【投稿】なぜ強行する「大飯原発3.4号機再稼働」

【投稿】なぜ強行する「大飯原発3.4号機再稼働」
                             福井 杉本達也 

1 安全性を無視した大飯原発3・4号機の再稼働要請
 枝野経産相は4月14日福井県知事に対し大飯原発3・4号機の再稼働に向けての地元の協力を要請した。要請の中で、枝野は「2基は政府が示した新たな安全基準を満たし、安全は確保されている」とし「電力需給面での必要性」も再稼働の理由に挙げた。だが、これまで原発稼働に肯定的であった地元紙・福井新聞でさえ、「説明も説得力も足りない」「信頼を失った政権の政治判断は常に危うい」(2012.4.15)と批判的である。
 一方、福島事故以降、脱原発の主張を強める中日新聞(東京新聞)は,野田首相と3閣僚で「責任,本当に取れるのか」と問いかけ、損害賠償を含め「原発事故の責任を取り切れるものは存在しない」とし、「原発の安全性を確認できる状態からはほど遠い」「福島第一原発事故の原因は、まだ分かっていない」「科学的、中立的な規制機関はまだ存在しない」とし原子力規制庁も発足していない中での事故の当事者たる原子力・保安院による “安全確認”と前のめりの“政治判断”に大きな疑問を投げかけている。工程表では「事故発生時に“司令塔”となる免震施設」「ベント時に放射性物質を取り除くフィルターも、完成は三年先」であると指摘する。福島第一原発の免震重要棟は柏崎刈羽原発の地震による被害の経験を踏まえ、事故のわずか半年前に完成したものである。もし放射性物質が漏れ込まないようにした、作業員が300~400人も入れる免震重要棟がなかったならば東電は福島第一原発を放棄せざるをえなくなったであろう。それは日本の終わりを意味していた。今回の事故での数少ない不幸中の幸である。それさえ先延ばしして何が何でも再稼働するというのであるから「福島の知見」など何処へやらである。

2 関電の「電力不足」は大ウソ
 大飯原発再稼働を福井県知事に要請するにあたり、経産相は4月13日の記者会見で、「関電の供給力を上積みしても厳しい電力不足に直面すると判断し、再稼働が必要だ」とし、「猛暑だった2010年並みの最大需要に対する供給力不足は18.4%」になり、「電力不足が社会的弱者にしわ寄せを与え、日本産業の屋台骨を揺るがす可能性が高い」と説明している(福井:4.14)。しかし、これは再稼働ありきの詭弁である。
 まず①需要のピーク時である「最大電力」の比較を2010年の3,095万kwとしているが、これはここ10年での最大値である。『関西電力会社案内2010』によれば、ここ数年間は2010年を除き2,900万kw台で推移している。2006~10年の過去5年間の平均では2,945万kwにしかならない。
 ②次ぎに供給力であるが主力の「火力発電」の供給力を1,923万kwと見積もっている。しかし、ここには宮津エネルギー研究所(重油・原油)の2基:75万kwと多奈川第二発電所(重油・原油)の2基:120万kwもの設備が抜けている。共に「長期計画停止中」であり、枝野の説明では「立ち上げに相当程度の時間が必要」としているが、とんでもないことである。関電管内では全原発が停止することは前々から分かっていたはずである。東電は地震で大きな損傷を受けた福島県の広野火力380万kw(1~5号機)、常陸那珂火力100万kw、鹿島火力440万kw(1~6号機)を7月までのわずか4ヶ月という短期間で全基を復旧させている。震災から1年以上も経過したにもかかわらず、停止中の火力を復旧させないことは電力供給の義務があり地域独占が認められている電力供給事業者としては犯罪行為である。
 ③「水力発電」は254万kwを見込んでいるが、2011年の273万kwより19万kw低い。卸電力の電源開発等を含め出力合計は385万kwもある。緊急時であるならば、通常は水を貯めておいて、夏場のピーク時に集中して発電すべきである。資料からは、なんら供給事業者としての切迫感はない。
 ④「揚水発電」であるが、出力合計488万kwに対し、半分以下の222万kwしか見込んでいない。11年の実績値は328万kwもあった。理由は「ベース供給力減に伴う揚水汲み上げ電力不足」=原発が稼働していないので揚水できないという理屈であるが、「計画停電」も考えるという(福井:4.19)ふざけた恫喝を振りかざすならば夜間に火力を動かして揚水し、昼のピーク時に備えるべきである。揚水発電は巨大な蓄電装置である。貯められない電気を水の「位置エネルギー」として唯一貯めることができる。緊急時には最大限利用すべきものである。このような資料を堂々と記者会見で配付する経産相の感覚を疑う。
 ⑤「融通電力」は、121万kwを見込んでいる。内訳は中部電力から70万kw 北陸電力から3万kw、中国電力から37万kw、その他で11.4万kwである。11年実績では四国電力から34万kwの融通を受けていたが「原子力発電比率の高い九州、四国電力は、需給バランス厳しいことが想定され、関西電力への融通は行えない」という姑息な説明を付けている。周知のように周波数変換の必要がある東京電力など東日本への融通とは異なり、関西電力管内へは東から中部電力、北から北陸電力、西から中国電力・四国電力・九州電力と四方八方から簡単に融通ができる。それぞれ50万Vの送電線で連系しており、最大500万kwの融通容量がある。
 ⑥「自家発電」は89.1万kwを見込んでいる。関西電力管内での自家発電は684万kwもあるのにいかにも少ない。関電管内の自家発電のうち関電等への売電は64.3万kwしかないが、卸供給に194.3万kw、PPS(特定規模電気事業者)向け売電が26.2万kw 、自家消費260万kw、昼間の余剰売電可能が11.4万kwとなっている。中部電力管内で505万kwのうち電気事業者以外及び昼間余剰売電可能が合計:64.7万kw、北陸電力管内:71.4万kwのうち同:36.6万kw  中国電力管内:726.8万kwのうち同:206.3万kw  四国電力管内:220.1万kwのうち同:66.7万kw 九州電力管内:540.7万kwのうち同:179.3万kwとなっており(「自家発設備の活用状況について」資源エネルギー庁2011,7,29)、電力はダブダブに余っている。特に中国電力管内・九州電力管内の余力は桁違いに大きい。また、関西電力管内では、特定規模電気事業者として大阪ガスの子会社の泉北天然ガス発電所は関西地域のエネルギー競合関係から敵対関係あり関電の供給力計画からは除かれているが、110万kwもあり、大阪ガスではこの他西島エネルギーセンター:14.9万kw、宇治エネルギーセンター:6.6万kw、摂津エネルギーセンター: 1.7万kwがある。以上分析しただけでも十分な供給余力がある。
 ⑦関電自体だけでも姫路第二の運転開始を少し早めれば十分すぎる供給余力がある。国に提出した『供給計画』では最新型のガスタービンコンバインドサイクル(GTCC)の発電所の整備を進めている。計画では1号機:48.65万kwの運転開始は2013年10月、2号機(同)が2014年3月、3号機(同)同年7月、4号機(同)同年11月としている。東電は川崎火力増設(50万kw)の半年前倒し運転開始など積極的な夏場の需給緩和策をとっている。関電は供給者責任として前倒しで行うべきである。

