【投稿】米国株式市場の暴落--経済危機論(146)

<<暴落を主導したハイテク株>>
8/5、東京株式市場の暴落に引き続いて開場したニューヨーク株式市場でも、株価は急落し、ダウ先物は、前夜の海外市場での売りに追随し、ニューヨーク時間午前8時26分までに1200ポイントもの大暴落を記録。市場が実際に開いた午前9時30分には、ダウは開始5分で1167ポイント下落。ダウ・ジョーンズ工業株30種平均はほぼ2年ぶりの最悪の日を記録した。ダウは1,033.99ポイント、2.6%下落し、38,703.27で終了。ナスダック総合指数は3.43%下落し、16,200.08で終了、S&P 500は3%下落し、5,186.33で終了、ダウとS&P 500は、2022年9月以来最大の1日の下落を記録している。
ダウ平均株価は過去3営業日で5.24%下落し、3日間で5.91%下落した2022年6月14日以来最悪の3日間の下落となっている。ハイテク株

ダウ平均株価は1,000ポイント下落、S&P500指数は世界市場の売りで2022年以来最悪の日を記録

中心のナスダック総合指数も同期間、7.95%下落、これはナスダックにとって、3日間で10.57%下落した2022年6月13日以来の3日間の最大の下落である。S&P500も、3日間で6.08%下落し、2022年6月14日の7.03%下落以来の大幅な下落となった。米国株式市場から2兆ドル以上が消失したと推定されている。
暴落を主導したのは、ハイテク株であった。「マグニフィセント・セブン」(Mag7)は1兆ドルの価値を失ったとされる。マグニフィセント・セブンとは、GAFAMと呼ばれる主要5銘柄(グーグル〔アルファベット〕、アップル、メタ・プラットフォームズ〔旧・フェイスブック〕、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト)に、テスラとエヌビディア(NVDA)を加えたアメリカの主要テクノロジー企業7社である。中でも、アップルとエヌビディアが売りを主導した。NVDA は、過去最高値から 35%も下落している。クラウドコンピューティングサービス大手3社、アマゾン、マイクロソフト、アルファベットの株価は、急成長につながる巨額のAI投資への期待が決算発表で打ち砕かれたことで下落している。Mag7 株は、過去最高値から 3 兆ドルもの下落である.
ウォール街のAI投資で大勝した半導体株も下落し、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ、インテル、スーパーマイクロ・コンピューター、ブロードコムは最大10.3%下落している。

<<恐怖指数・VIXの上昇>>
状況をさらに悪化させているのは、ウォール街のメガバンクが先週に引き続き大幅な損失を出しているという事実である。米国の大手銀行の株価は午前の取引で下落し、JPモルガンは2.4%、モルガン・スタンレーは3.6%、バンク・オブ・アメリカは3.4%下落。ウェルズ・ファーゴの株価は4.3%急落、シティグループは5.4%、ゴールドマン・サックスは3.5%下落している。シティグループは、1週間で16%の損失となっている。

シカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティ指数(VIX)は、いわゆるウォール街の「恐怖指数」として知られているが、指数計算の元は、米国のS&P500であり、基準値は20で、通常は10~20の範囲内で推移している。この基準値を超えると株式暴落の不安指数となり、8/2の30~25の範囲から、8/5には65.73まで急上昇し、その後54.16で取引されている。この「恐怖指数」は、明確に暴落を警告し続けているのである。ゴールドマン・サックスのアナリストは、今後1年間の米国の不況リスクを15%から25%に引き上げ、JPモルガンは米国経済が50%減速すると予測する事態である。

今回の暴落は、こうした事態の悪化の上に、「円キャリートレード」の解消問題が重なったものと言えよう。金利がゼロで行き詰まっている日本で安い円を借り、米国株(主として大手ハイテク企業)や債券など、他の国で高利回りの資産を購入し、その差益で大儲けをする円キャリートレードが、円高傾向への反転、金利引き上げによって、この投機的な円キャリートレードポジションの大規模な解消が引き起こされ、それが米国株の急落の一因、引き金となったのである。
日本銀行によるわずか 0.25% の金利引き上げで不安定さが引き起こされたということは、世界の資本主義金融システムは非常に脆弱であることを改めて露呈させたものと言えよう。

米国、EU、日本の経済はいずれも好調ではない。米国の製造業は7月に4か月連続で縮小し、製造業PMIは46.8%を記録し、景気後退を示唆している。日本のPMIも49.1%に低下し、製造業の衰退を示唆している。 G7諸国はいずれも経済面で苦戦していることを示している

 そのG7諸国は、アメリカ主導のもとに、対ロシア、対中国緊張激化政策を推進し、今や中東戦争拡大から、世界大戦への危機にまで、「恐怖指数」を極度に高めている。
イスラエル・ネタニヤフ首相の「暗殺ラッシュ」は、その危険な表現であり、レバノンとイランでの殺害は、イスラエル自身を「深刻な問題」に直面させ、極度に緊張を高めており、事実上それに加担するバイデン政権のイスラエル支援は、中東地域を「立ち入り禁止地域」とさせ、「封鎖地域」、経済崩壊地域に変貌させ、世界経済を崩壊させる可能性と一体となっているのである。
G7諸国には、緊張緩和、平和政策への根本的転換が求められているのであり、その戦争政策は全世界から、孤立させなければならないものである。
(生駒 敬)

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