【投稿】「対テロ戦争」参戦もくろむ麻生政権 

【投稿】「対テロ戦争」参戦もくろむ麻生政権 

<継接ぎだらけの海自派遣>
 政府・与党は「ソマリア沖の海賊対策」を口実に、なりふりかまわず海上自衛隊の派兵を急いでいる。
 1月28日政府は安全保障会議で護衛艦の派遣を決めた。これを受け浜田防衛相は海自に派遣準備を指令、海自は呉基地の護衛艦「さざなみ」「さみだれ」に特別警備隊を搭乗させ、ソマリア沖に送り込むことを決定した。
 そして2月20日には海上保安庁との合同訓練を実施、3月上旬の出撃にむけた準備が着々と進められている。さらに、「新対テロ特措法」に基づいてインド洋に派遣されている、補給艦と護衛艦をソマリア沖に投入する計画も明らかになっている。 
 海自の派兵は当初、交戦権を付与した「海賊対策新法」を制定した上でとされていたが、欧米各国に加えアジアでもインドに続き、中国、そして韓国も海軍艦艇の派遣を決定。
後塵を拝す形となった日本政府は、新法が間に合わないとわかるや、当面の「つなぎ措置」として自衛隊法の「海上警備行動」を根拠に、とりあえず派兵そのものはクリアしつつ、相手が海賊なので警察権行使の問題は、海上保安官を同乗させて対応するという、はじめに海自派兵ありきの、なんとも奇妙な文字通り泥縄式の弥縫策をひねり出した。
 これは陸上自衛隊イラク派兵に関する小泉総理(当時)の「陸自のいるところが非戦闘地域」との詭弁に勝るとも劣らないでっち上げである。政府は主要国の艦隊が終結している海域になんとしても、軍艦旗をはためかせたいのである。こうして決められた計画では、実際に海賊取り締りに効果があるかなどは二の次となっている。
 
<「ソマリアのボラ釣り」>
 日本では海賊について「重武装」「ハイテク装備」などと過大評価がふりまかれているが、元来地元漁民である海賊の武装は北朝鮮の工作船以下である。
 携行する火器はAK自動小銃、RPG7ロケット砲がせいぜい、母船といえども遠洋漁船程度の船体であり、実際に「獲物」を襲撃する船は木造の小型ボートがほとんどである。
 対する軍艦からみれば海賊船など取るに足らないものであり、NATO艦船の標準的な艦砲(127㎜砲、76㎜砲)が漁船程度の舟にあたれば、文字通り木っ端みじんになってしまうだろう。
 すでにロシアやインド海軍が海賊に対する「戦果」を上げているが、「オーバーキル」との批判を受けている。しかも、インド軍が昨年11月オマーン沖で撃沈した「母船」は、海賊に乗っ取られたタイのトロール漁船だったことが判明した。
 そこで欧米の艦艇は、実際の取り締りに当っては、機関銃を搭載したヘリや高速ボートで海賊を追跡、拿捕をしている。先進国の軍隊にとってソマリアの海賊を捕まえるのは、ボラを釣るように簡単なことなのだ。
 こうした状況下でも、海自としては、武器使用は原則として正当防衛や緊急避難に限られており、インド海軍の例もあるので慎重を期さざるを得ないだろう。(ただし現場では何が起こるか分からない)
 
<新法で3軍派兵>
 そのため政府としては、船体射撃や外国船の保護も可能な「海賊対策新法」を早期に制定し、大義名分が立ちやすい海賊相手に、海外での武力行使という既成事実をつくりたいのである。そして、それを突破口に次なる自衛隊の海外展開につなげようとしているのである。
 政府・防衛省はソマリア沖への艦隊派遣につづき、空中からの監視のためP3C対潜哨戒機、さらには拠点となるジプチの基地警備の名目で、陸上自衛隊をも派遣しようとしている。そして肥大化した遠征部隊への物資輸送のため、空自輸送機をも送り込む計画もある。
 これまで同時期、近接地域に、3軍部隊が派遣されてきた(イラク、クェート、インド洋)実態はあったが、ソマリア沖派兵では本格的な実戦での3軍の統合運用を行う目論見がある。
 これは海賊対策の域を大きく逸脱しており、まさに牛刀で鶏を殺すようなものである。
 
<「海賊」の次は「山賊」>
 こうした強引な軍「革」路線は、アメリカが進める対テロ戦争への本格的な参戦に通じる。
 オバマ政権は、アフガニスタンへの1万7千人の増派を決定、これにより駐留米軍は5万人規模に達する見込みである。当然国際治安支援部隊(ISAF)としてイギリス、ドイツなど既に部隊を駐留させているNATO諸国への増派、そして日本への新たな貢献も求められることになる。
 現在アフガンでは、武装勢力や部族勢力が、パキスタン国境のカイバル峠付近で橋梁を爆破するなど、ISAFの輸送ルートに対する攻勢を強めている。さらに、山岳地帯は無政府状態化し、武装強盗による村落や民間人に対する襲撃も相次いでいる。またキルギス政府は2月4日、これまで米軍に使用を認めていたマナス空港の使用停止を通告した。
 アフガンへの既存の補給路が断たれれば、ISAFの作戦遂行は計り知れない打撃を蒙るだろう。そこで山岳地帯の輸送に陸自のヘリ部隊を、との要望が強まってきているであり、麻生政権はこれを最大限利用しようとしている。
 当然、輸送部隊には警護部隊がつく。具体的には輸送ヘリに攻撃ヘリが随伴する作戦が考えられるだろうが、ソマリア沖の「海賊狩り」の次はアフガンの「山賊退治」というわけである。
 麻生政権は、こうした「実績」の積み重ねで、戦争が当たり前の国家づくり=東アジアにおける軍事的プレゼンスの強化を目論んでいるのである。
 自らが泥沼に沈むのは仕方がないが、人々を引きずり込むのを許してはならない。(大阪O)

 【出典】 アサート No.375 2009年2月28日

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