【投稿】維新退場の序曲–大阪市長選挙– 

【投稿】維新退場の序曲–大阪市長選挙– 

<盛り上がらない選挙>
 3月9日大阪市長選挙が告示された。大阪都構想の実現をめざす法定協議会において、区割り案を巡り、維新を除く政党が反対の立場を取ったことで、事実上来年4月までの住民投票実施が不可能になったことを受けて、橋下市長が「信を問う」と辞職したことが発端である。
 大阪市会は、これを承認せず、橋下市長は自動失職となり、23日投票の市長選挙が実施されることとなった。自民・公明・民主・共産の各党は、任期途中の辞任・市長選挙には大義はないとして、対抗馬の擁立を見送ったため、実際に立候補したのは、無所属候補3人を加えた4名となった。当初、対抗馬の擁立を検討していた共産党系団体も、大阪府委員会の決定を受け立候補を見送っている。
 事前の世論調査でも、任期途中の辞任・選挙には「賛成しない」意見が6割を超え、維新内部からも、石原代表が「選挙は意味がない」と発言する始末であった。それでも、強行するのが「橋下流」なのであろうか。選挙で当選し、民意は都構想を支持している、として法定協議会の委員を入れ替え、大阪都構想を強力に推進すると橋下は唱えているが、法定協議会がその名の通り、法律に基づくものである限り、現状の議会構成を反映しなければならないのであり、新しい法定協議会の構成比は、これまでと変わらないし、公明との蜜月関係が終焉した今、都構想の実現そのものが、もはや不可能となったことは明白な事実として受け止めるべきであろう。

<市議会は、目玉施策を減額>
 市長不在という中でも、3月は次年度予算審議の重要な時期であり、大阪市会でも市長提案の予算案の審議が進められている。その中では、自民・民主・公明と共に共産も加えた橋下野党が一致して、橋下色の強い事業予算について、相次いで修正を行い、選挙で当選しようとも、議会では橋下維新が、何もできない状況が形成されつつある。
 3月14日には民間公募校長の研修関連費用や、大阪都構想の推進経費6億6千万円を、維新を除く全会派の賛成多数で減額を決めている。バス・地下鉄の民営化条例案も継続審議が決まった。3月議会を終えて、「市長選を「黙殺」で共闘した野党は、市長選後を見据え「維新包囲網」に自信を見せている(毎日新聞)」という。

<投票率は、過去最低予測>
 盛り上がらない選挙状況を反映して、期日前投票も前回市長選挙より7割も低迷している。告示から1週間(3月14日まで)の投票者数は、16,236人。前回選挙の35%に止まっている。他に候補が3人立候補しているが、ポスター掲示も少なく、選挙報道も告示前後に解説記事が盛んに出ただけで、宣伝カーを見ることも稀である。このまま推移すれば、歴史的投票率になる可能性が出てきた。前回の投票率は、60.92%。過去最低は、平成7年の28.45%だが、この最低数字をさらに下回る可能性も出てきた。20%を下回るようなら、まさに大義なき選挙への市民の無言の抵抗とも言える。まさに「橋下NO」の声であろう。
 橋下はタウンミーティングを開催して、選挙宣伝に努めているようだが、選挙本番中とあって報道はほとんどされていない。
 一方、4党が一致して候補者擁立を見送ったことから、投票行動との関係でいろいろな議論がある。投票そのものを拒否する宣伝はどの政党も行っていないが、結果としての低投票率を持って、橋下包囲網をさらに強めたいとの意図は明らかだ。せめて、白票投票で抗議の意思を示すべきと私は考えているのだが。

<崩壊を前に、混乱の維新議員>
 大阪府議会では、維新が過半数を失っている。泉北高速鉄道を所有する大阪都市開発(第3セクター)の株売却をめぐる問題で4人の府議が造反、維新は除名処分とした。さらに、もう1名の維新派府議が離党の意向を表明し、維新退潮が明白になる中、前回の統一地方選挙で、当選した自民党離党組や「参入組」を中心に来年の統一地方選挙が近づくにつれ、この流れが一層強まると予想される。一方、自民党は、全選挙区での候補者確保に向けて、公募を行っており、離党組には時間が残されていない。これら議員が、市長選挙に力が入っていないことも当然であろう。
 
<他の首帳選挙も様子見か>
 通常選挙では、大阪府内でいくつかの首長選挙が、この春に予定されている。しかし、維新派は、未だ態度を明確にしていない。維新退潮を織り込んで、かつて常勝であった大阪府内の首長選挙での候補者選びも進んでいないようだ。
 
<統一地方選挙で終止符を撃つために>
 選挙結果は投票日に明らかになる。おそらく、橋下再選ということになる。投票率や得票数などによって、維新退潮の新たな状況が明白になるだろうが、どのような状況が生まれるかを予測することはできない。厚顔無恥の橋下なのだから、当選という事実そのもので、居直りを決め込むのは予想の範囲である。しかし、待っているのは、野党4党がまとまって橋下維新に対峙する大阪市会である。
 しかし、さらに見据えるならば、注目すべきは来年の統一地方選挙であろう。維新の退潮・分解傾向は当然としても、その議席を自民党に明け渡すわけにはいかない。安倍政権の下、政権与党の有利な状況下ではあるが、原発推進、TPPでの裏切り、さらにアベノミクスの停滞から破綻という状況を革新的民主的勢力の前進を勝ち取る必要がある。
 都構想に代わる自治体改革の政策をしっかりと打ち立て、選挙を準備していく必要があると思われる。維新がガタガタにした大阪の地方自治を再建する大きな戦略的展望を持った再生論議が必要になると思われる。(2014-03-16佐野) 

 【出典】 アサート No.436 2014年3月22日

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