<<極右「国民連合」は失速>>
7/7、フランス国民議会(下院、577議席)選挙の第2回目の決選投票が行われ、左派連合の「新人民戦線(NFP)」が182議席を獲得し、第1勢力となる見通し(解散前149)が明らかとなった。続くのは、マクロン大統領の与党連合「アンサンブル」が168議席で第2党となり(解散前250)、ル・ペン氏率いる極右「国民連合(RN)」は143議席と予想外に失速し、3位となった(解散前88)。決選投票の投票率は約67%で1997年以降で最も高い投票率となった。
新人民戦線(NFP)は、1か月前には、存在しなかった統一戦線である。
マクロン大統領が、6月6日~9日の欧州議会選挙で大敗(マクロン与党連合得票率約15%に対し、ル・ペンのRNは2倍以上の32%・第1党)し、突如6月30日と7月7日に2回の総選挙を実施するという賭けに打って出た。そのわずか数日後の6/14にこの「新人民戦線(NFP)」が結成されたのである。このあたらしい左派連合には、ジャン=リュック・メランションの「不服従」フランス、社会党、共産党、エコロジスト(旧称「ヨーロッパ・エコロジー・グリーン」)、および「新反資本主義党」が結集している。
このNFP結成は、極右「国民連合(RN)」が第1党で内閣組閣と言う危険な流れが既定路線となりかけていた、その流れを阻止し、事態を逆転させる、土壇場での統一戦線形成であった。このあたらしい希望への統一戦線が、圧倒的多数の人々を引き付け、マクロン大統領の中道派とルペンの右派の両方を上回る事態をもたらしたのである。もちろん、決定的には、ル・ペンのファシスト国民連合が絶対多数を獲得するのを阻止するばかりか、第3位にまで後退させることに成功したのである。
<<ル・ペン「我々の勝利は遅れただけだ」>>
NFPのリーダー、ジャン=リュック・メランション氏は、この結果は「わが国の圧倒的多数の人々にとって大きな安堵」だと語っている。一方、極右政党RNの28歳のリーダー、ジョーダン・バルデラ氏は、この投票により「フランスは極左の手に落ちた」と警告している。ルペン氏は「潮は満ちている。今回は十分に満ちなかったが、引き続き満ちており、その結果、我々の勝利は遅れただけだ」と負け惜しみを込めた宣言をしている。
メランション氏は、マクロン大統領に対し、左派連合による新内閣の樹立を認めるよう求め、「大統領は新人民戦線を政権に就かせる義務がある」と述べている。
もちろん、新人民戦線 (NFP) が国民議会で182議席を獲得し、最大のグループとはなったが、絶対多数に必要な289議席には遠く及ばない。これから山あり、谷ありであろう。
公式結果発表後、社会党第一書記オリヴィエ・フォール氏は、今後数日で新人民戦線はフランスと国民の未来のための共同プロジェクトに着手しなければならないと述べ、「新人民戦線は、我々の歴史の新たな章に責任を負わなければならない。我々が持つ羅針盤はただ一つ、新人民戦線の綱領の羅針盤だけだ」と語っている。
NFPが掲げたの政策は、いかなるものか?
NFPは、広範な経済政策綱領を掲げて選挙運動を行っており、最低月額
賃金の引き上げ、生活必需品の価格上限の設定、フランスの定年年齢を引き上げたマクロン氏の非常に不人気な年金改革の廃止を約束している。
外交政策では、NFPはパレスチナ国家を「即時承認」し、イスラエルとハマスにガザでの停戦を迫ると誓っている。
さらにNFPは、野心的な経済計画を掲げており、フランスにおける新自由主義正統派の支配に終止符を打つ政策、とりわけ、最低賃金を月額 1,398 ユーロから 1,600 ユーロに引き上げ、すべての生活必需品に価格上限を設定し、グリーン トランジションと公共サービスに多額の投資を行い、定年年齢を 60 歳に引き下げることを求めている。
NFPの本番の闘いは、まさにこれからである。マクロン大統領は任期満了の 2027 年まで大統領の座にとどまると予想されているため、その政治的経済的危機はより一層深まり、落ち着き先は極めて流動的であり、不明瞭である。しかし、今や欧州において、米バイデン政権の戦争挑発・拡大政策、欧州経済破壊政策に追随してきた米・英・独・仏がことごとく破綻し、敗北が明瞭となっていること、彼らにはもはや退場の道しか残されてはいない現実が立ちはだかっているのである。
(生駒 敬)