【コラム】ひとりごと –衰退する労働組合運動から、まだなお芽生える可能性–
■現在の労働組合を組織形態的に見ると、企業内組合と地域ユニオン(合同労組)に大別される。
一部、産別組合(海員組合)や職種別組合(全建総連)もあるが、極めて日本では特異な存在である。そして企業内組合の中でも大企業の基にあるビッグユニオンの多くは、連合傘下にある。
■ここで連合が民主党支持であることは、周知のことであるが、小生には何故、連合が民主党支持なのか、実際のところ、よくわからない。連合幹部は、働く者のための制度・政策を実現するには、連合推薦の候補者を選出し、国政に反映すべきだからというのであるが、では連合が国政に反映すべき制度・政策とは何かを体系的に示した大綱のようなものが見たことがない。確かに運動方針上は、一定の政策事項も記載されているが、例えば参議院選挙の争点であった原発問題や、消費税問題などで、統一した見解を示していないのではないか。もちろん、これには連合内部・民主党との関係で言うに言われぬ事情もあってのことで、多少、意地悪な指摘だとしても、少なくとも労働者派遣法や解雇制限の規制強化、労働基準法の徹底遵守(監督官の増員)、公務員制度改悪の阻止等々、労働政策についての政策協定に基く民主党支持であるべきであり、それなら組合員にも説得力があるだろう。
■さて中小企業における労働組合あるいは労使関係は、労使協調的な組合もあれば、常に緊張関係にある労働組合もある。ただ極めて抽象的ではあるが、使用者(経営者)も発注元からの単価の切下げ、切迫した納品期限や値切り等で、極めて厳しい経営環境にあり、それだけにそこに働く中小企業労働者も厳しい労働条件下にあって、労使関係もシビアになりがちであることが推察される。
また、中小企業の場合、ワンマン経営体質が強い傾向にあって、よく不当労働行為救済事件でも中小企業に多いことに見られるように、中小企業の使用者(経営者)にとって、労働組合の存在自体が、経営上の桎梏となって、弾圧的あるいは懐柔的な対応に終始したり、ましてや新規設立の労働組合ともなれば組合潰しに奔走することも、よく見られることである。
■いずれにしても、日本の労働組合の組織率は、官公労を含めても20%を割る低率で、それに企業内組合が中心となると、欧米に比べても社会的規制力は弱いと言わざるを得ない。「社会的規制力」とは、例えば「最低賃金の引上げ」だとか、「解雇規制の厳格化」だとか、「労働時間(残業時間含む)の規制」だとか、労働者の権利保護の政策的圧力のことである。
■最近、熊澤誠の「労働組合運動となにか」(岩波書店)を読んだが、日本の企業別組合中心型では社会的規制力が、どうしても弱い側面があるが、それでも、それを打開するには、やはり労働組合運動でしかないことを唱えている。そのためのプロセスとして、職種別・産業別労働条件の標準化政策を打ち出すことを提起している。それと合わせて、非正規雇用の受け皿ともなっている地域ユニオンにも着目して、地域から職種別・産別連携を模索すべきだと言っている。
■地域ユニオンの実際の活動状況は、その多くが個別労使紛争に取り組み、その個別問題が終焉すれば、当事者も地域ユニオンから離れることが多く、なかなか組織拡大にはつながらず、これが地域ユニオンにおける現状の限界性だと言える。
■その意味で小生も、この提案に賛成で、他の地域ユニオンとも交流を深めながら、企業別・個別ユニオンの枠を乗り越えて、職種別・産別からの制度・政策要求から取り組みを拡大してはどうかと思う。既に管理職ユニオン関西は、内部の熾烈な論争の後、その運動方針で取り組みを進めようとしている。
■今日、労働組合運動は、その存在意義自体、問われるほど衰退しているが、しかし、それでも労働者の地位・労働条件の向上を図るのは、その自身の主体-労働組合でしかない。この衰退と閉塞感の中、なんとか打開するヒントはないものだろうか。その問題意識から書いた駄文であることをお許し願いたい。(民)
【出典】 アサート No.429 2013年8月24日