【投稿】「民政連」から新党「民主党」へ
3月17日の新聞報道によると、民主党はじめ4つの政党代表が「統一準備会」の初会合を開き、新民主党の党首には菅直人民主党代表の就任が決まり、4つの委員会(理念・基本政策、組織・規約・財政、選挙対策、女性参画)で新党に向けた原案をまとめる方向という。予想以上に早い展開だ。昨年末、ようやく協議離婚が整った新進党が解党し、年明けには6つの政党が出現した。その6つの政党の内、小沢自由党と、公明系の改革・平和を除く友愛・国民の声、太陽党、フロムファイブ、そして民改連と民主党が、院内統一会派「民政連」を立ちあげたのが、1月7日のことであった。以後2ヶ月あまり、参議院選挙に向けて、「統一会派か新党か」で民友連内部で議論されてきたが、3月7日の細川提案から、新党への動きが本格化してきた。
<民主党の強気と民政・友愛の譲歩>
野党が分立していては自民党のひとり勝ちになる、共産党への支持率アップも心配という中で、今回新党を準備している4党には、それぞれに統一会派または新党を急ぐ理由がある。民政党は、旧太陽党・羽田グループであり、新進党が無くなれば、党基盤はないに等しい。同様に友愛も、民社協会・友愛会は存続しているが、小選挙区ともなれば、選挙にもならない状況にある。今年3月の政党支持率では、両党とも1%にも満たない状況である。もちろん、支持率の低迷は民主党とて同じだ。連合推薦型の民改連は別として、友愛・民政は国会議員後援会はあっても、党組織は皆無に近い。民主党は46都道府県に組織が出来ており、支持勢力としての労組組織もあるが、何よりも「菅直人」という首相候補を持っている。政権構想を沖縄での党大会で確認したが、民主党だけで自民党に対抗するにはまだ非力である。何らかの「反自民統一」の動きで、政権交代への決意と体制を作る必要があった。
2月当初は、民主党も独自路線のもと、統一会派論が優勢で、新党には慎重な傾向にあった。その中で民主党の基本戦略は、イタリアの政治連合「オリーブの木」路線を持って、議論に参加してきたが、新党名は「民主党」でという細川提案(3月7日)を断りきれなかった、また民政・友愛側もそこまで譲歩しないと、新党で参議院選挙は闘えない、というところまで認識が一致したということだろう。
統一・新党結成の仕組みはこうだ。理念・政策の一致が前提だが、民主党以外の3党は一旦解党し、民主党に合流する。民主党は合流組を受け入れるため、5月上旬にまでに臨時大会で新党の方向を確認し、新民主党の結党を行う。友愛側は、理念・政策・規約などは新しく作る、ということを「対等合併」と理解し、民主側は党名に民主党を使い、3党は解散するが、民主党は解散せず、組織を継続させることで、「吸収合併」だ、という理解が民主党側にはある。
<連合、股裂き解消の好機>
新党を推進させる、応援団の存在も加速化の要因だ。これまで、新進党(友愛グループ)支持と社民党、そして民主党支持と構成産別の中に矛盾を抱えた連合は、昨年来、民主・友愛・社民含めて「連合新党」または統一名簿方式による「反自民・非共産」結集という路線で、鷲尾新体制の中で、取組んできていたが、少なくとも昨年末までは、方向性は確認できても具体化できない手詰まり状況にあった。各党との協議も精力的に協議が進められたが、社民党には与党離脱も含めて要請したが、すでに比例区・選挙区とも社民党単独選挙との意向が土井委員長から表明されていた。
民友連の統一論議の進展を受けた、3月10日の連合三役会議は、「国民は小さな政党は批判し、大きな出現を望んでいる。連合は民友連を中軸とする統一対応( 新党)の実現を期待し、出来あがった形(新党)と支持・協力関係を持ち、全面的に支援する」ことを確認し、新党統一準備会に対して、「理念・政策について、連合方針・基本政策が活かされるよう対応する」との方針を確認している。具体的には比例区は新民主党、選挙区は可能な限り統一候補擁立、公明・自由・社民とは選挙区事情を総合的に勘案し調整、という方向のようだ。
しかし、現時点では、4党の統一準備会の急激な動きに、労組側は戸惑いぎみだ。旧総評系の民主リベラル労組会議は、民主党基軸を基本としつつ、民主・社民両党軸にした民主リベラル結集という方向で組織内議論が、産別間の違いはありつつも進んでいたわけで、社民派は独自路線、民主派は新党という状況で、新民主党で統一対応という状況には、まだ時間がかかる、というのが実状だ。
<提案を受け入れた民主党>
今後、理念・政策などで集中議論がはじまるが、これまでの経過は「民主党主導」という性格が色濃い。3月7日の細川提案「政権奪還に向けて」をベースに、3月12日に民友連政権戦略会議「政権奪還に向けて」が作成されたが、微妙に修正が行われている。
「われわれの基本的な理念と政策」では「我々は民主主義的な諸価値を尊重する。我々はまた、市場万能主義とも福祉国家至上主義とも異なる立場に立つ。このような立場は、今や世界の潮流となりつつある。こうした『民主中道』の立場に立って、われわれは自由と効率が発揮される市場の機能を活用しつつ、共生の精神や公正さ、機会の平等などを確保する政府の役割を重視する・・・・」と。
3月12日の民主党都道府県代表者会議は、この文書で議論された。拙速な新党議論との発言もあったようだが「すでにルビコン河を渡った」という認識で、まとまったようだ。鳩山幹事長からは「細川試案はまだ不十分なところもあるが、市民が主役という民主党路線を『民主党原理主義』を奮い立たせてかんばる」、「4党による統一は『オリーブの木』を否定していない。公明や市民運動とともに、大きなオリーブの木をめざす」(菅直人代表)などの本部答弁があり、基本的に了承されている。また、地方組織問題は、参議院選挙後に持ち越し、時間をかけていく方向という。
<反自民だけの数合わせとの批判>
こうした経過で、新党議論がスタートしたが、3月11日に「民友連新党結成へ」との新聞報道があった時点でも、新聞報道は冷たかった。「参議院選挙へ急ごしらえ」「反自民の数合わせ」云々。加えて、大蔵汚職に続く日銀創立以来の収賄容疑逮捕と重なり、全体としマスコミの注目度も今少しという状況。
3月中の「理念・政策」議論ということで、さて、どんなものが出てくるか、その時点で議論したいと私は考えている。ただ、「反自民だけの数合わせ」という新聞論調は、少し共産党的な批判だと思う。「政権交代可能な政治」を実現するということは控えめに見ても、評価しないわけにはいかない。出来るだけ民主党色の強い理念・政策を十分議論して、対抗軸を明確にしていくことが求められている。(佐野秀夫 )
【出典】 アサート No.244 1998年3月20日