【投稿】政治改革、またもや消え去るのか?

【投稿】政治改革、またもや消え去るのか?

<自民党崩壊のはじまり>
6月12日現在、政治改革関連法案は今国会での成立はほぼ絶望的な状況となっている。「またか」というより今回こそは政治が国民から見離されるのではという危機感を覚える。もともと政治改革の問題が選挙制度改革に流し込まれ、腐敗構造、汚職構造の改革は避けられようとしていた。それでも日本新党など新勢力の台頭もあり、宮沢首相の再三の「決意表明」にみられるように、選挙制度改革だけでも至上課題となっていた。野党もこれに乗っていったが、「並立」「連用」「併用」と言葉だけ取り出しても到底理解不可能な制度案が乱立することとなった。
()内は(小選挙区定数/比例区定数の比率)
①単純小選挙区制(500/0)自民党案
②小選挙区比例代表並立制(300/200)海部内閣案
①と②の妥協案 (自民一部)
③小選挙区比例代表連用制(300/200)民間臨調案
①と⑤の仲介案  (②の変型)
④小選挙区比例代表連用制修正版(275/225)
③と⑤の妥協案(野党・③の修正)
⑤小選挙区併用型比例代表制(200/300)社公案
⑥比例代表制(都道府県単位)民社党
選挙において、「代表」を選出する目的を「政府形成」におくか、「民意の正確な反映」におくかにより、前者が小選挙区制、後者が比例代表制が優れていると言われる。実際には両者が組み合わされることになる。
概ね①から⑥の案が出されているが、①が比例度がゼロで順に比例度が高くなっていく。自民党が①の単純小選挙区制、社会・公明が⑤の小選挙区併用型比例代表制の法案をそれぞれ提出した。①は自民党に庄倒的有利、⑤は野党に有利であるから当然①と⑤の間で安協案を模索するしかなかった。ここまでは自民党の思惑とおりだったはずだ。海部内閣の時に廃案になった②の「並立」案すら妥協案に含んでいたからだ。その後、民間臨調から③の「連用」案が出され、「連用」を軸に安協案が展開された。「連用」で各党の議席は現状維持、「並立」との間の妥協案なら自民党有利だから②と③の間くらいの線で野党に安協を迫れば野党も引かれざるを得なかったはずだ。ここで宮沢首相に誤算があった。自民党の議員は各選挙区の後援会を基盤にした「後援会」政党であるということだ。小選挙区300の「並立」案ですら、前職、新人などを入れるとはみ出る者が出てくる。自民党の議員は党などを信用していないから比例区で拾われると説明されても納得しないのである。それゆえ、選挙制度改革が「本当に」あり得ると感じたところで、海部内閣の出した「並立」実にも妥協できないとする「慎重派」が帽をきかしてきたのである。「改革派」と「慎重派」の亀裂は、かつてなく深まっている。そして妥協を拒否した自民党の責任は重い。あとは世論の後押しと自民党崩壊後の政界再編の受け皿の問題である。

<世論は冷めてる?>
選挙制度改革に関して世論は冷めている。おそらく、選挙制度が変わったから政治腐敗がなくなるとは誰も思っていないからだろう。また、どの制度を支持するかという世論調査なども見た覚えがない。「併用」「連用」などあまりにもわかりにくかったからだ。また、選挙制度の議論も選挙結果の数字に注意が向けられ、結局既成政党の議席の維持に目が向けられたことも嫌気がさした一因だろう。最も多いのは「支持政党なし」であり、既成政党はことごとく見離されかけているのである。既成政党の議席の維持に人々の関心が向くはずはなかった。
また、「民意を反映する」と言われる比例代表をベースにした制度にしてもどの程度の支持をうけていたのかは疑問である。比例代表になれば候補者選定は政党主導になるが、政党自体が国民から遊離している実感が強い。小選挙区制にしても政党主導になることでは同じだが、候補者選定にかかる予備選挙を行うなど、政党が民意を反映するシステムをつくことが先決であるように思う。
全くの中途半端になってしまったが、政治改革に関する本(漫画)をお薦めしたい。ヨシイエ童話「世直し源さん」(講談社ヤンマガKCスペシャル1~4巻)である。ステテコ姿で国会に登庁する源さんが首相となり、「国会議員性根たたき直し法」を与野党、官僚、財界の猛烈な破壊工作にも負けず、国会議員らを目覚めさせ見事成立させる物語である。「国会議員性根たたき直し法」とは、一切の政治献金の禁止、議員は選挙区に足を踏み入れたり選挙区の有権者と接触してはならない、などを内容とする4年間の時限立法である。政治腐敗の原因を有権者や企業が政治家にタカる衆愚政治にあるとし、そんな民主主義であれば4年間停止し、その間に利益誘導から解放された国会議員により政治を改革しようというものである。筆者の政治に対する深い観察をもとに描かれており、非常におもしろく、感動的でさえある。(大阪AC 93/6/12)

【出典】 青年の旗 No.188 1993年6月15日

カテゴリー: 政治 パーマリンク