【コラム】ひとりごと–日本共産党の低迷と『査問』–

【コラム】ひとりごと–日本共産党の低迷と『査問』–

○先の総選挙で影を薄くしたのは日本共産党だけであった。議席数の減少、得票数、得票率共に前回の選挙までの増大傾向が頭打ちし、停滞という状況に陥った。この総括をめぐって、いろいろな議論が出ている。○7月の6中総で不破執行部は、依然として「方針は正しかったが、やり方が不十分だった」という、昔からの「旧左翼的」総括を行い、謀略ビラや反共宣伝の包囲網など、敵の攻撃を原因に挙げている。○一昨年の参議院選挙以降、共産党は急速に「政権」への参加というテーマに傾き、安保・自衛隊棚上げ論や国会共闘など、従来の独自路線からのなしくずし的路線転換を行ってきた。不破・志位体制のもとでの、無党派層との連携、相次ぐ選挙での議員拡大という背景のもとでの、やや中道寄りのソフト路線、「常識的な共産党」というようなイメージ転換を行って、旧社会党支持層などにも支持を拡大してきたのは事実であった。○残念ながら、中央や国会でのソフト路線と比べると、地域や従来からの全労連の組合幹部の動きには相変わらずの唯我独尊でああり、党内では十分に戦略議論された傾向ではないことが予想され、党内での未消化は明らかであろう。○また、地方議員についても、これまでの拡大傾向が頭打ちし、現状維持ないし減少傾向も現れている。今年11月には党大会が予定されているらしいが、総選挙の総括から、党の戦略議論までおよぶのかどうか、注目する必要があると思われる。○私たちが見ることができる、党内議論としては、インターネット上の「さざなみ通信」がある。7月上旬に掲載された「総選挙の表面的総括に終始した6中総」と題する文章から、特徴的な批判点を挙げてみる。○「98年参議院選挙と比べても150万票が減少した原因は、それらの票が、社民党と民主党に流れたこと。その原因は、共産党の右傾化路線だ」と。消費税減税要求の凍結、自衛隊活用論、「野党暫定連合政権」論など、が無党派層の中でも革新的無党派層の離反を招いたのだ、という批判である。また、実際の党内議論によれば、総選挙終盤になっても、「比例票は減ることがないだろう」という楽観論が支配的で、党組織の動きは、参議院選挙よりも鈍かったという。○また、例の全国的に配布された「謀略ビラ」について、例えば、「査問」問題について、赤旗号外は、査問という言葉が党内に存在しない、規約に基づく調査はある・・などの無責任な対応であったことなどで何ら有効な反論にならなかった点をも挙げている。○党内からは、表むいて不破・志位体制批判は出てきていないようだが、私としては、現実的な、民主的な、常識的な党としての流れは、結構なことだと思う。こうした流れさえ、党執行部の独走という形でしか進められないことの方がこの党の不幸と言わざるをえないのではないか。その点は、「さざなみ通信」の皆さんとは、意見が違うところだろうか。○6中総文書でも、党の組織の弱体化、高齢化が問題とされ、次期党大会にむけた課題として、党員拡大とりわけ青年層での拡大が力説されている。そういう点で、最近出版された油井喜夫氏の『虚構—日本共産党の闇の事件』が興味深い。油井氏は、当時民青静岡県委員長だった自らの「査問」体験を『汚名』という書物で明らかにした。川上徹氏の『査問』に続く、新日和見主義問題の体験本だった。新日和見主義「路線」に対して、共産党は具体的な氏名や批判対象の文書名も具体的に明らかにできないまま、膨大な批判文書が発表されたという特殊性が存在していることに対して、今回の『虚構』は、批判されたと思われる当時の文献、例えば、当時の民青機関誌「青年運動」などを探索し、検証しようという試みの本となっている。正直、退屈な本だと思うのだが、その中で、70年代に20万人の民青組織だったのが、現在は2万人という現状に触れた部分のみ紹介しようと思う。○後に新日和見主義と批判される「査問」事件の発端は、民青対象年齢を28歳から25歳に、幹部の年齢も30歳までに引き下げる、という党中央の提案に当時の民青執行部内の党員会議において議論が続出し、決定できなかったという72年5月7日であった。翌日から「査問」が始まっている。学生運動の経験から言っても、学生活動家を引き抜いて「おとな組織」で早く使おう、という傾向はよくあった話で、「それでは学生組織がもたない」みたいな話は私も理解できる。実際に油井氏によると、新日和見主義事件以降、民青の対象年齢は引き下げられ、党組織に集中が起こり、民青組織の停滞状況がその後続いたという。党中央も、その後、「引き抜き」が強まることで、青年組織が停滞している状態を危惧し、大衆組織の運動を阻害するような引き抜きを行わないよう、文書を出すことになったらしいが、「査問」対象となった「年齢引き下げ」反対の主張は、みごとに当たってしまったということだろう。○現在も、選挙の時など、共産党への青年対策に民青が街頭宣伝をしているのをよく見かけるが、民青の独自性などは本当に感じられない。党に従属した青年組織では、魅力もないと思うのだが。○長々と書いてきたが、要するに今、共産党が大きな分岐点にある、ということだ。大衆組織においては、89年の連合に対抗した全労連の結成などがあるが、残念ながら、全労連系は低迷している。(連合も低迷しているが)「さざなみ通信」編集部の傾向は、すこし「旧左翼」に近く、新しい議論は期待できないのだが、全体的に共産党系の運動は低迷している。今回の総選挙の敗北を機会に、党内や大衆運動の中から、共産党の社会民主主義的の再生ための「常識的」な議論が出てくることを期待しているのだが。(K・T)

【出典】 アサート No.273 2000年8月26日

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