【投稿】円安で「五公五民」どころか、今や「六公四民」:岸田政権は天下の悪代官

【投稿】円安で「五公五民」どころか、今や「六公四民」:岸田政権は天下の悪代官

                             福井 杉本達也

1 円安で意識感覚では物価上昇10%

円安が止まらない。6月26日には1ドル160円の節目を再突破し、平成以降の最安値を付けた。米国産牛肉はバラ肉の卸価格が1 キロ1500 円、前年同期と比べ81%上がっている。輸入豚肉も1 キロ900 円、前年比で40%上がった。消費支出に占める食費の割合を表す日経新聞は「エンゲル係数」は、23年には前年から1.2ポイント上昇し、27.8%に達し、現行基準を採用した2000年以降で最高に達した。「食品価格がさらに上昇すると、栄養を疎かにして食費を切り詰める恐れは強まる。」とまで書いた(日経プラス1:2024.7.6)。7月5日発表の5月の家計調査では、2人以上世帯の消費支出は29万328円と物価変動の影響を除いた実質で前年同月比1・8%も減少ししていると発表したが、スーパーの生鮮野菜は前年比9.4%、菓子類は5.7%、穀類は6.7%、生鮮果物は12.2%、肉類は4.6%、調理食品(弁当と惣菜)は3.3%上がっており、生活意識調査では、物価上昇は10%とし、来年も10%上がると予想している。

 

2 庶民からさらに金を巻き上げる「インフレ税」

インフレで通貨価値が目減りすれば、これまで積み上げた政府債務の実質的な負担は減る。実質個人消費が低迷するが、税収は改善する。インフレにより家計から政府への所得移転が進む。「インフレ税」である。「今の円安は異次元緩和のつけを払わされている」(BNPパリパ証券・河野龍太郎氏) (日経:2024.7.1)。これに輪をかけて、7月1日に発表された異例の実質GNPの下方修正である(日経:2024.7.2)。24年1~3月期が前期比年率でマイナス1・8%からマイナス2・9%へと、大幅に下方修正された(日経:2024.7.8)。内閣府は7月9日に1~3月期の需要と供給の差である需要不足が8兆円もあると発表した。これは3四半期連続であり、いかに消費が低迷しているかを表している(日経:2024.7.10)。

3 円だけがさらに安くなり、さらに物価を押し上げ

ドル・ユーロ・人民元・円のなかで、円だけが、実効レート指数で150 から50 へと29 年間で1/3 に下がった。この実効レートは、日銀が国内景気の振興のため金利をゼロにして、500 兆円増刷した円が国内では使われず、そっくりドル買い、ドル債券・株買いになったことを示している。日銀が、2013 年からの異次元緩和で国債を増加買いして、500 兆円の円を銀行の当座預金に増やしたが、そのうち418 兆円が、内外金利差を主因に、純流出した。経済成長と、世帯所得の増加のためには、商品需要が増え、国内の設備投資が増えることが必要だが、国内に投資せず、増刷した円500 兆円のうち、418 兆円(80%)は、日本から逃げて、米国に行ってしまったのであるから生産性が上昇するはずはない。増えた円マネーはドル買いになり、国内の景気は、上昇しない。一層の円安は、エネルギー・資源・食品の輸入(1 年に100 兆円相当)の物価を上げて、国内物価も上げる。不況化の物価高、つまり最悪のスタグフレーションになる。

4 ドル売り介入すべきだが、米に脅かされ腰砕けの岸田政権・日銀

一方、米国は増刷されたドル紙幣で日本円の商品を買占め、米国民は安い日本製品を買えることとなる。米国にとっては、米国内の物価を下げ、日本の物価を押し上げ、米国からのインフレの輸出となる。

植草一秀氏は「日本円暴落に対してどのような対応策を示すのかも考える必要がある。金利を大幅に引き上げれば景気後退が深刻化する。いま実行可能な有効性のある対応を取るべきだ。それがドル売り為替介入である…円暴落を是正するために、まずは保有米国国債を全面売却するべきだ」と主張する(『知られざる真実』:2024.6.2)。しかし、これが難題である。「米財務省は20日、主要な貿易相手国・地域の通貨政策を分析した外国為替報告書を公表し、対米貿易黒字額と経常黒字が基準を超えたとして、日本を2023年6月以来、1年ぶりに通貨政策の『監視対象』に再指定した。」(福井:2024/6/22)。4~5月に実施した最大9.7兆円規模の円買いドル売りの為替介入(日経:2024.6.1)を上回るような為替介入を認めないぞという脅しである。そして、為替介入のできないまま、ずるずると来たのが今の160円台という円安である。

