【投稿】福島原発事故とトモダチ作戦の狙いから見る日本の核の闇

【投稿】福島原発事故とトモダチ作戦の狙いから見る日本の核の闇
福井 杉本達也

1 トモダチ作戦の狙い
① 横須賀を逃げだしたジョージ・ワシントン
3月13日、米国第7艦隊はトモダチ作戦に参加していた原子力空母ロナルド・レーガンと艦載機が福島県沖で福島第一原発の爆発で被曝したことに震えあがり、三沢沖に避難させるとともに、首都圏も危険だとして、修理中であった空母ジョージ・ワシントンを3月21日に急遽、横須賀を脱出させた。ジョージ・ワシントンは放射能を逃れて佐世保に一時寄港して修理を行っている。
② 在日米軍避難に備えたロナルド・レーガン
4月6日に米軍は一部岩手・宮城県気仙沼で活動を行っただけでトモダチ作戦を終了した。3月16日のオバマ大統領の「原子力の専門家派遣や中長期的な復興を含めあらゆる支援を行う」との言葉は空しく響く。米軍の放射能管理特殊部隊は横田基地に到着したものの福島に派遣する気はなさそうだ。米軍は原発から50マイルを飛行禁止区域とするとともに3月13日よりグアムから無人偵察機グローバルホークを連日原発上空に飛ばし放射能の測定を行い、さらには米国市民に避難勧告を出すなど、「米軍の支援要請を受け付けない日本政府に業を煮やして独自に対策をとった」と報道されているが、内実は、福島第一原発のドミノ倒しの状況を東電も日本政府も把握できない中、首都圏にも危機が及ぶ重大事故であるとの認識で、家族を含む5万人の本土部隊の撤退に備えたものである。今回の福島原発の危機をめぐる、単純な事実は「自衛隊は日本という社会・国を守るために、個人の犠牲が想定される時でも任務のために動く組織であること。そして米国は自己の利益を考え、危機に必ずしも前線に出るとは限らない」(孫崎享)ということである。「日米同盟を守るため」・日本のために米国軍人や市民を犠牲にはしないという米国の固い決意である。しかし、このことで米国を非難するものではない。国家として他国の為に自国民を危険に曝すようなことはしないのは当然のことである。
③ 旧式欠陥炉1号機
その後、少し落ち着きを取り戻した米側は、「格納容器から水が漏れているのでは?」、「初動での海水注入が遅かった」次は逆に「海水注入は原子炉の腐食が進むので危険、真水を用意するから真水の注入を」と様々な指示を出してきた。1号機はプラント全体を米ジェネラル・エレクトリック社が請け負い「GEマーク1」と呼ばれる。同型の炉は福島第一原発では2~5号機が東芝の技術を入れて建設され、米国でも24基も稼動しており、稼働から40年以上を経過した炉が多く存在している。米国がとりわけ「1号機」に関して様々なことを要求してくる背景には、一見すると日本側への疑心暗鬼があるように見えるが、実際は自らが抱える「老朽原発の危険性」を危惧している。
④ 3号機MOX燃料の制御
もう1つ米側が注目するのが3号機である。3号機だけが「プルサーマル」=使用済み核燃料から抽出したプルトニウムとウランを混合した「MOX燃料」を使用している。プルトニウムは核兵器の材料となる。米国は核燃料サイクルに消極的ではあるが、再処理したプルトニウムを大量に日本に保管させれば核拡散につながる。そこで、余分なプルトニウムをウランと一緒に商業炉で燃やしてしまおうというわけであるが、MOX燃料が一部追加されることにより炉心の温度が高くなり制御しにくくなる。炉心の一部が溶融した3号機の挙動は最大の関心事の1つである。
⑤ 使用済み核燃料が詰まる4号機
使用済みの燃料棒は「崩壊熱を発するために最低5年はプールで冷却」するというのが「ウェット貯蔵」である。ところが電源供給がストップして貯蔵プールが沸騰し、燃料棒が露出して燃料棒の一部が溶融するというのは、米国にとり大きな恐怖である。米国は原則使用済み核燃料の再処理をせず、プールで貯蔵する方法を取っている。 しかも、4号機は定期検査中のため3ヶ月しか冷却していない「熱い」燃料棒548本と,使用済核燃料が増え続けているため、核燃料を収める棚の幅を狭める「リラッキン」や空きスペースに棚を新設して貯蔵していた783本・合計1331本もの核燃料棒が詰まっている。制御棒もなく間隔を保つことで核分裂の進行を防いでいるだけの冷却プ-ルが突如原子炉として“起動”しだすことは、同様に使用済核燃料を大量に保管する米側にとっても悪夢である(参考:冷泉彰彦:2011.4.1)。

2 原子力・安全保安院と原子力安全委員会の別々に動く2つの原子力ムラ
チェルノブイリ級のレベル7の事故として評価するに当たり、原子力・安全保安院は37テラベクレルの放射性物質が漏れ出たとし、原子力安全委員会は63テラベクレルの試算をした。どちらも膨大な量ではあるが、どうして2つの数字が出てくるのか。原子力・安全保安院は経済産業省の組織であり、電力業界を「規制する」、つまり電力業界とべったりの組織である。一方、原子力安全委員会は建前上、原子力保安の二重チェックの組織ということになっているが、1978年に旧科学技術庁の外郭機関である原子力委員会(現在は内閣府の審議会)から分離したものであり、事実上の文部科学省配下の組織である。したがって、国家的原発危機に及んでも原子力安全委員会は電力業界の商業炉の事故は経済産業省の責任であるとばかりにある程度「客観的に」=つまり無責任に発言している。それは3月28日の「どのような形ですみやかに実施できるかについて、安全委ではそれだけの知識を持ち合わせていない。」といった斑目春樹委員長の発言を見れば明らかであり、4月12日に「3月23日の時点でレベル7の危険性を認識していたが『評価は保安院』と見直しを求めなかった」ことを明かした代谷誠二委員の発言からも受け取れる。放射能拡散のシミュレーション「SPEEDI」の公開を3月23日まで遅らせたことも委員会の性格を表している。 1956年に発足した原子力委員会の委員長は読売新聞社主の正力松太郎であり、原発を初めて日本に導入している。

