【投稿】新型コロナウイルスを巡る、泥縄の「隔離政策国家」日本

【投稿】新型コロナウイルスを巡る、泥縄の「隔離政策国家」日本
                             福井 杉本達也

1 クルーズ船に3700人も監禁する「隔離政策国家」日本
 2月3日、横浜に到着したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で日本や東アジア・東南アジアを周遊し、香港で下船してしまった香港籍の男性が新型コロナウイルスに感染したことがわかった。そこで、厚労省は同船の乗客乗員のうち、香港籍男性と同じバスツアーに参加したりした濃厚接触の疑いのある273人を検査し、結果が判明した102人中、5日に10人、6日に10人の新たな感染者が確認された。今後もさらに感染者が拡大する可能性がある。
しかし、残り3400人もの乗客・乗員を「経過観察期間」という名目で14日間も狭い閉鎖空間に監禁する理由はあるのだろうか。香港籍男性は武漢在住ではないので、2次感染、3次感染の疑いが濃厚である。とするならば、新型コロナウイルスはかなりの程度、日本を始め世界各国に広がっている可能性が大きい。奈良県のバス運転手・バスガイド・千葉県のバスガイドの例を含め武漢はおろか中国にも行ってはいない2次・3次感染である。厚生労働省は「水際対策」に力を入れているが、「水際対策」は、国内で感染が広ま っていない場合に限られる。安倍首相は、感染している人は入国を拒否するという方針を打ち出したが、このような方針は既に合理的な判断とは言えない。確かに3700人は他の人々よりは感染リスクは高いが、ウイルスを保有しているかもしれないという理由だけで2週間も監禁することは人権無視も甚だしい。高齢者も多く、既に持病の薬が切れかけていると訴える乗客も多数ある。定期的に病院に通う時期にある乗船者もあるであろう。新型ウイルス以外の症状で何か異変があった場合には誰が責任をとるのか。

2 国内で2次・3次感染者:水際作戦は無理―インフルエンザと同様の対策をすべき
 1月28日に奈良県の60代の運転手が新型コロナウイルス感染者の明らかになった段階で厚労省は「水際作戦」から季節性インフルエンザと同等の対応に切り替えるべきだったのではないか。上昌弘医療ガバナンス研究所理事長は「そもそも空港検疫などいくらやっても新型コロナウイルスの感染者の流入は防げない。最長で2週間の潜伏期があり、多くの感染者が空港検疫を素通りするからだ。このことは2009年の新型インフルエンザの流行で実証されている」(「新型肺炎」日本の対策は大間違い)と指摘している。既に中国の春節の民族大移動は1月中旬には始まっていた。日本にも武漢からの9000人を始め、大量の中国人観光客が来ていた。1月29日、政府は第1便のチャーター機を武漢に飛ばして邦人206人を帰国させたが、中国政府が武漢市を閉鎖した中での、全くの無為無策の政治的ポーズだけだったのではないか。
帰国させるにあたっては当然ながら検体検査の体制が不可欠である。上氏によれば、「新型コロナウイルスの検査は簡単だ。鼻腔やのどに綿棒を入れてぬぐい液を採取し、PCR法を用い てコロナウイルスの遺伝子の有無を調べればいい。PCR法は多くの感染症に対して、臨床応用されている。簡単な検査で、設備さえあれば数時間で結 果は出る。外部の検査会社に委託する場合でも、翌日には結果が戻ってくる。」ところが、「普通の国民は、このような検査を受けることができない。厚労省の方針で、検査は中国からの帰国者や濃厚接触者など、ごく一部に限定」している。「厚労省がやるべきは、希望者すべてが検査できるような体制を整備することだ。財源を用意し、保険診療に入れればいい。あとは放っておいても医療機関と検査会社が体制を整備してくれる。新型コロナウイルス感染は指定感染症のため、陽性になれば、医師には報告義務が課されている。厚労省はリアルタイムに感染状況を把握できる。その費用は1検体で1万円くらいだから、100万人が検査しても、100億円程度だ。」という。ところが、いまなお、悪あがきで、あくまでも「水際作戦」に固執する厚労省はこうした体制を取ろうとしていない。

