【投稿】維新=安倍政治終焉のチャンス 統一戦線論(58)

【投稿】維新=安倍政治終焉のチャンス 統一戦線論(58)
アサート No.496 2019年3月

<<「投げ出し交換選挙」>>
3/21に大阪府知事選、3/24に大阪市長選が告示され、4/7に投開票されることとなった大阪のダブル・クロス選挙の帰趨は、安倍政権の命運をも左右すると言えよう。
松井一郎・大阪府知事と吉村洋文・大阪市長は、2人がそれぞれの立場を入れ替えて立候補する。まったく党派的思惑、私的政治的な打算だけで、任期途中に、ともに経験も職責もない、市と府の役割の違いも無視して、互いのポストを交換しようというのである。立場を入れ替わることで、半年後の任期満了を待たずに、それぞれの任期を丸々4年間引き延ばし、居座ろうという、これほどあからさまな、住民不在の党利党略、有権者を置き去り、無視した、脱法的行為はないと言えよう。
「どの面下げて選挙」「投げ出し交換選挙」と言われるようなこんな奇策に追い込まれた経緯が明らかにしていることは、維新政治が瀬戸際に追い込まれている現実の反映でもある。それを巻き返す最後の手段としてこんな投機的な賭けに打って出たのであろう。カジノを誘致せんとする維新は、まさにこのダブル・クロス選挙をカジノの賭場と見立てているのである。
維新が掲げる「都」構想は、「二度と住民投票を行わない」という前提(2015維新の会HP掲載「今回が大阪の問題を解決する「最後のチャンス」です。二度目の住民投票の予定はありませ。」)で2015年5月17日に実施され、反対(得票率50.4%)、賛成(得票率49.6%)でたとえ僅差といえ明確に否決されている。決着済みなのである。
その後の現実は、維新以外に「都」構想などという怪しげな集権主義に賛成・支持する政党や政治勢力はは存在していないし、広がりや支持の拡大さえ見込めていない。維新の前代表である橋下徹氏からさえ「今の状況で、都構想の必要性が(市民に)うまく伝わっていない」、「無理してやらない方がいい」と突き放されていたものである(2018/1/25朝日新聞インタビュー)。その「都」構想を再び住民投票に持ち込むためには、府・市両議会の過半数超えの支持を取り付け、議決しなければならない。しかし両議会で維新は過半数に及んでいないどころか、肝心の大阪市議選で過半数を制することはほぼ絶望的である。維新は、都構想が争点になった堺市長選でも敗北し、2017年の衆院選でも議席を減らしている。
そこで登場したのが、2015年大阪都構想住民投票では自主投票の立場をとっていた公明党との「密約」の存在を暴露する脅しであった。公明党と維新は、2017年4月17日付で「特別区設置協議会において、慎重かつ丁寧な議論を尽くすことを前提に、今任期中で住民投票を実施する」との密約を交わしていたのである。この時点で公明は、維新との密約を維持することで、国政選挙での「選挙区棲み分け」を継続することを優先させていたのである。しかし、松井知事は昨年末12/26、密約していたこの住民投票の実施に煮え切らない公明に業を煮やし、「もういい、全部ばらす」として記者会見でこの「密約」を暴露、「責任ある政党なら合意書に基づいた対応をしていただきたい」と開き直ったのである。表向きは都構想を批判しながら、こうした裏取引に応じていた公明の責任も重大である。公明という名とは裏腹な、維新・公明の陰湿な関係を表面化させ、有権者をあきれさせてしまったことには多少の意義はあるかもしれないが、政治不信をさらに増大させてしまったことは確実である。

<<“親維新”安倍首相の孤立化>>
しかし、こうした事態に最も困惑しているのは安倍政権、とりわけ安倍首相本人と菅官房長官であろう。松井維新代表があくまでもこうした強硬・強気姿勢を崩さない、崩せないのはなぜか。それは第一には、統一地方選とのダブル・同時選挙に持ち込まなければ、埋没しかねない維新の統一地方選候補を押し上げられないという切羽詰まった状況に追い込まれてしまっていることにあろう。
しかしそれにもまして維新を最も公然・隠然、支持し支え続けてきた安倍政権の存在こそが維新を暴走させていると言えよう。首相と官房長官は、維新代表の松井氏、前代表の橋下徹氏と、頻繁かつ定期的に食事を共にし、意見を交換する密接な関係で結ばれていることは周知の事実である。安倍首相が悲願とする憲法改正では、維新の協力が不可欠であり、維新は公明よりも公然と改憲を主張し、安倍政権を叱咤激励している。維新政治と安倍政権は一体なのである。互いに気脈を通じ、公明への対処も話し合ったであろう。松井氏らが誘致を進めた2025年の国際博覧会(万博)の大阪開催も、安倍政権の肩入れで実現にこぎつけた経緯もある。
こうした蜜月関係の中で、維新が敗北するようなことになれば、それは安倍政権への直接の打撃となり、改憲戦略は一気に崩れ、政権崩壊の引き金になりかねないのである。その及ぼす影響は単なる一地方首長選挙の域にはとどまらないことは、歴然としている。
しかも今回の場合、府知事、市長とも敗北すればもちろんのことであるが、府知事、市長いずれかだけで敗北しても、都構想は断念せざるを得ず、維新としては致命的な敗北であり、起死回生は望めないと言えよう。
安倍首相は、3/14、自民党大阪府連の要請に応じて小西禎一・府知事候補と一応会見して「必ず勝利しよう」と激励の言葉をかけたが、菅官房長官は同席しなかったという。安倍首相の真意は維新の側にあったとしても、表向きは自民党総裁としての対応せざるを得ず、昨年の総裁選では大阪府連に支援してもらった借りがあり、維新を「思いあがっている」と批判し、安倍総裁四選まで支持する二階幹事長を配慮せざるを得なかった、というところであろう。首相サイドは今回のダブル選を「あちらを立てればこちらが立たず」(側近)と述懐しているが、一種の孤立化である。

<<想定外の事態>>
時事通信が3/8-11に実施した3月の世論調査で、安倍内閣の支持率は前月比3.4ポイント減の39.0%、不支持率は1.9ポイント増の36.4%となり、支持率下落傾向が明らかになりつつある。厚生労働省による毎月勤労統計の不正調査問題や、沖縄県の県民投票で反対が多数を占めた名護市辺野古移設をめぐる政府対応が影響したとみられる、と報じている。潮の変わり目ともいえよう。
安倍一強支配に胡坐をかき、野党分断と改憲への補完勢力として維新を手なづけ、着々と9条改憲を準備していたはずの安倍政権にとって、支持率低下に追い打ちをかけるような今回の事態の進展は、安倍首相にとっては想定外のことであろう。
そして安倍首相の意に反して、“反維新”で自民、公明、立憲、国民、共産の主要政党が結集し、包囲網が形成されれば、いくら“親維新”の安倍政権であっても、それを押しとどめることはできない段階に入ってしまったと言えよう。
これを決定的なものにし、今回のダブル・クロス選を維新の自滅選挙とさせる絶好の機会到来として、安倍政治終焉のチャンスとさせるのは、“反維新”の共闘であり、広範な草の根の市民・府民の力を結集した多種多様な統一戦線の形成である。
(生駒 敬)

【出典】 アサート No.496 2019年3月

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