5 BRICSのドル離れとオイルダラー体制の終焉

金の価格は世界通貨・基準通貨であり、金の価値に変動がないとすれば、金と比較しドルの価値はコロナ前より半減、円は3分の1になってしまった。中国は米国債を売りまくり、BRICS間の取引は自国通貨決済に。中国はどんどん外貨準備をドルから金に移行している。BRICS諸国もドル離れが起きている。スプートニク・ニュ―ス 6月23日「飼い犬に手をかまれた米国の誤算、超大国の崩壊始まる=トルコ・メディア」で報じられている、サウジアラビアとの関係悪化である。

同記事によれば、「1973年のオイルショック後に締結されたサウジアラビアと米国間のいわゆるオイルダラー協定は6月9日に終了した。この合意では、サウジアラビアが輸出石油の価格を米ドルで設定し、余剰収入を米国債に投資することが定められていた。これと引き換えに、米国はサウジアラビアに軍事支援と庇護を提供した。この協定によりドルの世界基軸通貨としての地位が高まり、米国経済に多くの恩恵をもたらしていた」のだ。しかし、オイルダラー協定が完全に終了したのかどうかは「秘密協定」であるから、現在も今後も明らかにされないだろう。もちろん、日欧米のマスコミはそのようなことを一行も書いてはいない。もし書けば、石油の裏付けもない単なる紙屑としてのドルの大暴落・米国の完全なる終焉となってしまう。

ヘンリー・ジョンストンはRTで以下のように書いている。「ワシントンは、ドルに代わる実行可能な選択肢はないと信じて、常にある種の免責感を持って行動してきたが、オイルダラーの数十年にわたる黄金時代には、少なくとも経済的正当性があった。それは世界の他の国々にとって十分に機能し、最近まで、それに反対する主要なブロックは現れませんでした。また、ポール・ボルカーの長い影が、それに信憑性を与えた。ところが、アメリカが1971年にドルを金に換金する義務を放棄したように、その後、石油に対するドルの価値を維持するという暗黙の義務を放棄した。それ以来、ワシントンは、あらゆるうわべだけの財政抑制や、皆の最善の利益のためにドルを管理するという見せかけを全て捨て去った。それどころか、そもそも通貨の完全性を守らなかったことで、自分たちが引き起こしたまさにその出来事を巻き戻そうと必死に努力する武器として、ドルを振り回しているのです。アメリカは今、この壊れたシステムのあらゆる利益を維持するために戦っているが、その責任は、もはや備えられていないし、引き受ける気もない。もしドルが金にペッグされておらず、暗黙のうちに石油に裏付けられておらず、ワシントンがその一体性を保てないのなら、重要な資源の貿易を促進するという任務には到底対応できない。オイルダラーのように深く根付いたシステムは、一夜にして消え去ることはないだろうが、その経済基盤が侵食されたとき、それは、猛烈な煙と鏡によって、それほど長く維持することしかできない」(RTワールド機械翻訳:2024.6.23)。

6 米金融資本に媚びへつらい、売国政策を続ける岸田政権

落日の米国が最後に頼るは日本からのドル買いのみであり、新NISAなどもその一環である。「2022年5月、岸田首相は英金融街で『資産所得を倍増させる』と表明した。」「少額投賢非課税制度(NISA)の恒久化と非課税制度の拡大」である。2023年6月には資産運用最大手、米ブラックロックのラリー-フィンク最高経営責任者(CEO)会った首相は『資産運用フォーラム』の構想を明かし、外国勢を喜ばせた(「バンカー首相 風呂敷の中身」西村博之:日経:2023.9.30)。なぜ、一国の首相が、米ヘッジファンドと会わなければならないのか。岸田政権は完全に日本を米国金融資本に売り渡しているのである。庶民を苦しめる円安の元凶は政府の文字通りの売国政策にある。

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