【投稿】バブルがバブルを呼ぶ金融資本主義--経済危機論(41)

<<特別買収目的会社(SPAC)の熱狂>>
超低金利と超金融緩和によって生み出された”行き場のない投機的な資産の急増”が株価を押し上げているが、それに飽き足らず、より投機的でよりリスクの高い新たな金融バブルの商品を生み出しており、その一つがSPACである。「特別買収会社」(Special Purpose Acquisition Company)の略である「SPAC」は、未公開会社の買収を目的として設立される法人であり、上場した時点では、自らは事業を行なっていないペーパーカンパニーそのものである。買収だけを目的に上場し、事業を行わないことから、「空箱」企業、「ブランク・チェック・カンパニー」(Blank Check Company 白地小切手会社)とも言われる。今や300社を超えており、SPACによる合併・買収(M&A)が急増、米M&A市場の3割に達している。上場後に、株式市場から資金調達を行い、2年以内に、調達した資金を使って民間企業を買収する必要があるが、未公開会社の場合、買収されれば、従来の上場のプロセスを行わずに上場することができるのが売りでもある。
大手金融資本の中には、スタートアップ企業を食い物にする手段として、SPACを採用しているとも言われている。出発時点からしてペーパーカンパニーであることから、資産も製品も販売も実態不明のままで、非実体を売買する究極の投機・マネーゲームの手段だとも言えよう。リスクにかける投資家にとっては、「大化け銘柄」でもある。
SPACは以前から存在してはいたが、未公開企業への不信とリスクから敬遠されていたのだが、昨年から急に注目を浴びだし、2020年で820億ドルを調達、それまでの調達額を大幅に上回る事態となった。
2020年6月には、トラック事業の「ニコラ・モーター」(Nikola)がSPACに買収され、ナスダックに上場、一時期は93ドルに株価が上昇、し

かし9月には、「誇大広告」が疑われ、16ドルにまで株価が急落している。この2/9にニコラ株は5%以上下落したが、競合する水素燃料電池電気自動車メーカー(Hyzon Motors)がSPACと合併して公開するという発表に起因している(ニコラ株はなぜ下落したのか Nasdaq FEB 9, 2021)。SPAC同士でつぶしあう構図でもある。
それでもSPACは2021年に入って、1月だけで前年比で実に20倍の242億6000万ドルに急増している。この趨勢、熱狂が続けば、SPACは2021年に数千億ドルを調達する可能性が大であり、これをレバレッジとし最大3倍まで活用すれば、1兆ドル近くのマネーゲーム資本の急増となり、金融バブルがさらに膨らまされることが明らかなのである。今やそれは完全に制御不能になり、歯止めが利かない状態なのである。

<<低格付け社債の急増>>
さらにバブルを象徴する不気味な動きは、低格付け社債の発行が急増していることである。
2021年に入ってからの発行額は世界で1100億ドル(約11兆5000億円)を超え、過去最高ペースを記録している。利回りの低下で投資不適格級の企業が市場での資金調達を増やしており、直近の2月1週間だけでも70億ドル(約7360億円)余りを集めている。パンデミックのコロナ救済による米財務省の融資制度や米連邦準備理事会(FRB)の債券買い入れの対象になるのではないかとの観測や、世界の低格付け債の平均利回りが、2/19時点で4.6%と過去最低となっていることがこの動きを加速させている。超低金利の中で利回りを追求する投資家、金融資本にとっては、たとえ投資不適格級資産であっても、今ならまだいけるとリスクを無視して資金を投じているのである。カジノ場のギャンブラーの心理状況とも言えよう。バブルがバブルを呼び込んでいるのである。
低格付け債は、「ジャンク債」や「ハイイールド債」とも呼ばれ、低格付けのデフォルトリスク(元本償還や利払いの不能リスク)の高い債券である。通常、スタンダード・アンド・プアーズ社(S&P)の格付けで「BB」以下の低格付債券のことを指している。BB以下は、B、CCC、CC、C、Dとなる。
2/9には、CCCクラスの企業が1.5億ドル発行しており(米パーティシティホールディングス)、買い入れ応募は旺盛で、借り手優位の需要を背景にCクラスでも発行可能という事態である。
こうした一連の動きで重要なことは、ほぼすべての金融市場に存在する前例のないレベルの無謀な投機的・ギャンブル的行為の蔓延である。ゲームストップ事件で明らかになったように、多くの個人投資家もそれに巻き込まれているのである。
結果として、今や株式市場を含めた金融市場は、生産的な投資のための資金調達とはほとんど関係がない、という事態である。市場は、その場しのぎの一攫千金の手っ取り早い手段、賭場と化しており、バブルに乗じたギャンブラーが支配する場と化しているとも言えよう。金融市場は病んでおり、FRBをはじめ各国中央銀行がや財政当局がそれを下支えし、市場はただただそれに依存しているのである。
問題は、このような事態は自然でも持続可能でもないということである。この危機から抜け出す方法は、バブル市場と化し、カジノ場と化した投機的市場を徹底的に規制・縮小することであろう。バブル破裂を防ぎ、熱を冷まさせるには、大胆な金融資本規制を導入し、たとえ低率でも一律課税できる金融取引税を導入し、富裕税・累進課税を再構築する、そうしたニューディール政策こそが緊急の課題であることを明らかにしている。
(生駒 敬)

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