撃はもはや通用しないということが示された」と指摘しました。さらに小池氏は、「国政では共闘している政党の府連組織が、このような広告に名を連ねたということは大変残念だ。わが党としては許容できないということを表明したい」と述べました。記者団から、問題の広告に名を連ねた政党への抗議などのアクションは取らないのかと問われたのに対し、小池氏は「記者会見の場で『許容できない』と表明することは、大きなアクションだ」「私たちは、市民と野党の共闘を前進させるという大方針のもとにいま取り組んでおり、この共闘をさらに前進、発展させるためにこういう態度表明を行った」と説明しました。
以上の引用からもわかるとおり、「共産党の市長は『NO』」という門川陣営の新聞広告に、野党共闘で共に闘うはずの野党3党が反共ヘイト広告に名を連ねていることに対して、「許容できない」こととして共産党は怒りを表明している。この怒りは当然である。こんなことをうやむやにしたまま、結果としてボス交、裏取引、なれ合いの野党共闘にさせてしまっては、本当の前進はないと言えよう。共産党の政治姿勢をも含めて、統一戦線のありようについて根本的な再検討、再検証が強く要請されていると言えよう。
(生駒 敬)