【現地報告】 「東大阪市長選挙結果に一番驚いているのは誰か?」

【現地報告】 「東大阪市長選挙結果に一番驚いているのは誰か?」
                                       
 共産市政の継続か市民に開かれた新しい市政の選択かが問われた東大阪市長選挙は、連合・民主党・公明党・自民党13選挙区支部(西野陽衆議院議員)・解放同盟などの推薦を受けた松見正宣氏が、83066票を獲得し現職に約18000票の大差を付けて圧勝しました。
 今回の結果で興味深いことは、ひとつは投票率が46.99%と最近の首長選挙および当日が雨という天気としては「意外」に伸びたこと、もう一つは三つ巴の闘いの中で「意外」にも大差で勝利したことです。
 まず4年前の松見氏が惜敗し、共産党員市長が誕生して以降、今回の市長選挙に向けた候補者選びの経過を簡単に説明しておきましょう。 
前回選挙は前市長の不祥事に端を発し公正な市政の転換がポイントでした。公明・西野陣営と議員復活をねらう塩川陣営、そして連合・民主党陣営が手を結んでの松見氏擁立でした。結果は60%を越える予想外の投票率にみられたように前市長への批判票が共産党候補に流れ、約4800票の僅差で共産党市長誕生となりました。
その後の政治情勢は、塩川氏が衆議院議員復活を果たし、しかも小泉旋風に乗って財務大臣に就任、「塩爺」の愛称まで生まれる自体となりました。結果東大阪の保守層への塩川氏の影響力は大いに復権することになりました。松見氏が公明・西野ブロックや民主党・連合ブロックに近いと見る塩川氏は次期衆議院選挙もにらみ、松見氏以外の候補者を模索し始めました。
 今回の市長選挙の候補者選びは、共産市政打倒のため候補者を一本にまとめることを前提に進められました。その理由は次の通りです。①今回の選挙はある意味争点はなく、市民の関心からすれば、投票率は40%程度。すると16万票の取り合いとなる。②「何もしていない」がゆえに失敗もしていない共産党市長は、「議会(野党)による市長イジメ」という「悲劇のヒーロー」を演じ、最大7万票に届く可能性がある。③三つ巴の闘いとなれば、漁夫の利を得た現職共産党市長が有利となる。
塩川氏の政治的影響力復活という政治状況下で進められた市長選候補者選びは、松見氏以外にも数人の名前が浮上し、一本化に向けた作業は難航しました。そんな矢先の2月、突如として塩川氏は、長老の自民党市議を候補者として擁立することを独断で決定しました。塩川氏の読みでは当然この候補者で一本化が図られ、最後は他の政党や団体もついてくると信じたようです。
ところがこの「おごり」が塩川氏本人の政治生命にも大きな影響を及ぼす結果となりました。
 これまで、候補者の一本化に向けて共同歩調をとってきた他の政党や団体からの反発、中でも中央では連立与党を組み、市議会でも自民党と協調してきた公明党の反発は凄まじい物でした。まず自らの立場を明確にすべく、3月には塩川氏が擁立した自民党の市議では支援できないとの異例の声明を発表し、記者会見を行ったほどです。
 塩川氏が自らの「おごり」を一向にただそうとしない中で、連合・民主党・公明党・自民党13選挙区支部(西野陽衆議院議員)・解放同盟など多くの団体は、これまで一本化のため出馬表明を見合わせていた松見氏の擁立を決定しました。
 こうした動きをマスコミは、今回の市長選挙を保守の分裂による「塩川VS西野」の闘いである。一方「公明VS共産」の闘いでもあると評しました。
最後の最後まで選挙戦はもつれにもつれました。最終盤塩川氏は、今回の市長選挙での敗北は次期衆議院選挙、とりわけ小選挙区での自らの政治生命が絶たれるとの危機感から、各自民党市議や各団体への締め付けを強めました。また自民党市議の中には、松見市長より現職の共産党市長の方がプラスになるとの判断に立つ考えもあり、共産党市長を支援するかのような動きを見せるものもありました。
 この保守層の票の奪い合いが選挙戦を難しくし、投票日の二日前のマスコミ調査でも産経・朝日が現職有利、読売・毎日・共同通信が松見有利それも各社とも非常に僅差と見るぐらいの状況でした。
 今回の選挙は、「最後の二日間勝負やった」と言われています。その通りで、接戦という緊迫した状況の中で民主党・連合ブロック、公明、西野陣営などの松見支援グループが総力を挙げたこと、とりわけ共産党市政下で仕事をしてきた自治労部隊のこの4年間の悔しさをバネとした闘いが接戦から一歩リードできた大きな要因といえます。
それと、恐らく塩川氏の強烈な締め付けにも屈せず商工会議所(経済界)や医師会が、また多くの市民・職員が、冷静に良識ある判断をした結果、46.99%の投票率と83066票の得票に繋がりました。
 この二つの「意外」な結果に一番驚いているのは塩川氏自身だと言えるでしょう。(司 良平)

 【出典】 アサート No.296 2002年7月27日

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