【投稿】名護市長選が明らかにしたもの 統一戦線論(45)

【投稿】名護市長選が明らかにしたもの 統一戦線論(45)
アサート No.483 2018年2月

<<「あきらめ」を助長させたものは何か>>
沖縄・名護市長選の結果は、周知のとおり、当選した渡具知武豊氏(56歳、無所属。自民、公明推薦)が20,389票に対し、現職で2期連続当選してきた稲嶺進氏(72歳、社民、共産、社大、自由、民進推薦、立憲民主支持)は16,931票、その差3,458票という予想外の大差であった。同時に行われた名護市議補欠選においても、当選した仲尾ちあき氏19,782票に対し、ヘリ基地反対協議会共同代表の安次富浩氏は15,927票、3,855票差であった。同市・辺野古への米軍新基地建設を許さないオール沖縄の共同・統一候補として闘った稲嶺、安次富両氏の敗北は、負けても接戦、僅差とみられていたことからすれば、この数字以上のものがあると言えよう。しっかりとかつ冷静にこの選挙戦を振り返り、安倍政権が今年最大の山場と設定している11月の県知事選に備えることが求められている。
第一は、翁長知事を先頭とするオール沖縄の現職という強みが、不変のものではなく、常に掘り崩され、浸食されているという現実である。攻防のただなかで、あいまいさや動揺、優柔不断は有権者の意識に直ちに敏感に反映されるということであろう。
その最大の問題は、辺野古基地建設の強行を絶対に許さないのであれば、なぜ、沖縄防衛局が次から次へと繰り出してくる「岩礁破砕」や「サンゴ移植」「石材運搬の港使用」(奥港、本部港)などを、「法的には認めざるをえない」(翁長知事)として許可を先行させているのであろうか。許可しておいてから、奥港住民の石材運搬阻止の必死の闘いに再検討を約したが、実態は、工事阻止どころか進捗させているのである。そして実際には、辺野古・大浦湾の埋め立てを「許可」しているのが実態である。
当然のこととして「市民の間には『知事は(基地建設工事のための)本部港の使用も認めた。工事阻止どころか進めている』との不満も根強い」(2/9日付琉球新報)、「『反対しても工事は止められない』とのあきらめムードが広がっている」(2/4日付沖縄タイムス)のが現実であった。
「オール沖縄」は「市長と県知事が許可しなければ新基地は止められる。」と市民に訴えながら、仲井真弘多前知事が行った「埋立承認」を撤回せず、事実上「承認(許可)」した状態で放置しているのである。ここに、市民の「あきらめ」を助長させた最大のものがあると言えよう。仲宗根勇・うるま市島ぐるみ会議共同代表が「『工事が進んでいる』ことが投票判断の決定的要因」であり、「稲嶺氏陣営は、工事の進行が翁長知事の承認取り消しの取り消しに発するとの根本的な矛盾の認識を欠落」(2/8日付琉球新報)させていたと指摘する通りである。
安倍政権、沖縄防衛局、自民・公明が名護市政奪還を目指して、ヒト、モノ、カネ、デマを最大限動員し、市民の「あきらめ」ムードを煽ったのは事実であるが、それを助長させたものをしっかりと見つめなおすことが求められている。

