【投稿】伊方原発の全電源喪失と燃料棒落下の重大事故

【投稿】伊方原発の全電源喪失と燃料棒落下の重大事故
                                                                                       福井 杉本達也

1 伊方原発の全電源喪失事故
1月25日、定期点検中の伊方原子力発電所全体で全電源喪失の重大インシデントが起きた。NHKによると、1月25日午後3時40分頃停電が起き、「すぐに非常用の発電機が作動するなどしたため、停電は解消」したというが、1,2号機は3秒程度、定期点検中の3号機は10秒程度全電源を喪失してしまった。「非常用発電機が作動したのは、記録が残っている平成11年以降初めて」で「当時、3号機では外部から電気の供給を受ける2系統の送電線のうち、バックアップ 用の系統の安全装置に異常が無いか点検が行われていて、突然、電気が遮断」されのが原因という。この間、3号機燃料プールでは午後3時から5時の間に1.1度の上昇が認められた。3号機は昨年12月に定期点検入りしており、直ちに水が沸騰し、核燃料が冷却されずに溶融に至るということではないが、東北大の圓山・小宮研究室の計算よれば、60日目の崩壊熱は熱出力の0.095%もあり、「崩壊熱に相当する水量の経時変化」では、70万kw級の原発の運転停止後60日経過後でも5t/時の水量が必要とされる。1日では120tの水量にものぼり、1,2日で燃料が冷却されず燃料棒の溶融が起こる。ところが四国電力は「3号機は非常用ディーゼル発電機からの受電に成功しており、福島第一原子力発電所 事故のように、全交流電源が喪失したわけではありません。」と間の抜けたプレスリリースを行っている。
3号機には1,2号機と共用の18.7万V送電系統と50万V送電系統の2つの送電系統があるが、今回、1,2号機系統の電気が遮断されたことから今回の全電源喪失が起きたが、ではどうして50万V系統からの電気がすぐに供給されなかったのか。また、3号機専用にディーゼル発電機2基があるが、今回は運よく発電機が起動できたから10秒程度の停電で済んがものの万一2基とも起動に失敗した場合は炉心の冷却手段を失う。2019年9月18日には北海道電力の泊原発1号機で、異物混入により非常用発電機の起動失敗などが報告されている。

2 制御棒を誤って引き抜く
伊方原発3号機で、1月12 日、核分裂反応を抑える「制御棒」1体を誤って引き抜く重大インシデントが起きた。「制御棒」は、全部で48体あるが、そのうちの1本が9割ほど引き上げられ、約7時間にもわたり引き抜かれた状態が続いたという。当時、定期点検のため原子炉から燃料を取り出すため原子炉のふたを引き上げる作業が行われていたが、本来ふたと制御棒は切り離された状態で行われるものが、1体だけつながったままだったという。四国電力の1月13日のプレスリリースでは、「燃料取り出し作業に 備えて、あらかじめ原子炉容器内の1次冷却材ほう素濃度を高めていることから、制御棒の有無にかかわらず、未臨界は維持されております。」と、これまた無責任極まりない広報を行っている。
「原子炉の出力制御のためには原子炉内の中性子数を調整して反応度を制御することが必要である。停止状態の原子炉には中性子を吸収(吸収断面積の高い)する制御材でできている制御棒が差し込まれており、核分裂反応に伴う中性子を吸収して臨界状態にならない様にしている。原子炉の起動時、制御棒を徐々に引き抜く事で炉内の中性子数を増加させ、臨界から定格出力になるまで反応を上げてゆく。」(Wikipedia)もので、原子炉のブレーキ役を果たす根幹中の根幹器具である。万一、全部の制御棒が引き抜けた場合には一発臨界である。今回のような定期点検中で原子炉容器のふたが開けられた状態で、意図せずして核分裂連鎖反応が起こってしまった場合、発生場所から数10メートル以内にいる作業員は重傷または死に至る高い危険にさらされ、また発生場所の付近には中性子線をはじめ様々な放射性物質が放出される危険が生じる。中性子線は1m以上の分厚いコンクリートか水の遮蔽物がなければ、厚い鉄板なども軽く透過してしまう。日本でも既に東海村の悲惨な臨界事故を経験済みである。中性子を制御するため濃いめのホウ素水が入れられているとはいえ、そのような問題ではないだろうといわなければならない。

3 MOX燃料棒が入っていた
四国電力もマスコミもほとんど報道しないが、伊方原発3号ににはプルサーマル発電で使い終わったプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料が16体も入っていたということである。16体もの本格的なプルサーマル発電を行ったのは伊方原発3号機が初めてである。誤って制御棒が引き抜かれた1月12日の翌日の13日にMOX燃料棒が取り出されている。プルサーマル発電では、①制御棒やホウ酸の効きが低下する。(つまり、効きが悪くなり、核分裂を制御するブレーキの役割が低下する)②燃え方にムラが生じて燃料棒が破損しや すくなる。③出力変化がより急激になる。④放射性ガスの放出率が高くなる。⑤アルファ線放出が多く、燃料棒の内圧が高くなり、より破損しやすくなる。⑥MOX 燃料の融点が低下し,また燃料中心温度が上昇する傾向になる等々、ようするに、安全余裕の切り詰められ、通常の燃料棒に比べ事故の確率は数倍高くなるといわれている。中国電力のニュースリリースのようなホウ素水の濃度が高いからといって臨界状況にならないという保証はどこにもない。
日本は2018年現在で48.6tものプルトニウムを抱えている。軍事用も含めた全世界のプルトニウム約500トンの10%近くを占め、核兵器保有国以外では圧倒的に多い。日本は核兵器を保有するのではないかと世界各国から疑念を向けられている。本来は高速増殖炉もんじゅでプルトニウムを燃料として消費する計画であったが、その肝心のもんじゅの廃炉が決まったったために、余剰プルトニウムのはけ口が無くなってしまった。そこで、普通の原子炉でプルトニウムを燃やそうという計画がプルサーマルである。熱出力は非常に高くなる。しかし、出力が高くなるということはそれだけ制御が困難となるということである。通常の原子炉はあくまで濃縮ウラン燃料用に設計されている。MOX燃料が普通の原子炉でどのような挙動をするかはよくわかっていない。よくわかっていない危険な運転をどんどん進めようとしているのが、現在の日本である。

4 広島高裁の運転差し止め決定にもかかわらず、異議申し立てする四国電力
こうした相次ぐ重大インシデントを受けて、四国電力の長井啓介社長は1月27日に中村愛媛県知事に対し、一旦、1月17日の広島高裁の伊方3号機運転差し止め仮処分決定に対する不服申し立てを『今はできる状況ではない』と当面見送る方針」を示していた(福井:2020,1,28)。ところが、3日後の1月30日には、長井社長は「トラブルが続く伊方原発に関し、トラブルの 原因究明を待たずに、 3号機 の運転禁止を命じた広島高裁の仮処分決定に異議を申し立てると説明した。」前言をあっさりと翻してしまったのである。「申し立ての具体的な時期は明示しなかった」(福井:2020,1,31)ものの、原因究明を待たず異議申請をするというのである。愛媛県知事もコケにされたものである。ブレーキの利かないことが分かっている自動車を強引に運転するということに等しい。危険極まりない行為である。こうした判断が四国電力1社の判断で出来るとは思われない。原発を何とでも再稼働したい経産省からの極めて強い圧力がかかったとみるべきである。このままでは、第二の3.11は避けられない。そうなれば日本は「終わり」である。何としても運転を差し止めなければならい。(2月7日一部修正)

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