青年の旗 1989年6月1日 第145・146号
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【主張】 中国鄧小平・李政権の大弾圧糾弾!
学生・労働者の民主化闘争断固支持!
六月四日、中国鄧・李政権は、学生・市民から巻き起こった空前の民主化闘争に対し、武力弾圧を強行した。それは、中国社会主義国家の民主改革と自由を求める人民に対して戦車で引き倒し、銃口を向け、数千人・数万人もの学生・市民を殺傷するという「人民の軍隊」をかなぐり捨てた蛮行と惨忍なものであった。
我々は、こうした鄧・李政権の行為に対して強い憤りを感じるとともに、いかに「社会主義・中国共産党の正統性」なるものを主張しても武力でもって人民の願いを圧殺したことには、断じて容認することはできない。
<民主化闘争の背景と教訓>
学生を初めとした中国民主化闘争が、これ程までに盛り上がりを見せた背景には、鄧小平自身が行ってきた経済開放政策・現代化の中で、日本を筆頭とした資本主義諸国からの資本導入・合弁企業の設立等を基礎に工業化、生産向上が図られてきたが、それにも関わらず人民の生活はインフレ・失業の蔓延、社会規範の乱れなど厳しい情況にあり、その一方、共産党幹部を中心とする特権階級の汚職・腐敗等が民衆の不満として永年の問にうっ積し、更には、こうした不満を吸収・反映され得ない党・国家の権力集中構造が、よりこれを増幅させたと言えよう。
それだけに学生達の要求であった「汚職追放!失業反対!報道の自由!専制支配の打倒!」はしごく当然であり、中国社会主義国家における人民の権力参加ー下から涌き上がったベレストロイカであった。またそのことは、中国においても今、社会主義が直面している問題、すなわちソ連ゴルバチョフ議長が提起する党と「国家」との分離、社会主義における民主主義改革、資本主義諸国との経済交流を基礎とした平和共存など、まさに先進的・進歩的な内容のもった問題提起であった。
それだけに中国政権の採るべき道は、学生達の求める党との対話に対し、積極的に応え、教条的な「党の指導性」にこだわることなく、権力参加を認め、経済改革に整合した政治改革を行うことであった。
しかし事態は全く逆であった。鄧小平・李鵬らの保守派の思想は、「プロレタリア独裁による共産党の権力支配」の名のもとに意見を異にする者を全て「反革命」と規定し、自からの政治支配体制のためには手段をも選ばぬマキャベリズムとしか言いようのないものである。同時にこうした党保守派と民衆との意識のギャップを見た場合、日本においても「人民に対する共産党の役割」「何が故に前衛か」「党と人民の関係」について、改めて「反面教師」として問い直されていると言えよう。
いずれにしても今回の武力弾圧は、中国の真の社会主義建設を大きく後退させただけではなく、国際的にも社会主義のイメージ・威信を深く傷つけたものとなろう。
<民主化の火は消えたか>
現在の中国国家権力の内部は、趙柴陽総書記の失脚とともに、李鵬、楊尚昆、喬石といった保守派が実権を掌握し、改革派の一掃と民主化闘争を担った活動家の弾圧を行っており、それは一般市民をも密告させ、検束する恐怖政治の様相を呈している。
しかし、こうした強圧的な対応にも大きな矛盾をはらんでいる。
その第一にこのような政治政策と経済政策との矛盾である。鄧小平は、「開放政策は変わりはない。」と唱えているが、強圧的な政治体制の下で経済の開放政策を推し進めても、工業化等の生産力・経済の発展の過程で、必ずそれに適合した政治体制へと、その土台を揺り動かすことになるし、今日の経済の国際化、情報の国際化の中で政治の部分のみ閉鎖した体制を強いることは不可能である。
第二は国際社会からの孤立化である。
その一つにアメリカを初めとする資本主義諸国はもとより、社会主義諸国においてもソ連ゴルバチョフ議長やハンガリー共産党が批判する等、明らかに国際的な批判が集中している。更には前述の「開放政策の継続」とは逆に、合継ぐ資本主義諸国の対中経済政策の見直しである。アメリカ、フランス、イギリス等の対中投資・融資の凍結、日本においても対中国輸出企業が減産を検討し、また日中投資促進機構の設立の延期など、中国にとって厳しい情況に追い詰められている。
そして第三に何よりも重要なことは、中国民衆の強い反発である。武力で弾圧した民主化闘争も心の奥底まで消し去ることはできない。数多くの民主化闘争の指導者が虐殺され検束された直後の今は鎮圧されていても、やがては立て直され、武力弾圧以前よりも増して再び全人民的な闘争として高揚してこよう。
今、確かに中国は冬の時代である。しかしあの天安門に響きわたった学生・労働者のインターナショナルの歌声は今も聞こえている。地下に潜った学生リーダーの柴玲女史はこう訴えている。「勝利の日は必ず来る。夜明けは近い。中国人民万歳!」
我々も中国民主化闘争の勝利を確信し固く連帯するものである。