【投稿】新しい博物館-琵琶湖博物館を訪ねて

【投稿】新しい博物館-琵琶湖博物館を訪ねて

先日、琵琶湖博物館を訪ねる機会があった。10月20日に開館したこの博物館は滋賀県で初めての県立博物館であり、ユーニークな博物館として新聞等でもよく取り上げている。私自身見学して、それなりの満足感を得たので少し紹介してみたい。

*「湖と人間」がテーマ

この博物館は滋賀県が相当の力を入れて建設したもので、10年前から職員を募集、調査研究を先行してから開設にこぎつけた。自治体が経営する博物館では、入れ物を造ってから内容を決め、職員を募集するのが普通だということなので、全国の博物館の中でも開設の段階からユニークだ。建物もなかなか立派で、すでに予定の倍の21万人が見学に訪れているとのことだ。
博物館のテーマは「湖と人間」。自然と人間とのかかわりを考える場であり、琵琶湖を擁した滋賀県全体を大きな博物館と位置付けて、この建物はその博物館への入り口としている。展示は見学者に何かを教えようとしているんではなくて、すべてフィールドへの誘いなのだと職員の方が説明してくれた。

*見応えのある展示

いよいよ展示室に入る。A展示室のテーマは「琵琶湖のおいたち」。地殻変動の模型、巨大な古代象の骨格、実物大のワニまで泳いでいる約380万年前の古琵琶湖のジオラマ、豊富な化石とかなりの迫力で見る者を飽きさせない。おもしろかったのは「研究者の気分にひたれる展示室」というのがあって、化石の発掘や魚の解剖の実際の場面に立ち会っているようである。
B展示室のテーマは「人と琵琶湖の歴史」。人々が琵琶湖の周辺に住み着いてから戦前までの歴史を、遺構や遺物、道具や古文書・絵図・伝承等といった形で目にすることができる。それぞれ原寸大で復元した瀬田の唐橋の橋脚基礎部や百石積の丸子船は迫力がある。歴史の好きな人にはこたえられない展示室だろう。
C展示室のテーマは「湖の環境と人々のくらし」。まずアプローチに床一面のタイルに焼き付けられた、琵琶湖を中心とした1万分の1縮尺の精密な航空写真。家屋一つ一つの形まで確認できるので、老若男女床に顔をすりつけて自分の家や知っている建物を探している。中に入ると実際に生活が営まれていた湖東の農家を昭和30年代の姿で丸ごと移築・再建してある。食卓の上の食事から肥えだめの中の肥えまで実に細部にわたって再現してあり、一見の価値はある。これら人の生活様式も含め、滋賀県に住む生きもの調査や石鹸運動の歴史等を通じて「よい環境とは何かを」を考える展示になっており、この展示室がこの博物館のメインかなと思った。
下に降りるとそこは水族館になっており琵琶湖に住む様々な生きものや希少淡水魚、世界の淡水湖に住む珍しい魚の姿を見ることができる。派手さはないが魚に触れるコーナーもあって生きものを身近に感じることのできる展示である。
子どもは1階のディスカバールームできまり。ザリガニになって魚やバッタを捕まえる遊具や人間の骸骨を組み立てたり、音で木の種類を当てるゲーム等ユニークな遊び道具があって、インストラクターのお姉さんが親切に指導をしてくれる。

*活きのよいごった煮風博物館

2時間くらいかけて見学したがとても全部は見切られない。この博物館の特長はほとんどの展示物が手で触れることができ体験型であること。また、それぞれの展示に学芸員が腕によりをかけてお互いに競争しあっているという感じがおもしろい。
悪く言えば、ばらばらでごった煮風。しかし、だからこそ飽きないで楽しめるという所がある。新しいだけにスタッフの意気込みが感じられる博物館である。
隣には国連の国際環境技術センターや公園等もあり、子連れで十分1日楽しめる場所である。冬休みなど子どもと一緒に訪ねてはいかがだろか。

交通機関:JR草津駅下車、バスで15分ほど。
車では名神栗東I.Cから国道1号線-栗東志那中線-湖岸道路を経て烏丸半島へ。
休館日:毎週月曜日・休日の翌日、年末年始は12月28日から1月4日まで
入場料:大人500円 高・大生400円 小・中生250円
℡:0775-68-4811

【出典】 アサート No.229 1996年12月14日

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