【コラム】ひとりごと—介護保険制度 27年4月改正の意味— 

【コラム】ひとりごと—介護保険制度 27年4月改正の意味— 

○6月18日、来年4月からの介護保険制度の改正が国会で決まった。主な内容は、所得のある高齢者(年金280万円以上)の介護保険負担を現行1割から2割に値上げすることや、特養入所者の食事負担などの軽減措置について、資産割り(預金1000万円以上保有者)を導入し、廃止するなど、負担増と給付削減が主な内容と言える。○また、来年は3年に一度の「高齢者福祉計画」の改定期にあたり、当然介護保険料も改定され、値上がりするのは確実であろう。○消費税増税分を社会福祉財源に充てるという「言い訳」は、今回の改革では、何も見えてこない。(住民税非課税世帯の保険料について、軽減措置を講ずるというくらい)。○さらに、大きな改定は、要支援認定者へのサービスを、介護保険制度から切り離し、市町村事業とするというもの。介護保険制度導入時は、5段階であった介護認定は、6年前から要支援1,2が追加され、7段階になった。今度は、介護予防中心の2段階について介護保険制度ではない、市町村の独自事業とする。おそらく市町村事業と言っても、直営で行うわけではない。福祉団体やNPOに委託ということになるが、現行のサービスが提供できるか、何の保証はない。○高齢化の進展による医療・福祉への支出が増え続けており、抜本的な対応が求められていることは論を待たないが、今回の改正は「給付の抑制」と、「取れるところから取る負担の増」を目的にしている点のみと言うのでは、評価できる内容とはとても言えない。○かつて介護保険の導入は、寝たきりゼロを目標に、「社会的入院」を無くして「地域福祉」の流れを作ろうとした制度である。○一方、当初は様子見だった医療機関も、介護事業に乗り出し、病院と介護施設を行き来させ、収益の増加のみを追求し始めた。益々、高齢者の医療費と介護費用が増大することとなっている。○グループホームなどへの訪問医療も、これまで同じ施設内で一度に何人診ようが、高い医療点数だったが、今年から、同一施設内での診療は点数が引下げられ、「介護施設」と医療機関のぼろ儲けは解消された。「貧困ビジネス」と組む医療機関への抑制策だが、確かに、一部だが「改善」は進められているようにも見える。○筆者にも、制度の抜本改正のプログラムはまだ描けていないが、国の制度は制度として、各地方自治体が独自の介護予防策や実践を積極的に展開し、給付の抑制と負担増だけではない高齢者・介護政策を現場から提案できるかどうかが問われているようにも思える。○人口減少と高齢化の進展は、もはや避けては通れないばかりか、正面から取り組むべき課題である。元気な高齢者の活躍の場を作ることや、介護保険利用を遅らせ、負担の少ない介護予防の実践で、介護保険も含めた高齢者関連予算の伸びを抑える政策が必要だろう。○一方、依然介護職場の労働者の労働環境は厳しい。ヘルパー単価にしろ、夜勤等も含めた施設勤務者の労働条件も、改善が進んでいるとは言い難い。多くの職場では、職員の入れ替わりが頻繁だと言われている。疲弊した介護現場では、適切な介護が果たして提供できるのか。○介護と医療は、成長分野と言われるが、資本にとって金儲けができるという意味での「成長分野」なのか。○今度の改正によっては、介護保険制度の根本的な展望は全く見えてこないのである。(佐野)

 【出典】 アサート No.439 2014年6月28日

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