『詩』 馬鹿な帝国 

『詩』 馬鹿な帝国 

                大木 透

おきまりの
チャイコフスキーのたれ流しと
最後通牒の応酬は止んだ
ピストルの安全装置も外せない
ピエロどもは
予定の時刻に
舞台を去った
鋭敏な熟考の時だ
だが
ニコライ三世は
興奮したままだ
変装したストルイピンどもが
騒ぎ立てている
スターリニストがスターリニストを
追いつめる
大ロシアの旗がうち振られる

私は憎む
クリミヤから生還した
善良なファミリーに
ひとかけらの同情も示さない傲慢さを
私は恐れる
さい疑心を抱かなかったことを
懲罰しようとする
冷徹さを

ニコライの専制に
反対する者よ 出でよ
メシアのごとく
ヤコブレフよ
君は民主主義者なのか
シュワルナゼよ
君はいつから懐疑派に
くらがえしたのだ

もう
ミハイルも知れ
民主的民族国家など
夢また夢であることを
解任も支持も
要求するな
誰に向かっても
(1991.8.24)

【出典】 青年の旗 No.168 1991年10月15日

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