<<ネタニヤフ「すべての住宅が軍事目標である」>>
9/27、イスラエルのネタニヤフ首相は国連総会の演説で、レバノンのヒズボラは「学校、病院、アパート、レバノン市民の個人宅にロケットを保管している。彼らは自国民を危険にさらしている。彼らはあらゆる台所にミサイルを、あらゆるガレージにロケットを置いている」と強弁し、「事実上、すべての住宅が軍事目標である」ことを確認し、レバノンには民間人居住地などなく、「イスラエルにはそれをすべて破壊する権利がある」と主張、「事実上、すべての住宅が軍事目標である」として、レバノンへの大量無差別爆撃を合理化するに至った。これは、明らかな100%大量虐殺、ジェノサイド犯罪である。
この演説に抗議して、ネタニヤフの演説中に大量の各国代表が退場し、「バイバイ、ビビ(ネタニヤフ)」の意思を示した。アメリカ・イスラム関係評議会のニハド・アワド事務局長は声明で、「極右であからさまに人種差別主義を掲げるイスラエル政府がガザでの大量虐殺を続け、レバノンの民間人にも国家テロ活動を拡大する中、戦争犯罪者ベンヤミン・ネタニヤフ首相の国連演説中に行われたこの大規模な退席は、国際社会が大量虐殺を拒否していることを示している」と強調している。
イスラエルはレバノンをこの1週間連日、大量爆撃しており、イスラエル国防軍(IDF)はこれを「北の矢作戦」と呼んでいる。レバノンのアビアド保健相は、9/26夕方時点で、このイスラエルの爆撃作戦で1,300人以上が死亡、約7,000人が負傷したと語っている。同保健相によると、イスラエルは通信機器の爆発から始まり、爆撃作戦を続けるなど「民間人に対する無差別攻撃」を続行しており、「これらの無差別攻撃の主な目的は、恐怖の雰囲気を広め、大量脱出を引き起こすことだと思う」と述べている。
ニューヨークでは、9/26、ネタニヤフ首相の国連総会演説を前に、同首相の車列の予定ルートを妨害したとして、20人以上のパレスチナ人とユダヤ人の活動家と支持者が逮捕されている。抗議活動を共催したユダヤ人平和の声(JVP)は、「我々はネタニヤフ首相のレバノン攻撃とガザでのパレスチナ人虐殺を強く非難する」、「米国政府がイスラエルへの武器供与をやめ、パレスチナ人が当然の自由と尊厳を持って暮らせるようになるまで、我々は反対の声を上げ続ける」ことを明らかにしている。
一方、イスラエルに加担するアメリカに関しては、Axios は同日、「情報筋によるとバイデン氏は内心ネタニヤフ氏に怒っている」と言う記事を配信し、停戦提案の拒否とエスカレーションの激化をめぐって、大統領はイスラエル首相に対して「苛立ち」、「屈辱」、「激怒」といった形容詞を感じている、と報じている。しかしこれも、バイデン/ハリス政権が実際上は、この虐殺行為を承認し、自発的に参加している実態を覆い隠すものであることは言うまでもない。「休戦に向けて精力的に取り組んでいる」と言いながら、大量の武器・弾薬を供給し、こうした流血行為に進んで加担していることは、彼らの「心優しき言葉」やねじまげ、見せかけのホワイトハウスのプレスリリースではなく、実際の行動そのものが立証していることである。本当に戦争を止めたいのであれば、軍事援助や軍艦派遣・軍事支援を直ちに停止すれば、イスラエルは戦争継続が不可能なのである。
カマラ・ハリス大統領候補が、現政権が「休戦に向けて精力的に取り組んでいる」と保証する一方で、イスラエル国防省は米国からさらに87億ドルの軍事援助を新たに確保したと発表しているのである。これが大量虐殺への加担ではなくて、何なのであろうか。すでに有権者からは見透かされているであろう。
<<「バイデンは何度も騙されているだけ」>>
9/26、イスラエル国防省は、ガザでの大量虐殺とレバノンでのイスラエルの劇的なエスカレーションを意味する「進行中の軍事活動」を支援するために、米国から87億ドルの軍事援助を確保したと発表。このパッケージには、すでにイスラエルに送金されている「必須の戦時調達」のための35億ドルと、防空のための52億ドルの助成金が含まれている。その大部分は同国の枯渇した防空兵器の補充に充てられるとイスラエル国防省は9/26の声明で述べている。
そしてこの最新の軍事支援パッケージ発表から1日も経たないうちに、米国のロイド・オースティン国防長官、英国のジョン・ヒーリー国防長官、オーストラリアのリチャード・マーレス国防相は、イスラエルとヒズボラの21日間の停戦を共同で呼びかけている。
「我々は今、全面戦争、新たな本格的な戦争のリスクに直面しており、それはイスラエルとレバノンの双方に壊滅的な打撃を与える可能性がある」とオースティン氏は述べている。
続いて、同じ9/26、米国、欧州連合、サウジアラビア、アラブ首長国連邦などの首脳は、イスラエルとレバノンの国境で即時21日間の停戦を求め、同時に、イスラエルとレバノンは、この取り組みの枠組み内で合意には至っていないことを明らかにした。
フランスのマクロン大統領は「この21日間で首相が和平を約束し、チャンスを与えることができる時間は、まだあると私は信じている。米国は今、イスラエル首相にそうするよう圧力を強めなければならないと信じている」、「イスラエル軍がレバノンで地上作戦を行うことは大きな過ちであり、エスカレーションの大きなリスク」になると指摘している。また、マクロン氏は、ヒズボラが停戦の用意があると表明しているため、全世界がネタニヤフ首相の決断を待っていると付け加えている。
ところが、イスラエルはレバノンへの爆撃作戦の拡大を止める意志などさらさら持ち合わせてはいない。米当局者らは、ネタニヤフ首相は公式にはこの計画を「歓迎する」と述べると理解していた、しかしネタニヤフ首相はニューヨークに到着すると方針を変え、戦闘は続くと述べた、と弁明している。ネタニヤフ首相の事務所は、停戦が進展しているという報道を否定する声明をわざわざ発表し、レバノンへの激しい攻撃を継続し、ガザへの猛攻を続けることを明らかにしている。「停戦に関する報道は誤りだ。これは米仏の提案であり、首相はこれに対して反応すらしていない」と声明は述べている。
ホワイトハウスは、「レバノンの一時停戦に関する発表は、イスラエルと調整して発表された」ものであると述べているが、そもそも、米国はイスラエルへの軍事援助を継続しており、イスラエルは新たな87億ドルまで獲得し、状況が悪化した場合はイスラエルを守ると請け合ってくれており、ネタニヤフ首相には中東戦争拡大を止める動機がないのである。9/26、ネタニヤフ首相はレバノンで停戦はないと断言したことで、こうした停戦案は吹き飛んでしまったのだと言えよう。
こうした事態について、シンクタンクのクインシー研究所のトリタ・パルシ氏は「ネタニヤフがバイデンを騙しているわけではない。バイデンがネタニヤフに何度も騙されているだけだ」と、述べている。今回に限らず、これまで大いに
宣伝されたガザ停戦に関しても一貫したパターンであり、停戦は一度も実現していない。
中東戦争の危険な拡大は、直ちに石油価格の急騰をもたらしている。バイデン/ハリス陣営は、戦争・経済両面での危機解決政策を提示できず、苦戦に陥らざるを得ないであろう。
(生駒 敬)