【投稿】「もんじゅ」廃炉の可能性と核燃料サイクルの行方

【投稿】「もんじゅ」廃炉の可能性と核燃料サイクルの行方
                            福井 杉本達也

1 「もんじゅ」運営主体の「原子力機構」に「資質なし」勧告
 11月13日、原子力規制委員会は高速増殖炉「もんじゅ」(福井県)を運営する「日本原子力研究開発機構」に「資質なし」として運営主体を代えるよう所管する文部科学省に勧告した。これは国策の核燃料サイクル政策に大きな影響を与える可能性がある。文科省は、海外の原子力企業や電力会社などとの提携も含めて「新組織」の検討を始めるが、技術面や能力面で選択肢は極めて限られる。報告期限までに示せなければ、もんじゅは廃炉を含めた抜本的見直しを迫られる。

2 文科省は一旦、規制委勧告の受け取りを拒否
 産経新聞の報道では「『もんじゅ』(福井県敦賀市)について、原子力規制委員会は、所管する馳浩文部科学相に対し、13日に直接面会して変更主体を求める勧告文を渡すことを打診したが、文科相側が拒否した…代わりに文科省の局長が受け取る。…規制庁が『翌週でも時間があるときに』と面会を要請したが、『研究開発局長がそちらに出向く』と回答し、直接の受け取りを拒否した。副大臣や政務官との面会も断られたという」(産経:2015.11.12)。その後、馳文科相が田中委員長から受け取ることとなったが、この期に及んでの文科省の受取り拒否の抵抗姿勢は、その体質を如実に示している。

3 核燃料サイクルに12兆円
 東京新聞によると、核燃料サイクルの費用は、高速炉開発が国家プロジェクトになった1966年度から2015年度まで、判明しただけで計約12兆22百億円に上った。廃炉費用は少なくとも1千億円は必要になるとみられるが、冷却材に危険なナトリウムを大量に使っており、きちんと見積もられていない。核燃サイクルのコストは、電気事業連合会(電事連)が10年以上前の2003年、各施設の建設、操業(40年)、解体、最終処分までの総額を約19兆円との試算をまとめていたと報じている(東京新聞:2015.11.17)。冷却材としてのナトリウムを固化させないように「もんじゅ」を維持管理するだけで1日に5,000万円、年間200億円もかかっている。

4 核燃料サイクルにこだわるのは核武装のため
 なぜ、政府は「もんじゅ」の運転と核燃料サイクルの維持にこだわるのか。高速増殖炉は、プルトニウム239とウラン238を燃やし、さらにウラン238をプルトニウム239に転換させるというものだ。「燃やせば燃やすほど燃料が増える」「夢の原子炉」という、キャッチフレーズが使われた。しかし、計算ではプルトニウムの倍増には50年以上かかる。それでは「もんじゅ」の建て替えが必要となる。「もんじゅ」の真の目的は軍事用プルトニウムの生産にある。そのプルトニウムは「もんじゅ」の炉心燃料にあるのではなく、炉心を取り巻く核分裂しないウラン238を主体とするブランケットと呼ばれる燃料集合体の部分にある。ウラン238が高速中性子を吸収し核分裂性のプルトニウム239に変わる。その燃料集合体を毎年半数取り出せば98%のプルトニウムを62kg生産することができる(原発でもプルトニウムを生産できるが、プルトニウム239の割合は58%程度であり、プルトニウム240などの不純物を多く含み、不完全爆発になったり、爆弾が巨大化してミサイルに搭載できないなど実戦には不向きである:参照:槌田敦『隠して核武装する日本』)。ところが、このことをマスコミも社民党・共産党も原水禁も取り上げない。日本に長年核武装の構想があるというのは3.11後もタブー視されたままである。日本の脱原発運動の根本的弱点はプルトニウムの危険性を指摘しながら、既に日本が核武装の道を着々と歩んでいることを頑として認めない(何らかの脅しにより認められない)ことにある。もちろん日本の宇宙開発も核弾頭の運搬手段としてのミサイルの開発にあり、H-2A・Bロケットの打ち上げ成功を手放しで喜ぶべきものでなない。2010年、小惑星の探査を目的として打ち上げられた「はやぶさ」が地球の大気圏に再突入し、小惑星「イトカワ」の微粒子を持ち帰ったことが大きな話題となったが、「イトカワ」とは戦時中、戦闘機「隼」を設計し、戦後はいち早くペンシルロケットなどミサイルの開発に着手した軍事技術研究の第一人者である糸川英夫から命名されたものであり、軍事技術と宇宙開発は切っても切れない関係である。

