【翻訳】更年期とアルツハイマー病

【翻訳】更年期とアルツハイマー病
(「Japan Times on April 20, 2018  By Lisa Masconi」より)

次の三分間に三人がアルツハイマー病を発症するであろう。そして、内二人が女性であろう。現在、5,700,000のアルツハイマー病患者が米国にいる。 2050年までに、おそらくその数は、14,000,000人になっているだろうし、そのうち男性より二倍が女性であろう。
しかし、未だ「女性の健康」の研究は、子供を生める健康さ(”reproductive fitness”)と乳癌に向かれたままである。 我々は、女性の将来の最も大切な局面に、もっと多く注目する必要がある、即ち、彼女たちの考えたり、思い出したり、想像したりする能力、そして頭脳に。
私が、この分野で最初に研究を始めたとき、アルツハイマー病は、悪い遺伝子や加齢、またはその両方による避けられない結果と考えられていた。今日、我々はアルツハイマー病は、複合原因によると理解している、即ち、年齢、遺伝や高血圧、それに日々の食事や運動を含む生活習慣/様式。今日、科学的に一致した見解として、アルツハイマー病は、必ずしも、年齢に伴う病気ではない、人々が40歳/50歳代になるとき、その頭脳で発病しうる。
我々が、ほんの今、知り始めていることは、何故に女性がより発症しやすいか、ということです。どんな要因が女性と男性では違うのか、とりわけ、我々が中年に達した時。
まずはっきりしていることは、繁殖力(“fertility”)でしょう。 女性は多様である。しかし、我々すべては、繁殖力の衰退と更年期/閉経 (”menopause”)の始まりを経験する。
更年期は、我々の子供を生む能力を遠ざける。寝汗、ほてり/のぼせ、子宮ではなく広く脳に起因する憂鬱/意気消沈の症状。これらはすべてエストロゲンの退潮 (“an ebb in estrogen”) によって引き起こされる。
私自身の労作を含む最近の研究では、エストロゲンは、女性の脳を加齢から守る働きがあることを示している。それは、神経の活動を刺激して、アルツハイマー病の発症に関係する斑点(“plaques”)の生成を防ぐことに役立ちうる。エストロゲンのレベルが下がると、女性の脳はより傷つきやすく、弱くなる。(“becomes vulnerable”)
この事実をはっきりさせるため、私の同僚や私は、健康的な中年の女性にPET**と呼ばれる脳の撮影技術を用いました。これにより我々は、神経の活動とアルツハイマー病の斑点を測定できました。その結果、更年期/閉経した女性は、そうでない女性に比べて、脳の働きは、活発さが低く、アルツハイマー症の斑点も多いことがわかりました。
さらに驚いたことには、このことは、閉経周辺期―更年期の兆しを経験し始めた時期の女性にも見られたことです。そして両グループの脳は、同年齢の健康的男性に比べてはっきりと違っていました。

よいニュースもあります。女性が40-50代になれば、PET診断によってアルツハイマー症
の早期のサイン/徴候を見つける機会が来る。そして、そのリスクを減らす対策が取れる。
ホルモン代用療法—女性に主に補足的にエストロゲンを与える—は、もし更年期/閉経前に与えられれば、症状を軽減できるという例証が増えている。我々は、ホルモン療法の効用と安全性を検証する研究をもっと多く必要としている。そしてこの療法は、いくつかの事例では、心臓病、血栓や乳癌のリスクを高めることにつながってきている。
恐らく、続く10年以内には、中年の女性にとっては、今日、乳房X線写真検診を受けているように、予防検診を受けて、アルツハイマー病への対処を行うことが規範となっていることでしょう。 同時に、食事療法が、女性における更年期(月経閉止期)の影響を軽減できることや、アルツハイマー症のリスクを最小限に食い止めうるであろうという研究も示されている。
多くの食物が、自然に体内で女性ホルモン(“Estrogen”)を産生するのに役立っている。即ち大豆、亜麻の種(“flax seeds”)、ヒヨコ豆(“chickpeas”)、ニンニク、杏(“apricots”)のような果物。そして特に女性は、抗酸化の働きがある栄養素を必要とする、即ち、ビタミンCとEでこれらはベリー類(strawberry, blueberry, blackberry, cranberry etc.),柑橘類、アーモンド、加工されていない、生のカカオ(“raw cacao”)、ブラジルナッツ(”Brazil nuts”)や多くの緑色野菜の葉で発見されている。
これらは、女性や医師にとっては第一歩である。しかし、我々は痴呆、認知症(“dementia”)を引き起こして、症状を悪化させるものが何であるかを知れば知るほどに、女性の脳について、関心やよりよい手当てが必要であることがよりはっきりしてくる。 女性の健康への広範囲な評価は、高齢(老齢)化する脳とそれを守ることにおけるエストロゲンの働きの完全なる探求や、特に女性におけるアルツハイマー症状の防止のための手立ての徹底した探求を求めている。

多くのものごと、要因が、一人の女性を比類なき、すばらしいものとしていることは、気付き、思い起こすまでもないことである。 我々(医師や医療研究者)は、アルツハイマー症のリスクがこれら女性を比類なきすばらしさとしているものごと、要因の一つではないということをはっきりさせまたその手助けのために働き日夜研究している。

* Lisa Mosconi :
is the associate director of the Alzheimer’s Prevention Clinic at Weill Cornell Medical Collage, and the author of “ Brain Food :
[訳:芋森]

【出典】 アサート No.486 2018年5月

 

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