【投稿】迷走する麻生政権 –民主党は明確な対案で臨め!–

【投稿】迷走する麻生政権 –民主党は明確な対案で臨め!–

<世論調査は自民惨敗予想→冒頭解散断念>
 麻生政権が、迷走している。臨時国会冒頭解散をぶち上げてみたものの、リーマンショックによる世界同時株安の事態に直撃され、10月解散論は吹き飛ばされた。郵政選挙で獲得した圧倒的多数の衆議院議員という上半身と比較して、足腰は、国家戦略なき宗教政党・公明党に頼らざるをえない弱体政党となった自民党には、かつての民主党のように「風向き」次第の国民の意識動向しか、解散時期の判断基準はなくなっているのである。
 総裁選直後には、麻生政権の支持率は50%を越えていたが、所信表明に続く党首対決でも、決定的な優位を獲得できないばかりか、中川国交大臣の妄言により出鼻を挫かれた。国交省は、かつての運輸省。「成田の農民はゴネ得」などは、話し合い路線に転換した同省にとっても容認できない内容だった。たった数日で大臣辞任。任命責任もあいまいなままだ。以後、内閣支持率は下降を始める。
 9月中旬に自民党が全国300選挙区毎にサンプル数1000のリサーチを行ったところ、小選挙区で自民党優勢は106前後、民主党優勢は130、比例区では自民党は67、公明30を加えても最大220議席、落選は130という結果が出たと言う。自公で過半数は不可能という衝撃の結果が伝わったのは、9月末。早期解散はとても出来ないと補正予算優先、第2次経済対策で挽回という方針転換となったのである。
 
<支持率低下が止まらない自民党>
 それでも、支持率低下は止まらない。10月20日に報道された毎日新聞世論調査(10月18・19日調査)では、内閣支持率は36%に低下、勝利期待では、民主48%と自民36%を大きく引き離した。比例投票行動も民主38%、自民25%と逆転され、政党支持率も民主27%、自民24%という結果だった。これでは、解散はまたまた先延ばしであろうか。
 麻生にとって幸いだったのは、米・仏大統領が11月中に緊急G7首脳会議を開催し、世界的金融危機への対応策を呼びかける共同宣言を出した事だ。これで、11月解散・総選挙も、不可能になったのではないか。このままでは、年内解散は不可能になり、2009年予算成立後の4月以降でなければ解散はできなくなる。任期満了解散ともなれば、首相の大権も有名無実であり、敗北を座して待つのみとなろう。
 しかし一方で、選挙区地元では、議員候補が与野党ともに選挙事務所を早々と開設し、選挙モードが高まりつつある。借上げ料や人件費も馬鹿にならず、選挙を待たずに「財政破綻」が囁かれる候補者もいるとか。要するに悲鳴にも似た解散待望論が強まっていることも無視できない状況になりつつある。
 
<あいまいな政権交代論だけでいいのか>
 確かに、政権交代の可能性が極めて高い総選挙になることは重要なことであり、画期的なことである。官僚・政府・与党との悪しき癒着を解き放ち、新たな緊張関係のある政治が生まれることは評価できる。しかし、民主党の「生活が第一」というスローガンが、小泉構造改革への批判であることは理解できるが、アメリカ発の世界金融危機が極限まで進行している現時点では、この危機の根源である市場原理主義とカネ儲け第一の金融資本主義への決別を明確にすることが必要となっているのではないか。
 小沢代表の下で今は声が小さくなっているが前原前代表や松下政経塾出身者を中心に「市場原理主義」「新自由主義」に親和性の高い人々が民主党には多い。元官僚やアメリカ留学経験組などが候補者の中には多いのではないか。
 小泉路線との対決という意味で、「生活が第一」という方向は社会民主主義的「色合い」を結果として意味することができた。しかし、実態は、どちらかと言えば「小さな政府」指向であり、「官より民」という新自由主義的傾向をもっていりのが現実である。
 アメリカ発金融危機の意味するものは、明らかにレーガン・サッチャー以来の新自由主義・市場原理主義の破綻・敗北であろう。国家の基本戦略において、新自由主義と距離を置くこと、ニューディール政策のような官主導の雇用創出政策の実施、不況脱出のための財政出動など「修正資本主義」的政策を国家戦略とすること、対米協調路線からの修正など、今こそ基本政策の転換が求められているのである。