3 なぜ再稼働を強行する-原発輸出で米核戦略の尖兵となる野田政権
 北海道電力・泊原発が停止する5月5日までに何としても大飯原発3・4機の再稼働をしたいというのが当初の野田政権の狙いであった。なぜ、全原発の停止を避けたいのか。原発輸出に差し障るからである。当初、原発輸出は官民一体で始められたのではない。ところが、09年12月にUAEへの原発建設を韓国に、10年2月にベトナムへの輸出をロシアに持って行かれてから、官民一体でかつ運転、保守・点検をセットとした「パッケージ」型サービス提供を売りに電力事業者を巻き込んだ商戦を展開することとなった。パッケージ型を売り込むのに電力事業者が日本で1基も原発を運転していないというのはいかにもまずい。日本を何としても「脱原発」させてはならないのである。
 原発は核戦略の一環である。ところが、米国ではシェールガス革命で天然ガス価格は日本の9分の1にまで下がり、原発は火力にとても太刀打ちできないとして建設計画はほぼ中断している。今後は古い原発の廃炉がどんどん迫ってくる。しかし、それでは米国の核戦略はもたない。そこで米国は日本を踏み台にして核燃料を売りつけ、米国内の核工場の操業を維持し、軍事産業の延命を図る。一方、原発輸出対象国は南シナ海で中国と対立するベトナム・マレーシア、ロシア・イランと国境を接するトルコ、シリア・イランに近いヨルダン、中国・ロシアに挟まるモンゴル・カザフスタン、MD (Missile Defense)でロシアと対立するポーランドなどである。これらは米国の安全保障にとって重要な国々である。原発輸出に係るリスクは日本が、核戦略の成果(例えば、ベトナムを中国の影響下から引き離す対中戦略)は米国が取るということである。
 4月11日の中日は「再稼働5人組暗躍」として、前のめりの野田政権を裏で支える5人を名指しで非難した。その筆頭が仙谷由人政調会長代行である。これに古川元久国家戦略担当相、斎藤勁官房副長官、枝野経産相と細川原発相を加えた5人である(「チーム仙谷」)。仙谷は当事者でもないのに閣僚4者協議に常に参加し、枝野が福井県知事に要請した日には民主党の県会・市会議員を別途集めて再稼働に賛成するよう恫喝した。仙谷は原発輸出の元締めであり、米核戦略の代理人である。10年1月に国家戦略担当相に就任してから政府系金融機関である国際協力銀行の前田匡史国際経営企画部長(内閣参与)と二人三脚で、国際協力銀行の融資によって発展途上国にローンを組ませ原発を建てさせる計画に奔走している(福井:2011.12.5)。しかし、万一事故が起こったり、政変や反対運動で計画が頓挫した場合、その負担は日本政府が被ることとなる=国民の税金が投入される。原発とは「政府が前面に乗り出してきてやっと売れるようなシロモノなのである。その事実は同時に原発輸出に潜むリスクの巨大さも示している」のである(「原発輸出―これだけのリスク」明石昇二郎『世界』2011.1)。しかも、日本国民の安全・生命と引き換えに米国の核戦略に忠実に従おうというのである。

 【出典】 アサート No.413 2012年4月28日

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