【投稿】“人権産業”が帝国主義を守る —アムネスティ・インターナショナルのプロパガンダ—

【投稿】 “人権産業”が帝国主義を守る
      —アムネスティ・インターナショナルのプロパガンダ—
                              福井 杉本達也 

 1 フェイクニュース(偽ニュース)
  トランプ米政権発足前後から、フェイクニュース(Fake News 偽ニュース)という言葉が飛びかっている。2017年2月6日のNHK「クローズアップ現代」でも『フェイクニュース特集“トランプの時代”真実はどこへ』「ウソ?真実? 混迷するアメリカ」との題で、「去年(2016年)のアメリカ大統領選挙では、「フェイクニュース」と呼ばれる偽の情報がインターネット上にあふれ、人々を惑わせ」大統領選にも影響を与えたとし、池上彰は「権力者というのは、何とか世論操作をしたいという思いがあって、例えば、事実を自分の都合のいいように解釈をちょっと変えることは、これまでやっていたんですけど、トランプ政権の場合はそもそも、うそを平然と言う」と解説、これを受けて司会者は、既存メディアが「正しい情報を出したとしても、それがフェイクニュースの拡散のスピードに全く追いつかない」と、あたかもインターネット企業に全ての責任があるようにて述べているが、事実とは異なる。米大統領選では、ほとんど全ての既成メディアはヒラリー側についたにもかかわらず、選挙戦ではトランプが勝利したのであり、既存メディアこそ、権力者の世論操作の道具であったが、今回は大統領選の世論工作に失敗したのである。SNSは既成メディアへの抵抗手段であることが明らかとなった。
 
 2 「人権団体」?アムネスティ・インターナショナルもフェイクニュースを垂れ流す
  2016年末にシリア最大の都市アレッポでの4年にもわたるアサド政権側と反体制側との戦闘が終結したが、2017年2月7日、各報道機関は「国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは7日、シリアの首都ダマスカス近郊の軍事刑務所で2011~15年に毎週絞首刑が執行されていたとする報告書を公表した。5千~1万3千人が処刑されたと推計。アサド政権が政策として組織的に実施したもので『人道に対する犯罪だ』と非難している。」(朝日:2017.2.7)とする記事を配信した。こうした国際的世論工作の支えに、国連安保理では米英仏主導で2月28日にシリアでの化学兵器使用に関与した個人・団体に制裁を科す決議案を採決したが、ロシアと中国は、この決議案が米国の濡れ衣であるとして拒否権を発動、葬り去られた。アレッポでの反体制派の足場がなくなり、イスラム国(IS)に占拠されていた古代遺跡のあるパルミラもシリア政府軍に再奪還されるなど、5年及ぶシリア内戦も収束の見通しが高まる中、アムネスティがアレッポ東部を占拠していた反体制派やISを批判せず、シリア政府と反政府派とで和平協議が行われるタイミングを狙って、一方的にアサド政権側の非を責める報告書を出したことは、中立性に欠けるどころか、内戦の再勃発を目論む、反人権団体と呼ぶにふさわしい行為である。
  桜井元は「問題の本質は、影響力のある国際人権団体が虚偽報告を発信し、マスコミがそれを無批判に掲載して拡散している点です。」と述べている。フェイクニュースそのものである。以下、桜井による「アムネスティの偏向」についてのブログ(在米の物理学者藤永茂HP『私の闇の奥』に掲載 2017.2.21~2.28)を基づきアムネスティの「反人権団体」としての実態をあぶり出したい。
 