3 「地球温暖化対策論者」東大前総長小宮山宏
福島原発がこれだけ膨大な放射能被害を日本中・全世界にまき散らしているにもかかわらず、東電の社外監査役でもあり原子力ムラの総本山東大前総長の小宮山宏は「この夏のことを考えたら、日本だけ経済的なハンディキャップを負うことは耐えられないでしょう。このまま原子力なし、というのは現状では難しい」(朝日:2011.4.1)とぬけぬけと答えている。小宮山は『低炭素社会』(幻冬舎新書)の中で「暖房や給湯といった低い温度の熱を得るのに火を燃やすこと」は無駄であり、「エコキュート」が効率的だという。また、灯油ストーブよりもエアコンはエネルギー効率が良いと説く。地球温暖化対策には一見もっとものようであるが、電気エネルギーというのは電気自動車のモーターのような運動エネルギーにも、IHヒーターや電気温水器のような熱エネルギーにも、また光エネルギーにも転換できる誠に使い勝手の良いエネルギーである。しかし、熱エネルギーから電気エネルギーに転換したものを再び熱エネルギーとして使うのはエネルギー効率としては非常に悪くなる。さらには電気自動車や太陽光発電をも勧める。電気自動車は夜間電力を使うことを前提としている。夜間電力とはベース電源としての原発を前提とする。太陽光発電も設置すればさらに電気をより多く使おうとする動機が生まれる。夜間の電力増は避けられない。「地球温暖化対策」と称して、家庭の電力消費量を増やし、原発を推進することにこそその目的がある。石油やガスといった多用なエネルギーをやめさせ電気を使うことを奨励し、東京湾岸の火力発電を無理矢理廃止し、福島・柏崎刈羽の原発による電力供給に集中させた結果が今日の首都圏の電力不足がある。

4 核兵器と核燃料サイクル
核エネルギーの商業的利用と軍事的利用はメダルの裏表である。「日米原子力協定」では米国が提供した濃縮ウラン燃料は、その使用済核燃料を再処理するに当たり米国の事前同意を必要とすると定めている。核兵器の原料となるプルトニウム抽出に規制をかけ核の拡散を防止するためである。
1950年代から中曽根康弘元首相は読売新聞の正力松太郎と共に原発に積極的であった、1959年の岸信介内閣での中曽根の初入閣ポストは原発担当の科学技術庁長官だった。科学技術庁長官は原子力委員会委員長も充て職であった。当時から自民党の有力者一部は日本の独自核武装を検討した。中曽根の原発推進論は、平和産業を隠れ蓑に核兵器に転用できるプルトニウムを大量生産できると考えたからである。1969年当時、佐藤内閣は「NPTに参加すると否とにかかわらず、当面核兵器は保有しない政策をとるが、核兵器製造の経済的・技術的ポテンシャルは常に保持するとともにこれに対する掣肘を受けないようにする」(2010.11公開外交文書)との方針を掲げた。現菅内閣の与謝野馨経済財政相は中曽根の紹介で日本原子力発電の職員となり、中曽根の秘書でもあった。
2005年の『原子力政策大綱』で策定委員は青森六ヶ所村の再処理工場は「国際的に認められた貴重な既得権」であり「一度失えば二度と戻らない権利」と述べている。いざというときのために独自核武装の手段は既得権として確保しておくということである(参考:鈴木真奈美「『フクシマ』という道標」『世界』2011.5)。プルサーマルと高速増殖炉はそれを国際的に認知させるために当面必要のない余分なプルトニウムは焼却するものである。かつて、1996年に福島県の佐藤栄佐久知事と新潟県の平山征夫知事・福井県の栗田幸雄知事はこうした原子力政策に楯突いてプルサーマル・核燃料サイクルに反対する意見書提出した。ところが佐藤知事は特捜部に建設汚職容疑の冤罪で逮捕されてしまった。
福島第一原発から30キロ圏内は当面人が住めなくなってしまった。福島県から関東平野の一部の土壌まで汚染され、日本の漁獲高の30%を占める三陸から銚子沖の豊かな漁場も放射能で失ってしまった。日本は太平洋も汚染する犯罪国家になってしまった。東電の責任は重大であるはずだが、1960年当時、原発事故の損害賠償の根拠となる原子力損害賠償法(原賠法)を立法する際、事業者が免責される場合として、科学技術庁長官だった中曽根康弘元首相が「関東大震災の3倍以上」と国会答弁していたとして、今回は3倍以上の震災に当たるとして、日本経団連の米倉弘昌会長はぬけぬけと国の東電への全面的支援は当然だと述べている。(朝日:4.13)。また、核武装論者石原慎太郎は「大震災は天罰である」と発言した。日本に原発を持ち込み核武装を企むものに反省の弁はない。

【出典】 アサート No.401 2011年4月23日

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