<<イラク、シリアへ大規模爆撃作戦>>
2/2夜、バイデン米大統領はまたもや、議会の承認を求めることもなく、国際法に違反して、イラクとシリアへの大規模な爆撃作戦を軍に命じ、米中央軍(CENTCOM)が長距離爆撃機を含む航空機で85以上の目標を攻撃したと発表、「イラン・イスラム革命防衛隊(IRGC)コッズ部隊と関連民兵組織」が使用する軍事施設を標的にしたとし、多数の標的に100発以上の爆弾が投下され、民間人を含む約40人が殺害されている。
この大規模爆撃は、1/28にヨルダンの米軍事基地を襲ったイスラム抵抗勢力によるドローン攻撃で死亡した米軍人3人に対する「報復」でり、「防衛」であるとし、バイデン氏は「我々に危害を加えようとするすべての人にこのことを知らせてほしい。もし米国人に危害を加えれば、我々は対抗する」と脅迫。同時に、「米国は中東や世界の他の場所での紛争を求めていない」と宣言したのであるが、今回の爆撃は第一波にすぎず、「私たちの対応は今日始まりました。 それは私たちが選んだ時間と場所で継続されます」と述べ、さらなる戦火の拡大をさえ示唆したのである。米国防総省報道官のシムズ大将は、記者団に対し「アメリカの爆撃機の利点は、我々が選択した時間に世界のどこでも攻撃できることだ」とまで豪語している。
米国家安全保障会議のカービー報道官は、厚かましくも、「今回の空爆は地域の緊張緩和が目的だ」「私たちはイランとの戦争を望んでいません。」と述べている。「緊張緩和が目的」ならば、軍事ではなく、外交でなければならない。逆行しているバイデン政権のこの感覚こそが、逆に緊張を激化させているのである。案の定、イラク・イスラム抵抗勢力は翌日には、米兵が駐留する基地に対して報復攻撃を行っている。
爆撃を受けたイラク政府当局者は、この攻撃を「容認できない」、「イラクの主権侵害」であり、「イラクと地域を予期せぬ結果に引きずり込む脅威」であると非難した。当然の怒りの表明である。シリア国営メディアも「アメリカの侵略」行為を非難している。
イラン外務大臣アミラブドラヒアン氏は2/3、シリアとイラクに対する攻撃を非難し、それらを「武力と軍国主義によって問題を解決しようとするワシントンの誤った失敗したアプローチの継続」であると述べ、米国政府の軍事的アプローチが状況を複雑にし、政治的解決に至ることをより困難にしていると強調している。
<<バイデン政権の愚行と過小評価>>
さらに2/3 米中央軍は、米国と英国がイエメン全土13か所の少なくとも36の標的に対して空・海上からの複合攻撃を実施したと発表した。 この共同作戦は米海軍艦艇から発射されたトマホークミサイルと空母アイゼンハワーから発射されたF/A-18戦闘爆撃機によって行われ、「複数の地下貯蔵施設、指揮統制、ミサイルシステム、無人航空機の保管・運用施設、レーダー、ヘリコプター」を標的としたと発表している。 さらなる緊張の激化と戦線の拡大である。 これに対し、イエメンの
アンサール・アッラー(フーシ派)政治高官兼報道官のムハンマド・アル・ブハイチ氏は 「イスラエル・シオニストに対する我々の軍事作戦は、たとえ我々がどんな犠牲を払っても、ガザへの侵略が止まるまで継続するだろう」と、たとえ米英軍がエスカレートさせても。それを台無しにさせるであろう、と述べている。
事態の緊張激化の中で、バイデン政権が過小評価しているのは、イスラム抵抗勢力の政治的経済的、そして軍事的力量である。
イランの主要な地域同盟国――レバノンのヒズボラ、イエメンのアンサール・アッラー、イラクのPMU、パレスチナのハマス/イスラム聖戦、そしてシリア政府――はすべて単なるイランの「代理」にすぎないという米国の主張は、実態を直視できない空言なのである。これらのそれぞれのグループは「独自の国内政策を持っており、自主性を持って活動しており」、人びとの要求に密着した基盤を形成している。そして、互いに相互に依存し、協力し、米・英・欧・イスラエルの中東支配に対抗する政治的・経済的、軍事的にも統一戦線を形成し、力量を大きく前進させていることである。イスラエルのガザ大虐殺・ジェノサイド政策、それを無条件に支援するバイデン政権の愚行は、その前進をより一層促進させたのである。その結果、これまでアメリカと親密な同盟関係にあったアラブ諸国が政策転換を余儀なくされ、長年の盟友であったサウジアラビアでさえ、米国と英国のイエメン攻撃には参加しないばかりか、「自制とエスカレーションの回避」の必要性を強調する事態である。
こうしたバイデン政権の過小評価は、緊張を激化させ、戦線を拡大させれば、それ以上に取り返しのつかない事態に追い込まれ、中東情勢は手に負えなくなる事態に陥る可能性が大なのである。
中東戦争への拡大は、紅海ばかりか、ペルシャ湾閉鎖に直結し、石油とガス、そしてあらゆる商品・製品の膨大な貿易が止まり、世界経済への深刻な危機を引き起こすことが必至なのである。
No War with Iran が言うとおり、「中東における現在の暴力のけいれんを大幅に軽減するための唯一の真の道は、ガザ地区での即時停戦を確保し、この地域の地獄の中心の火に冷水を浴びせることだ。」
(生駒 敬)