3 いたずらに危険性のみを煽るマスコミ
 日経新聞、2月6日の記事によると、「肺炎や発熱などの症状がない人を含め、すでに国内外で感染」が広がってしまい、西浦博北大教授によれば「『現時点では10万人以上が感染している可能性が高い』」、「感染者の半数近くで症状がみられない間に感染が広がった」とし、現時点での感染者数からの致死率は2%、実際はもっと低く0.3~0.6%という。つまり、毒性はそれほど高くないが、収束するには時間がかかるということである。それをバス運転手やバスガイドがどこへ立ち寄ったかとか、新幹線で往復したとか、クルーズ船の乗客がどこの港でオープンツアーに参加したなどと、「感染経路」ばかりを取り上げ、いたずらに危険性を煽っている。日本と中国の観光や産業を巡る人的交流は既に「感染経路」では把握できるわけもない。武漢には日本のホンダや日産、日本製鉄、イオンなど日本の大企業が大量に進出しており、人的交流は新コロナウイルスが流行し始めた昨年12月段階においても活発であり、個別の「感染経路」を問題にしても何の足しにもならない。既に国内外に感染が広がっているとするならば、感染対策の目的は国内での流行を食い止め、死者を減らすことに変更すべきである。米国ではインフルエンザが流行し、感染者は1900万人を超え、死亡者は1万人を超えたという(日経:2020.2.6)。現時点での新型コロナウイルスによる死亡者数は千人にも満たないのであるから、よっぽど、米国のインフルエンザの方が怖い。しかし、米国との人的交流をストップするという声はでない。不可能だからである。マスコミは今一度頭を冷やして冷静に考えるべきである。


4 さらに中国の先進的対策を批判するマスコミ
 習近平政権の武漢閉鎖は驚くものであり、日本ではとてもできない相談であるが、さらに2月3日には武漢に1000床を超える「火神山医院」をわずか10日に完成させ、さらにもう1つ1500床の「雷神山医院」を建設中である。もちろん1000万人を超える武漢の人口に比べれば病院の不足は明らかではあるが、建設資材を始め、医師や看護師、医療資材を集中投入し、死亡者を1人でも減らそうとする中国の姿勢には感嘆する。また、上氏によれば「中国の研究者たちは、短期間の間に多くの論文を書き、『NEJM』や『ランセット』などの一流医学誌に発表している。」中国政府はこれまで、人から人への感染とは考えにくい、と説明していたが、中国の研究者は「この解釈を誤りと断じた」とする。「官僚の無謬性に拘り、専門家もそれに異を唱えない日本とは対照的だ。日本の医師や研究者が『水際対策は一定の効果が期待できる』など、厚労省を忖度する発言を繰り返しているのと対照的だ」という。上氏は続けて「中国の感染予防は徹底している。当局は『熱がでても病院にこないで』と繰り返しアナウンスしている。」「中国では、発熱した人はメッセージアプリ『WeChat』 をダウンロードし、当局に報告することになっている。そうすると、すぐに医師が遠隔で診断する。」「 クリニックの待合で感染が拡大することはない。2次感染予防を優先した合理的な対応だ。」と指摘する。日本の泥縄的対応と比較すれば一目瞭然である。

5 過去のハンセン病などの隔離政策を全く反省しない国=日本
 厚労省は過去のハンセン病や結核などの「隔離政策」を全く反省していない。特にハンセン病は、感染力や発病率は高くないということがわかっていながら、隔離を正当化するために、国策として『強烈な伝染病である』という宣伝を行った。ハンセン病患者は長島愛生園をはじめ瀬戸内海の島々などに隔離され、ハンセン病患者同士では子供も作ることが許されなかった。その後、1947年には特効薬が開発されたにもかかわらず戦後も強制収容をもたらした法律の「らい予防法」は1996年4月1日に廃止されるまで続き、2001年に小泉政権下で国家賠償で国の責任を認めた。しかし、その後もホテルの宿泊を拒否されるなどの差別や家族に対する差別が現在も続いている。その「強制隔離」の思想がまたぞろ新型コロナウイルスでも顔を出している。自民党の鈴木俊一総務会長は未発症者の強制隔離について「課題として真剣に議論しなけらばならない」と述べている(日経:2020.2,1)。とんでもない人権侵害である。人権を無視する国はさらに感染を拡大させる。非難すべきは中国の感染症対策ではなく日本の感染症の強制隔離政策である。

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