<<辺野古の「へ」の字も言わない>>
しかし、その「あきらめ」にもかかわらず、市長選直前の1/30に公表された琉球新報社・沖縄タイムス社・共同通信社の3社合同・名護市の世論調査では、普天間基地の辺野古移設について「反対」「どちらかといえば反対」と回答したのは66%、「賛成」「どちらかといえば賛成」は28.3%にとどまり、さらに名護市長選結果に関係なく辺野古移設を進める考えの政府姿勢を支持するかについては「支持しない」「どちらかといえば支持しない」が67.2%、過半数以上の市民が辺野古移設に反対の立場であり、「市民の理解」など到底得られてはいないのが現実である。さらに、投票日当日の <出口調査結果>でさえ、共同通信、琉球新報、沖縄タイムス3社共同調査では、辺野古移設に反対=49・4%、どちらかといえば反対=15・2%、合計64・6%であり、NHK調査では反対=52%、どちらかといえば反対=23%、合計75%にも及んでいる。辺野古基地ノー!の民意は強まりこそすれ、弱まってはいないのである。
にもかかわらず、稲嶺陣営は敗北したのである。稲嶺氏は「残念ながら、辺野古移設の問題がなかなか争点となりえなかった」と語られているが、選挙戦期間中でさえ、翁長知事の応援演説には、「埋め立て承認の撤回」はおろか、「あらゆる権限を行使して新基地は造らせない」というこれまでの決意表明さえ表明されなかったのである。違法ダンプや県道封鎖、デモ規制、不法逮捕、サンゴ礁破壊、等々、もろもろの違法な辺野古の基地建設工事をすべてストップさせる、それらの問題点をこそ広く訴えるという、本来の争点がなぜかうやむやにされ、回避されてしまったのである。そのうえ、若さを前面に押し出す渡具知陣営の争点外しに対応し、押され気味の選挙戦を挽回するためでもあろうか、パンダの誘致などという陣営関係者でさえ首をかしげるような政策を打ち出すなど、迷走まで表面化させてしまった。
こうした事態に付け入るように、渡具知陣営は「基地問題にこだわり過ぎ、経済を停滞させた」と稲嶺市政を批判、学校給食費の無償化や観光振興などを争点の中心に据えた。さらに渡具知陣営は、前回自主投票だった公明党を選挙戦に本格的に参入させるために、渡具知氏が公明党沖縄県本部と交わした政策協定の中に「米海兵隊の県外、国外移転」まで盛り込まれた。これによって公明党沖縄県本部は辺野古に反対の立場を取りつつ、「市長に工事を止める権限はない」として渡具知氏推薦を合理化し、創価学会員をしゃにむに反稲嶺に突っ走っらせることとなった。もう一つ、学会員を突き動かしたのが「共産党主導」批判キャンペーン。「『稲嶺の選挙は共産党が主導している。共産党主導と聞いただけで敵対心を燃やす学会員さんが多いんだ。とてもうまくいった」(渡具知選対幹部、2/5 現代ビジネス)という。その意味では、立憲民主党が稲嶺支持を打ち出した1/23、すぐさま共産党書記長の小池氏が、まるでオール沖縄を代表し、選挙を取り仕切っているかのように「歓迎したい」と表明したことは、火に油を注いだとも言えよう。相手に付け入らせず、セクト主義を排していかにともに闘うかという姿勢こそが問われている。
さらに、自民党が選挙戦で作成した「内部文書」は「応援メモ」というタイトルで、応援に入る国会議員などへの指示として、〈NGワード…辺野古移設(辺野古の『へ』の字も言わない)〈オール沖縄側は辺野古移設を争点に掲げているが、同じ土俵に決して乗らない!〉(2/1付しんぶん赤旗)が徹底された。
当選した渡具知氏自ら「辺野古容認の民意ではない」(2/5の記者会見)ことを認めている。明らかに、与党の自民・公明連合には、避けがたい矛盾が内包されており、辺野古の「へ」の字も言わざるをえなくさせる、これを破綻させるオール沖縄、稲嶺陣営側の戦術・戦略が欠落していたのである。

<<「あきらめる必要は絶対ない」>>
過去5回の名護市長選では新基地建設の是非が焦点となり、1998年は、新基地建設容認・推進派の岸本健男氏が得票数16,253票を得て初当選。2002年は、同じく岸本氏が得票数20,356票を得て再選。2006年は、容認・推進派の島袋吉和氏が得票数16,764票を得て初当選。2010年の同選挙では、新基地建設反対派の稲嶺進氏が得票数17,950票を得て初当選。前回2014年は、同じく稲嶺氏が得票数19,839票を得て再選。
今回、稲嶺氏は、前回2014年の選挙時に得た票より約3,000票減らしての敗戦である。 同市の有権者は前回より約2,000人増えており、移設容認派が前回より5,000票増やしたことからすると、稲嶺陣営の落ち込みは、表面的な数字以上のものがある、と言えよう。
また、表面的には、名護市内の公明票は2000~2500票。下地幹郎衆議院議員(維新)の票が約1500票。前回約4000票の差は、この「公明票」と「下地票」によって埋められた、とも言えよう。
しかし、前回より有権者が増えているのは、2016年の選挙権年齢が18歳に引き下げられたことが大きく反映している。しかも、出口調査によると、渡具知氏候補支援=10代が65,4%、20代は61,6%という若い世代の支持の高さが注目される。玉城デニー氏(衆・自由党・党幹事長)は「とぐち候補を支援した若者は選挙戦略の一つである会員制交流サイト(SNS)をフルに活用した、とぐちさんの政策と若い世代がマッチした」(2018/2/11)と述べておられる。辺野古新基地を作らせない闘いこそが、沖縄の経済、若者の生活と密接に結びついていることを明らかに明示すると同時に、それと密接不可分なものとしての希望の持てるニューディール政策が要請されていたことを、今回の選挙は明らかにしたとも言えよう。
沖縄の作家・目取真俊さんは、「沖縄防衛局は6月にも護岸による囲い込みを終え、埋め立て用土砂を投入すると打ち出している。台風シーズンを迎える前に護岸工事を進め、もう後戻りできない、という印象操作を行うことで、県知事選挙を勝利しようという魂胆だ。すでに名護市長選挙でその手法は成功している。それを許さないために、翁長知事は埋め立て承認の撤回に踏み切って、工事が進行している流れをいったん断ち切るべきだ。そうやって自らへの信頼を回復しなければ、県知事選挙での再選もおぼつかなくなる。撤回による裁判以前に、翁長知事が自滅しては話にならない。」(2018-02-07)と強調されている。
稲嶺さんは、市長選から一夜が明けた2/5、米海兵隊キャンプ・シュワブの工事用ゲート前に立ち、この間の闘いの結果、辺野古新基地建設は1%もすすんでいないことを強調し、「あきらめる必要は絶対ない」と発言され、闘いを激励されている。辺野古の基地はこの現地での闘いがある限り、そしてこの闘いと連帯する巨大な統一戦線がある限り、建設完工など不可能なのである。
(生駒 敬)

【出典】 アサート No.483 2018年2月

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