 3 「国際人権団体」としての表の顔と「人権産業」としての裏の顔
  アムネスティ・インターナショナル日本支部は1970年に発足したが、1970年代は特に関西地区で活発であり、副理事長を努めた川久保公夫(当時大阪市立大学教授、後に大阪経済法科大学学長)らが中心となり、またインド生まれで大阪弁の巧みなタレント:イーデス・ハンソンを看板として1986年~1999年に日本支部長(現在は特別顧問)とした。また、岩波書店のリベラル系の雑誌『世界』には「アムネスティ通信」を連載しており、2017年2月号ではミャンマーのロヒンギャ問題を取り上げている。また、日本の死刑制度の廃止や袴田事件などを取り上げるなど国際人権団体と見なされている。
  これが「国際人権団体」としての表の顔であるとすれば、2月7日のシリアの記事は裏の顔である。報道では「アムネスティは15年12月からの1年間に刑務所の元看守や元収容者、元軍事法廷判事ら84人から聞き取り調査を実施。報告によると、ダマスカス北方にあるサイドナヤ軍事刑務所で毎週1、2回、20~50人が処刑されていた。多くが反体制デモの参加者、人権活動家、ジャーナリスト、医師、労働者、学生ら民間人だという。」とし、「収容者はイスラム法廷と軍事法廷で審理されるが、審理時間は1~3分間。有罪判決を受けると建物の地下に連行されて2~3時間殴られ、絞首刑にされる。」「アムネスティは『処刑が現在は行われていないと考える理由はない』と指摘。」(朝日:同上)しているというのであるが、「聞き取り調査」とあるように、「今回の報告書は、アムネスティのスタッフがシリア各地で実地に調査したものではなく、トルコ国内であるいは電話などを使ってのインタビューという方法をとり」、検証不可能な匿名の証人による曖昧な証言をもとに「被害者数を推定」、「匿名の証言者とのコンタクトを調整したのはすべて反政府側にくみする諸団体で、それ自体が偏向している」といえる。結果、記事に「5千~1万3千人」とあるように被害者推計も幅の大きい杜撰なものである。そもそもシリアの紛争は、国際法では許されない「主権国家の政権に対して外国が軍事力をもって干渉してその転覆を図る行為」(=侵略)であり、欧米・トルコ・サウジ・カタールなどが共同で軍事支援しているとものである。それらの行為を一切不問にして、アサド政権を一方的に批判する報告書は侵略に加担する以外の何物でもない。
 
 4 アムネスティはなぜ侵略戦争の代弁者になったのか
  アムネスティはNGO(Non-governmental Organization)=非政府組織であり、いかなる政府からも独立の立場にあるという建前であり、したがって公平性が担保されると考えられがちだが、実際には政府からの資金が流れている。イギリス国際開発省、欧州委員会、オランダ政府、米国政府、ノルウェー政府などから資金を受け取っており、「国内または世界の人権問題に関する理解を各国政府がより一層推進しようとしているかどうか、その熱意を測る」ための手段の一つとして、政府から資金を受け入れていると自己弁護している。また、資金提供者として世界的大富豪ジョージ・ソロスが率いるオープン・ソサエティ財団の名前があがっている。
  資金ばかりではなく人事的にも、政府とNGOとの間には回転ドアが健在で、例えばアムネスティ米国支部事務局長のスザンヌ・ノッセルは、米国国務省から直接引き抜かれてきた人物である。「ノッセルは、イラクでの方針を継続するよう民主党員に要請し、イラクで失敗すれば、“ベトナム後や、モガディシオ後の後遺症のようなもの”を解き放ちかねず、嘆かわしいことに“アメリカ大衆が武力の使用を強く留保する時代の到来を告げることになろう”と警告した。彼女は国務省幹部として、パレスチナ人に対する戦争犯罪で、イスラエルを告発したゴールドストーン報告書の信用を傷つけるべく働いた。国連人権理事会に出席する代表として、彼女は“我々のリストのトップは、イスラエルの擁護と、人権理事会でのイスラエルの権利の公正な扱い”だと語っていた。パレスチナ人については一言もない。彼女は、シリアやリビア等の国々における武装介入の拡大を提唱した。彼女は、イランが核濃縮計画を中止しないのであれば、対イラン軍事攻撃をすべきだと主張していた」のである(Chris Hedges 「人権ハイジャック」『マスコミに載らない海外記事』2013,5.14)。
  「人権擁護産業」という非政府組織には世界的な多国籍企業が資金面で支援をしており、軍産複合体の中枢との間のつながりを充実・発展させてきた。「慈善団体」という表向きの顔に隠れて、こうした団体の多くは、米国・NATOの戦争計画のためのPR機関として機能している。
  アムネスティはイラクやアフガニスタンやパキスタンやイエメンやガザの犠牲者は無視する。彼等はタリバンの残忍さは非難するが、アメリカの無人機が横行するアフガニスタンやパキスタンでの、アメリカが行なっている残虐行為は無視する。そしてこれらの嘘の発表を右から左に垂れ流す既成メディアは「フェイクニュース」とは言わないのであろうか。イラク侵略戦争はブッシュのイラクに大量破壊兵器があるという嘘から始まった。そして何百万人もの人々が殺害され続けているにもかかわらず、「人権擁護産業」はそのことに一言も触れようとはしない。その「人権」とはいったい誰の人権なのか。一握りの支配エリートのための「人権」ではないのか。欧米による「特権」ではないのか。米西部開拓では「インディアン」の人権などバッファローのように無視された。英国のインド支配でインド人の人権が無視されるように、アフリカの人々の人権は全くなく、奴隷として売り買いされたように、欧米が作った「人権擁護産業」アムネスティによって今もシリアの人権は無視され続けているのである。

【出典】 アサート No.472 2017年3月25日

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