【投稿】増税翼賛・原発再稼動の危険をよそに

【投稿】増税翼賛・原発再稼動の危険をよそに東西の愚劣・挑発首長にへつらう愚かさ


4月21大飯原発再稼動を許さないデモ・関電本社前
(写真は、4/21「大飯原発再稼働を許さない!」(呼びかけ:止めよう原発!関西ネットワーク)・関西電力本店前)

<<「面白い話だろ」>>
4/16、東京都の石原知事はワシントン市内の保守派シンクタンク・ヘリテージ財団(日本の防衛族・憲法九条否定議員と関係が深いことで有名)で「日米同盟と日本のアジアでの役割」と題して講演し、現憲法について、「アメリカが戦争中に3日か4日で作って、英語から日本語に訳した非常に醜い全文でできているあの憲法」と現憲法を全否定し、「日本がサンフランシスコ条約で独立後も、有効な法律としてその国を支配しているばかな事例はどこにもない」、「国民は権利意識は強いが、自分の責任は意識しないという、非常にいびつな国民のメンタリティーを作ってしまった」、「日本も核のシミュレーションをすべきだ」などと自説を開陳、その後に「日本人が日本の国土を守るため、東京都が尖閣諸島を購入することにした」と述べ、尖閣諸島の魚釣島、北小島、南小島を個人所有する地権者と交渉を開始したことを明らかにした。
石原知事はさらに「ほんとは国が買い上げたらいいと思う。国が買い上げると支那が怒るからね」、そこで「東京が尖閣を守る。どこの国が嫌がろうと、日本人が日本の国土を守る。日本の国土を守るために島を取得するのに何か文句ありますか。ないでしょう。やることを着実にやらないと政治は信頼を失う。まさか東京が尖閣諸島を買うことで米国が反対することはないでしょう。面白い話だろ。これで政府に吠え面かかせてやるんだ」と、どうだと言わんばかりの笑みを浮かべながら、インタビューに答えている。わざわざ米国で現憲法否定発言を声高に叫び、悪意と侮蔑と差別感情をを込めて中国を「シナ」呼ばわりし、対中強硬姿勢をひけらかし、領有権を主張する中国や台湾の反感を意図的に煽り立て、物議を醸すことを承知の上で、突出した刺激的で挑発的な発言を繰り出し、「面白い話だろ」と悦に入っている姿は、あきれるばかりか、その時代錯誤ぶりは愚劣、醜態でさえある。

<<共鳴・絶賛しあう東西の挑発知事・市長>>
ところがこの石原発言について、4/17、大阪市の橋下市長は事前に構想を聞いていたことを自慢げに明らかにしたうえで、「石原知事がこのような行動を起こさない限り、国はこの問題にふたをしたままで積極的な動きはなかった。すごい起爆剤になった」「普通の政治家ではなかなか思い付かないことだ。石原氏しかできないような判断と行動だと思う」とへつらい、ほめあげ、絶賛したのである。同類、相共鳴しあう図である。
石原氏は「東京が尖閣諸島を守る」と声を張り上げたが、買うのは石原氏個人ではなく、価格は「10~15億円になる見込み」で、都が税金から買うのである。しかもどういう方法で「尖閣を守る」のかは明かにしなかったが、これまた巨額の税金支出を必要とするであろう。「都の予算は都民のために使うのが大原則では」と問われて、石原知事は「大原則は国のためだ」と弁明したが、橋下市長もこれを褒め上げた以上、協力・協賛・同調するのであろう。都政や市政にかかわる物件でもないものに支出をしてわざわざ緊張を激化させ、その物件を守るためにまた支出をする、まったく都政・市政に無関係、有害無益でくだらない支出である。こんな挑発行為を大げさに取り立て、褒め上げ、媚びへつらう日本の政治状況、メディアの報道姿勢こそが問題だといえよう。
橋下氏はすでに「日本では、震災直後にあれだけ『頑張ろう日本』『頑張ろう東北』『絆』と叫ばれていたのに、がれき処理になったら一斉に拒絶。全ては憲法9条が原因だと思っています」と述べ、憲法9条は「他人を助ける際に嫌なこと、危険なことはやらないという価値観。国民が(今の)9条を選ぶなら僕は別のところに住もうと思う」と、現憲法の根幹を露骨に否定する、石原氏とまったく同一の路線を表明しており、危険極まりない時代錯誤的な国家主義者の、日の丸・君が代を強制する東西の挑発者コンビが、期せずして偏狭なナショナリズムを煽る、その低劣な本質を自己暴露したのである。憲法9条が嫌いなお二人さんは、とっとと「別のところ」に住んでいただいたほうが、国際平和に立派に貢献できよう。しかし現今日本の政治・メディアの状況は、この二人にこびへつらい、持ち上げ、体制翼賛化しかねない状況が作り出されている、と言えよう。

<<「都ではなく国が買うべきだ」>>
問題は、石原氏個人の勝手な自己陶酔の、無責任な酔っ払い発言の類でしかないものが、公職である都知事発言として一人歩きし、外交的挑発発言として緊張を激化させる格好の道具立てに仕立て上げられ、政権が無責任な言辞の毅然たる批判もできず、むしろそれに引きずられていることである。
折りしも、朝鮮ミサイル騒動をめぐって迎撃ミサイル発射命令が発令され、日米ミサイル共同作戦が進行し、これを好機として首都圏から沖縄、先島までPAC3配備が大手を振ってまかり通り、軍事優先・緊張激化・冷戦志向の新たな段階が画され、次なる先島諸島への自衛隊配備の地ならしが既成事実として着々と進められ、東シナ海での軍事的緊張が人為的に形成されつつあることである。わざわざ緊張を煽り立てるまったく大迷惑な、客観的にも主体的にも本来そのような必要性などまったくない、一触即発・緊張激化の事態の進行が画策されているのである。
石原氏の尖閣諸島購入発言について問われた藤村官房長官は「必要があれば東京都にも情報提供を求めていきたい」と述べ、尖閣諸島を国が購入することについて「必要ならそういう発想のもとにすすめることも十分ある」と述べ、野田首相までが4/18の衆院予算委員会で「あらゆる検討をしたい」と述べ、尖閣諸島の国有化も選択肢とする考えを示唆し、前原政調会長が「都ではなく国が買うべきだ」と応じて、石原・橋下発言に媚びを呈し、尻馬に乗ろうとする姿は、崩壊寸前の政権の付和雷同する哀れな姿を象徴していると言えよう。こんな挑発路線に引っかかり、かかわっておられるような政権の状況ではないはずである。
もはや政権交代の意義をまったく失ってしまったといえる民主党政権にとって、最後の汚名挽回の切り札は、このような緊張激化路線と決別し、危険極まりないさらなる原発震災の危険性を回避する、原発再稼動を一切認めない脱原発路線への全面転換と増税翼賛路線からの脱却である。自公前政権の市場原理主義・弱肉強食・規制緩和・社会保障切捨て・緊縮経済路線からの決別を約束したからこその政権交代、そして福島原発震災が明らかにした原発震災の全地球的・全人類的犯罪路線からの決別、この二つと復興経済を結び付けるニューディール政策への全面転換こそが、日本が直面し問われている最大の課題なのである。期待すべくもないかもしれないが、現政権主流派に反旗を翻す多数派の結集と決起こそが問われていると言えよう。
(生駒 敬)

写真は、4/21「大飯原発再稼働を許さない!」(呼びかけ:止めよう原発!関西ネットワーク)・関西電力本店前

【出典】 アサート No.413 2012年4月28日

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