<共産党立候補削減の大きな影響>
 さて、今回の総選挙の行方に大きな影響を与えそうな要因がある。共産党の動向である。これまで、ほぼ全選挙区に候補者を立ててきた共産党だが、先の中央委員会(2008年7月)で、新しい選挙方針を決めている。それは、小選挙区立候補者を130人とすること。比例選挙に重点を置き、比例選挙ブロック毎に全体の獲得目標である650万票を割り振るというものである。
 単純に考えると170選挙区には共産党の候補者はいないことになる。民主・社民・国民新党は、ある程度の選挙区で候補者調整を行っているため、170選挙区では、自民党対野党候補のみの対立選挙となるのである。興味深いデータがある。今年4月に行われた衆議院山口2区補欠選挙であるが、自民・民主の対決となったが、民主候補が当選している。この選挙の各種出口調査によると、共産党支持層の80%以上が民主党候補に投票しているという。共産党・赤旗は、民主党を第二自民党であると批判し、民主党に政権を渡してはならないとの姿勢を取っているが、共産党支持層はより健康である。自民党への拒否感は強くとも、民主党への拒否感はやや薄まる。自民党よりはましという判断である。

<自民に逆風で3%移動すると>
 以下の情報は、宮地健一氏のホームページ(http://www2s.biglobe.ne.jp/~mike/sousenkyosimu.htm)に負っているが、2008年5月5日の中日新聞によると、「自民党支持票の2%が民主党に流れただけで、第一党は民主党に。自民、民主両党が政権をかけて激突する次期衆院選の各党獲得予想議席が、白鳥令・国際教養大教授のシミュレーションで明らかになった。自民党に逆風が吹き、さらに、小選挙区での候補者擁立を絞り込んだ共産党支持票が動くとどうなるのか。白鳥教授のシミュレーションを基に分析した。
 議席予想によると自民党は前回獲得の296議席を大幅に下回る230議席にとどまり、逆に民主党は前回113議席から、190に大幅に躍進する。・・・都市部での落ち込みが激しい。
ただ、福田内閣の不人気が続けば、予想議席は自民党にさらに厳しいものになる。仮に、自民党支持票の1%が民主党に流れると、両党の獲得予想議席は自民206、民主207に、2%なら自民205、民主217と逆転する。・・・自民党は公明党の議席を加えても過半数を割る。3%なら民主党はさらに優位に立つ。」と
これは今年5月の分析だが、自民党にはより以上の厳しい逆風が吹いている。ここに、共産党支持層の票が民主党に流れた場合どうなるか。
「 共産党が候補者を立てない選挙区で、もし同党支持票の30%が民主党候補に流れた場合、自民党は当初の予測から9議席減の221議席となり、逆に民主党は204議席と、10議席増える。また、民主党に流れる共産票が50%に増えた場合、自民217、民主208と、両党はさらに接近する。これに、自民党から民主党への票の流れが加わると、自民党にはさらに不利な展開に。共産票から30%、自民党から1%が民主党に流れれば、同党は第一党になり、民主党に流れる票が共産党から50%、自民党から3%になれば、民主党の予想議席は238に達し、184議席の自民党を突き放す。」と。
シュミレーションであるが、現在の状況は、この結果とあまり変わらないのではないだろうか。麻生政権が、安易に解散を行えない事情がよく分かる。
 
<オバマ大統領誕生と日本の政治>
 さらに、アメリカでは、11月4日に大統領選挙が行われる。民主党オバマ氏が、アメリカ史上初の黒人大統領となる可能性が高い。泥沼のイラク戦争・金融資本主義の破綻は共和党への逆風であり、アメリカ国民は変革の時を迎えようとしているのである。そしてオバマ大統領誕生の余波は、大きく日本にも及んでくるはずである。
 現在最短の解散総選挙日程でも18日公示・11月30日投票となる。すでにアメリカで政権交代が起こった後ということになる。アメリカの政権交代が現実のものとなった後の日本の総選挙ともなれば、一層風向きは民主党に向くことになるだろう。ブッシュ=共和党=新自由主義から、オバマ=民主党=修正資本主義という大きな変化の後だ。すでに、アメリカ国民自身が、金融安定化法提案に「カネ持ち救済だ」と反発し、共和党下院議員も反対に回らざるをえなかった。アメリカ国内においても、金融資本主義・新自由主義に対して批判が高まっていることを示したのである。
 ただ、来るべき日本の政権交代において政権政党が入れ替わっても基本政策が強弱程度の違いだけでは意味がない。民主党内の「社会民主主義」的部分の奮起によって、市場原理主義・新自由主義との決別を実現しなければならないのである。(H)

 【出典】 アサート No.371 2008年10月25日

カテゴリー: 政治 パーマリンク