【本の紹介】
『ドイツ左翼党との交流記録』
(新社会党訪独団(有志)発行、2013/3/10発行、頒価300円)
『ドイツ左翼党の挑戦』
(木戸衛一著、せせらぎ出版、2013/4/1発行、700円+税)
友人より上記の二冊の本の寄贈を受け、その内容が非常に多くの示唆と刺激に富むものと感じられましたので、以下に紹介いたします。2007年6月16日にベルリンで誕生した新党「左翼党」(Die Linke)の前史と現在に至る詳細な報告となっている。
ドイツ左翼党の挑戦ドイツ左翼党が様々な試練の中で形成してきた党の性格>:スターリン主義との決別=権威主義的なイデオロギー的、政治的、組織的な原則との決別。女性が少なくとも半分になるクォータ制、複数主義政党、潮流、様々な作業グループ、テーマ別のグループの存在、基本路線としての民主的な社会主義、といった党の性格が浮き彫りにされている。これらは日本においてもあり得べき、獲得すべき姿であり、全世界左翼の、左翼に限らずあらゆる民主主義的・市民的諸活動、諸組織の共通の課題だと改めて感じさせられるものである。
<潮流というものの存在>:とりわけ注目されるのは、独自の規約をもち、ネット上で意見を公表し、同時に他の潮流に入っていても構成員になれるし、左翼党員でなくても入れる、250人以上の潮流であれば党大会の代議員も、潮流のための活動の予算の割り当てもある、そうした潮流の存在が認められ、評価されていることである。
こうした実態は、それ以前のバラバラでいがみ合って、潮流といったものの存在それ自体が認められず、「反党分子」や「分派主義」などといったレッテル貼り、唯我独尊主義と打撃主義とセクト主義が横行する日本では考えられないことであり、大いにこの経験を取り入れ、生かすべきであろうと思われるが、そのようなかすかな素地さえない日本の現状との違いに当惑させられる。
<社会主義とは一体何なのか>:そしてこの左翼党が提起している重要な問題として、社会主義とは一体何なのかという問題があり、論議が積み重ねられている状況が読み取れることである。単なる所有権の社会化ではなく、実際に参加し、決定できる社会化、経済から環境に至るあらゆる分野における民主主義と基本的人権の徹底こそが社会主義であるという、そうした基本原則こそが、横行するグローバリズムと新自由主義に対置すべきオルタナティヴとしての、社会主義であるという問題提起である。
その他、ベーシックインカムについての論争、国会議員が執行部の過半数を超えてはいけないという原則、38の欧州の左翼政党が結集する「欧州左翼」、等々、多くの示唆と教訓、問題提起に富む文書である。
(生駒 敬)
【出典】 アサート No.429 2013年8月24日