5 なぜ規制委は勧告を出したか―米国の強い要求
 10月に来日したジョン・ホルドレン米大統領補佐官(科学技術担当)は、「六ヶ所再処理工場の運転開始計画に関し、『日本にはすでに相当量のプルトニウムの備蓄があり、これ以上増えないことが望ましい』と述べ…『分離済みプルトニウムは核兵器に使うことができ、我々の基本的考え方は世界における再処理は多いよりは少ない方が良いというものだ』との考えを強調」したと報道されている(朝日:2015.10.12)。核燃料サイクルの放棄を最後の最後まで渋る文科省に最後通牒を出せるのは規制委の一存では不可能である。背後に米国の強い意向が働いていることは疑いがない。2018年7月に日米原子力協定の改定も迫っている。こうした中で、日本原燃は核燃料サイクルの中核である六ヶ所村の再処理工場の完成時期を2018年上期まで延期すると22回目の延期を発表した(日経:2015.11.18)。
 しかし、こうした米国の動きに対し、初代原子力調整官、初代外務省原子力課長(1977-82年)として米カーター政権からレーガン政権までの間・日米原子力交渉を担った金子熊夫は「日本は、1970~80年代に必死に対米交渉をした結果、非核兵器国ながら再処理、濃縮の権利を獲得した、いわば既得権者、特権階級である。」「1988年に発効した新日米原子力協定(2018年まで30年間有効)では、日本は再処理、濃縮(20%以下)、第三国移転について「長期包括的承認」を与えられることになった。それ以前の「ケースバイケースでの承認」ではなく、一定の条件下で一括して事前承認するという方式を確立した…このような形で再処理、プルトニウム利用などを行うことができる権利は、核兵器国(米露英仏中の5カ国)を除くと、日本とユーラトム(欧州原子力共同体)加盟のドイツ、イタリア等だけに認められた非常に貴重な権利である。」と述べ(『WEDGE』 2014,4,11)米軍産複合体の後押しもありやっと確保した独自核武装の『権利』を何が何でも失うまいと躍起である。これが、これまで「もんじゅ」の20年間もの長期間の運転停止、六ヶ所村の再処理工場の度重なる操業延期にもかかわらず核燃料サイクルを「廃止」しない理由である。

6 「もんじゅ」廃炉をどうするか―伴原子力資料情報室代表:コメントを訂正
「もんじゅ」の運営に対する規制委の勧告にあたり、中日新聞紙上で原子力資料情報室の伴英幸共同代表は、「大半を預けている英仏に引き渡すか、ウランと混ぜて通常の軽水炉で燃やす「プルサーマル発電」で消費するかの選択肢を示す。」(中日:2015.11.5)とコメントした。プルサーマル発電で消費するということは、現在の九州電力・川内1,2号の再稼働だけでは全く不十分であり、数十機を再稼働しなければならなくなる。伴氏は翌日「これだとプルトニウムをプルサーマルで処分することを推奨していると読める。しかし、これは私の本意ではない。本意を端的にいうと、プルトニウムを放射性廃棄物として処理・処分するべきとするのが伴の考えである。国内には高レベル放射性廃液が残っているので、これと混合することで放射性廃棄物となる。政策的方法としてこれを主張したい。」(伴代表コメント訂正:2015.11.6 CNICトピックス)。と訂正した。
 英国の20.7tと仏の16.3tを引き渡すのは当然として、問題は国内の10.8tをどうするか及び「もんじゅ」内に残る未処理のブランケット内の98%の超軍事用プルトニウム62kg(茨城県の高速増殖炉実験炉「常陽」のブランケットには22kg)をどうするかである。「もんじゅ」は元々文科省(旧科学技術庁)所管であり、独自核武装派の牙城である。一方、六ヶ所村の核燃料再処理施設は民間運営の日本原燃(株)という形態をとり、対米従属を国是と考える経産省所管である。六ヶ所村の再処理施設は隣接の三沢基地の米軍の監視下にあると考えてよい。原子力機構が運営主体であった茨城県東海村の再処理工場は2007年に閉鎖されるまで約7トンのプルトニウムを生産していたが、米軍の監視の目が行き届かないとして強引に廃止させられた。「もんじゅ」(「常陽」を含む)の虎の子のプルトニウムを米軍監視下に置くのか、独自武装派の支配下で敦賀半島先端の「もんじゅ」敷地内に止め置くのか、どのような形態で保管するのか。「原発ゼロ」では日本国内でのプルトニウムの消費=「平和利用」という口実を奪い、「独自核武装」疑惑を打ち消せなくなる。発電のために原発の再稼働が必要なのではない。核武装構想を打ち消すために再稼働とMOX燃料による純度の低い原発級プルトニウムの消費が求められているのである。12月5日に「もんじゅを廃炉に!全国集会」が「高浜原発3,4号機再稼働反対集会」と抱き合わせで福井市において開催される。伴代表と鈴木達治郎長崎大教授との対談も予定されている。高浜3,4号機においては、MOX燃料の装荷も予定される。今後、「もんじゅ」廃炉をめぐって核武装派ばかりでなく、脱原発派もその真価を問われることとなる。 

【出典】 アサート No.456 2015年11月28日

カテゴリー: 原発, 杉本執筆 パーマリンク