【投稿】再び公務員攻撃:人事院勧告凍結論の跳梁
▼梶山長官:97人勧誘結を示唆
先週、梶山官房長官は「財政再建、行革推進、国民負担の増加という中では今年の公務員賃金については、人事院勧告の凍結もやむなし」と発言し、97春闘の山場を前に、政府は公務員の賃金闘争に挑戦状を突き付けてきた。消費税5%、医療負担の引さ上げ、公共料金の値上げ、一方で従来型の整備新幹線着工という中で、「財政再建元年」「行革が橋本政権の使命」と謳いあげてきた結果が、結局公務員賃金の「凍結」論である。
3月18・19日の民間春闘を受けて、26日に「総務庁長官」その後橋本首相との政労交渉を控えてのこの発言は、注目する必要がある。
そもそも団体交渉権・争議権の剥奪の代償措置として公務員の人事院勧告制度ができたのであり、その完全実施は政府の義務である。円安による経済の上昇気運によりトヨタ自動車で9400円の妥結が見込まれているなど一定の成果が勝ち取られようとするこの時期、春闘を踏まえた民間賃金調査により、夏に出される勧告を見るまえにこうした発言が行われること自体、労働組合と組合員を愚弄するものに他ならない。
▼巧妙な故理のすり替え
ただ政治の流れとしての「官公労」攻撃が、広く存在することは事実である。現に朝日新聞は公然と、「官公労批判のネタ」さがしを各方面で行っているし、特に自治労攻撃に集中しようとしていることは周知の事実である。梶山発言も、公務員賃金が高いから凍結する必要がある、という論法ではないことにも注目する必要がある。掛け声ばかりで進まない行革(実質的に自民党単独過半数という状況の中では当然かもしれないが)と、国民負担の増加という中で、あくまでも国民の不満の捌け口として、巧妙に仕掛けられている。
「ヤミ給与」「ウラ金」問題から、労働組合の資金問題、組合活動にまで幅広く標的が絞られていることは十分に注意する必要がある。
大阪の自治体でも、勤務評定を一時金支給額の格差の根拠にしようという動き、民間委託の一方的な推進の動き、手当て全般への攻撃など、地方財政の逼迫を理由にした行革=行政のスリム化をめざす動きが今年に入って続出している。
ただ、こちら側が既得権の擁護や労使慣行の維持だけで、闘い切れないのも事実であり、上記の梶山発言に象徴的な、細川・村山と続いた「連立時代」の一定の政策形成型の運動スタイルから、対決姿勢を明確にしつつ、われわれの側のスタイルも変化させていくことが求められているように思えるのだが。 (佐野秀夫)
【出典】 アサート No.232 1997年3月21日